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ランドフィル・マイニング(Landfill Mining)とは・意味

ランドフィル・マイニング

ランドフィル・マイニングとは?

環境への影響を軽減するため、すでに利用されている埋立地の区画または閉鎖された埋立地を採掘し、電子廃棄物や貴金属といった回収可能物質を選別することを表す。日本語では「埋立地採掘」とも訳される。

埋立処分は環境への影響や長期的な維持管理を必要とする面において多くの課題を抱えているが、埋立地に向かう廃棄物の中にある潜在的に貴重な物質に目をつけたのがランドフィル・マイニングだ。

ランドフィル・マイニングは、あらゆる種類の電子廃棄物、重金属、またはその他の回収可能な材料を回収し、新しい製品にリサイクルする。スペイン・マドリードのエネルギー関連企業・Landfillsolutionsはウェブサイトにて、「すでに利用されている埋立地の区画と閉鎖された埋立地の両方が、材料とエネルギーの供給源となる」との考えを述べている。

ランドフィル・マイニングの背景

埋立は、廃棄物処理および処分のための比較的低コストな技術として、世界中、特に開発途上国で採用されている。

日本で主流のごみ処理方法である焼却と違い、埋立はあらゆる種類の廃棄物を受け入れることができる。しかし埋立地は、周囲に影響を及ぼすことなく永久的に廃棄物を受け入れるものではない。埋立地に堆積された廃棄物は、環境への影響を生む可能性がある。

埋立処分のデメリット

先述のように、開発途上国の廃棄物処理の中心は埋立である。

しかし、低所得の開発途上国は埋立の技術面および運営・管理面が整備されていないという課題を抱えていることが多く、廃棄物の搬入管理や、廃棄物の散逸、悪臭を防ぐ対策、浸出水(※1)対策などの対応が認められない「オープン・ダンプ(Open Dumps)」と呼ばれる埋立地がその多くを占めている。

※1 最終処分場に降った雨が埋め立てたごみに浸透し、ごみの中の有害成分が溶出して汚染された水などをいう。浸出水が地下に浸透すると、地下水汚染の原因となるため、遮水シートを設け地下水への浸透を防ぐとともに、浸出水を集めて汚水処理施設で安全なレベルにまで浄化し排出する。(出典:世界のごみの現状を知る | 広報誌・パンフレット・マンガ・カレンダー・ラジオ | JICAについて

オープン・ダンプの問題点は次の通りだ。

  • 廃棄物が覆土されていないため、風などの影響で塵や軽いビニール片等が周囲に飛び散る
  • 廃棄物が覆土されていないため、廃棄物が分解される過程で発生する悪臭やメタンガス等が周囲に発散する
  • ハエやネズミなどの病害虫・害獣が廃棄物中の食物目当てに集まり、繁殖することで、伝染病等が広がる可能性がある
  • 浸出水により、周辺の水源が汚染される など

なお、上記問題点への対策がなされた「管理された」埋立地であっても課題はある。1つの埋立地が完全に埋め尽くされた後、その埋立地の管理は自治体にとって重要な問題となる。なぜなら、浸出水が漏れていないか、浸出水が正しく浄化されているかといった維持管理を続ける必要があるからだ。そのうえ、廃棄物の安定化は数十年から数百年かかるとされている。

原料・エネルギー資源供給問題の解決

資源の枯渇を解決し、持続可能性への移行を図る解決策へのニーズが高まっている。特に金属はますます希少なものになっている。

ランドフィル・マイニングによって、産業廃棄物から鉱物を回収することは、クリーン技術の開発へとつながる。回収された鉱物は、たとえば太陽電池や電気自動車、風力タービンの製造において重要な役割を果たすものだからだ。

ランドフィル・マイニングは都市固形廃棄物 (MSW)からの資源回収にも関連する。この場合の目的は、廃棄物をリサイクル可能な物質と燃料物質に分離することである。これらのリサイクル可能な材料には、ガラス、プラスチック、金属、骨材(モルタルまたはコンクリートを造る際、混合させる砂利や砂などのこと)の他、廃棄物由来燃料(RDF:Refuse Derived Fuel) が含まれる。

RDFは潜在的な代替エネルギー源として今日不可欠な存在である。現在の廃棄物発電技術を利用すれば、RDFから高付加価値の燃料を得ることができる。

ランドフィル・マイニングのメリット

ランドフィル・マイニングはまだ利用できる資源の回収に加え、古い埋立地の修復にも一役買うとされている。

ランドフィル・マイニングの強化による資源回収のためのEU(欧州連合)研修ネットワーク「New-Mine」のウェブサイトによれば、ヨーロッパにある15万から50万の埋立地のうち、90%は1999年のEU埋立指令以前の「非衛生的な」埋立地とされている。これらの古い埋立地は都市固形廃棄物(※2)で満たされている傾向にあり、環境保護の観点に欠けた状態にあることが多い。将来の環境や健康上の問題を回避するためには、これらの埋立地に多大なコストがかかる修復措置が必要になる。

「New-Mine」は、まだ利用できる資源を回収することによって古い埋立地の修復コストが大幅に削減され、貴重な土地が再生されるだけでなく、同時に貴重な資源が解放される、と考えている。

※2 EPA(the U.S. Environmental Protection Agency、アメリカ合衆国環境保護庁)の定義によると、都市固形廃棄物(MSW:Municipal Solid Waste)とは、「一般家庭から出る固形廃棄物、民間企業(オフィスビル、小売店、卸売業、レストラン)および公共施設(図書館、学校、病院、刑務所)からの固形廃棄物」を指す。具体例としては紙、ビニール袋、家具、衣類、金属、生ごみ、電池などが含まれる。(出典:Municipal Solid Waste as an alternative fuel – ASTM D6866

