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インテレクチュアル・ダークウェブとは・意味

インテレクチュアル・ダークウェブとは

インテレクチュアル・ダークウェブとは?

インテレクチュアル・ダークウェブ(Intellectual Dark Web)は、特定の主張を持つ科学者や教授、TVホストで構成されるインターネット上のネットワークのこと。もともと「ダークウェブ」とは、検索エンジンで探しても出てこず、特定のアクセス手段を持ってのみ通信が可能ないわゆる「闇サイト」のことを指しているが、インテレクチュアル・ダークウェブの場合は、その主張がポッドキャストやソーシャルメディアなどで一般大衆に広く届くようになっている。2018年に「ニューヨーク・タイムズ」のエッセイで初めて紹介された。

インテレクチュアル・ダークウェブのメンバーたちは、多くの場合、政治的正当性(ポリティカル・コレクトネス)やイデオロギーによって抑圧されることのない自由な討論を目指しており、伝統的な左派・右派の枠を超えた議論を重視する。インターネット上のプラットフォームを活用して、主流のアカデミアやメディアが取り上げない、あるいは忌避する議論の場を提供している。

インテレクチュアル・ダークウェブの具体例

このネットワークに所属するとされるのは、アメリカの生物学者ブレット・ワインスタイン氏、その弟である数学者のエリック・ワインスタイン氏、政治系トークショーホストのデイブ・ルービン氏、哲学家でフェミニズム論客でも知られるクリスティーナ・ホフ・サマーズ氏など。彼らは下記のような主張(※1)を持っているとされる。

  • 男性と女性には生物学的な違いがある
  • ポリティカル・コレクトネスによって言論が統制されている
  • アイデンティティ政治(※2)は、アメリカの社会構造に対する脅威である

人類学や統計に基づいて人々の行動や役割を分析するというのは現代だと差別的な行為だと思われかねない。たとえばクリスティーナ・ホフ・サマーズ氏は、男女の賃金格差の背景には、女性が高賃金の仕事を選ばない傾向にあることだと論じ、批判を浴びている。

また、インテレクチュアル・ダークウェブに所属する個々人の思想や主張も見ていきたい。

カナダの臨床心理学者であるジョーダン・ピーターソン氏 は、自己責任や伝統的な価値観を重視する思想を特徴とする。特に、言語に関する規制に対して批判的であり、カナダにおける性別代名詞の法制化に強い異議を唱えたことで注目された。

神経科学者であり、著名な無神論者であるサム・ハリス氏は、宗教に対する批判的な視点を持ち、宗教的ドグマに依存しない倫理や道徳の構築を目指している。

ベン・シャピーロ氏は、保守派のコメンテーターで、論理的思考とデータに基づいた議論を武器に、左派的な考え方やポリティカル・コレクトネスに対して鋭い批判を展開する。彼の主張はしばしば論争を巻き起こすが、インテレクチュアル・ダークウェブの中心的存在の一人とされる。

インテレクチュアル・ダークウェブが注目される背景

インテレクチュアル・ダークウェブが注目される背景には、主流メディアや学術界での「自己検閲」や「キャンセルカルチャー」に対する反発があると言われている。インテレクチュアル・ダークウェブのメンバーたちは、多くの知識人や論客がリベラルな価値観を強調しすぎることで、自由な言論の場が狭められていると主張する。特に、ポリティカル・コレクトネスの強調が、異なる意見や反対意見の抑圧につながっているという懸念が背景にはあるようだ。

さらに、SNSやポッドキャストの普及により、主流メディアの枠にとらわれない議論が可能となり、インテレクチュアル・ダークウェブの活動が広く知られるようになった。YouTubeやSpotifyなどのプラットフォームは、自由な討論を行うための新たな場として機能し、既存のメディア構造を迂回して、より幅広い聴衆にアクセスすることを可能にしている。

インテレクチュアル・ダークウェブのメンバーが直面する批判も多いが、彼らが注目される理由として、自由な言論の推進と、政治的イデオロギーに縛られないオープンな討論の重要性がある。彼らの議論がタブーに挑戦し、時に社会の分断を強調することから、賛否が分かれるテーマとなっている。

しかし、科学的な証拠やファクトは社会課題を語る上でなくてはならないものだ。特定のアイデンティティのためだけに、不平等論を作り出してはいけない。インテレクチュアル・ダークウェブはアメリカを中心に存在感を増しており、引き続き議論を呼んでいくことだろう。

※1 ニューヨークタイムズ | Meet the Renegades of the Intellectual Dark Web より
※2 社会のなかで不当な扱いを受けるジェンダー、人種、民族、性的指向、障害などの特定のアイデンティティに基づき、集団の利益を代弁して行う政治活動。

【参照サイト】The “Intellectual Dark Web” Is Nothing New
【参照サイト】Yes, The Intellectual Dark Web Is Politically Diverse
【参照サイト】Meet the Renegades of the Intellectual Dark Web
【参照サイト】Harris, Sam. Making Sense Podcast
【参照サイト】Rogan, Joe. The Joe Rogan Experience Podcast
【参照サイト】Weinstein, Eric. “Why the Intellectual Dark Web Exists.”

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