また、Landfillsolutionsはウェブサイトにて、ランドフィル・マイニングのメリットについて以下のように述べている

埋立地修復にかかるコスト削減

「非衛生的な」埋立地の修復コストは非常に高額である。たとえばベルギー・フランダース地方の廃棄物行政をおこなう機関であるフランダース公共廃棄物協会(通称:OVAM)が1993年から2001年にかけて行った有害廃棄物の採掘と移動には8,000万ユーロの費用がかかっている。

ランドフィル・マイニングは、採掘された物質を回収することにより修復コストを削減するのに役立つ。採掘された物質は合成ガスや貴重な鉱物などのエネルギー源としてリサイクルまたは回収可能である。修復に数十年かかる土地の再生にも役立つといえる。

環境災害の防止

世界には依然として廃棄物が管理されずに投棄されている場所がある。不法投棄にはいくつかの環境上の危険が伴う。埋立地から放出される有害物質は水や土壌に浸透し、強力な温室効果ガスであるメタンガスの発生の原因にもなる。

ランドフィル・マイニングによって、管理されずに投棄された廃棄物が回収、分別されることで、埋立地から放出される有害物質の軽減につながる。

ランドフィル・マイニングの課題

マサチューセッツ工科大学のウェブサイトには、ランドフィル・マイニングの開発が経済的かつ産業的に実行可能であることをEPA(アメリカ合衆国環境保護庁)が証明するとしながらも、以下の根本的な問題についても記している

レアアースリサイクルの難しさ

ランドフィル・マイニングの大きな課題として、レアアースのリサイクルが現状限られたものであることがあげられる。

特殊な特性を持つレアアースは、コンピュータや携帯電話、その他の電子機器にとって不可欠なものであり、医療用画像機器やレーザー、電気自動車のバッテリーにも使われている。

アメリカの科学雑誌の学生向けサイトScience News Exploresによると、2021年、世界では28万トンのレアアースが採掘されている。これは1950年代半ばの約32倍に相当する。そして専門家は、2040年までに現在使用している量の最大7倍のレアアースが必要になると推定している

よってレアアースのリサイクルは非常に重要だ。同ウェブサイトで専門家は、10年以内にリサイクルによってレアアースの需要の最大4分の1が満たされる可能性がある、と話している。

しかし現状では、アメリカやヨーロッパにおいて、鉄鋼など頻繁に使用される金属の15~70%をリサイクルするのが標準でありながら、古い製品に含まれるレアアースのうちリサイクルされるのはわずか約1%だ。

レアアースのリサイクルが困難なのは、多くの場合、レアアースが他の金属と混合されているからである。それらを再度分離するのは非常に難しいのだ。Science News Exploresの記事は、「廃棄物からレアアースをリサイクルすることは、鉱石からレアアースを抽出して処理するのと同じくらい難しい」と表現する。

またレアアースのリサイクルでは、塩酸などの有害な化学物質が使用される傾向があり、大量のエネルギーを消費する割に、回収できる金属がごくわずかである可能性がある。たとえば、コンピューターのハードディスク ドライブに含まれるレアアースはわずか数グラムの可能性がある。製品によっては、その量がわずか1,000分の 1 になる場合もある。

廃棄物がリサイクルに適さない可能性

マサチューセッツ工科大学のウェブサイトは、埋立地の環境によっては廃棄物がリサイクルに適さない可能性があることも指摘している

ニューヨーク州エディンバーグ市の埋立地で、ランドフィル・マイニング実証プロジェクトが行われた。

埋立地から回収された廃棄物を廃棄物発電施設で燃料として使用するために、再生廃棄物の品質を向上させる研究が行われたが、プロジェクトの初期段階で発生した廃棄物には残留土壌や岩石、その他不燃廃棄物の影響で発熱量が予想よりも低かった。

加えて再生廃棄物の25%に相当する回収された非土壌物質のうち、50%は潜在的にリサイクル可能であるとみなされたものの、市場基準を満たすことができるまで洗浄することができなかった。

費用対効果

また環境科学者トラヴィス・P・ワグナーは、テクノロジーメディアサイト「GIZMODE」のインタビューにて、ランドフィル・マイニングが普及しない理由の一つとして経済的理由、つまりランドフィル・マイニングにかかる採掘コストが、回収可能な物質の価値よりも高いことについて述べている

採掘作業のコストには、対象となる鉱石の採掘、鉱石を濃縮するための処理(選鉱)、関連廃棄物の管理、材料の輸送と販売、そして最終的に鉱山の閉鎖と埋め立てが含まれる。これらのコストは採掘された材料の販売から得られる収益よりも低くなければならない。ランドフィル・マイニングは、多くの環境上の利点がありながらも、従来の採掘と同じ経済条件にさらされてしまうのだ。

アメリカのエンジニアリングサービス企業HDRの副社長ジェフ・マレーによると、アメリカではヨーロッパに比べてランドフィル・マイニングが注目されていない。アメリカでは、化石燃料や天然ガスなど比較的コストが低いエネルギーが利用できるため、ランドフィル・マイニングで回収される廃棄物の潜在的なエネルギーが評価されていない、と述べている。

現時点では、ランドフィル・マイニングは新しい埋立地の開発や地域の処分施設に廃棄物を輸送するなどのコストに比べて高価であることが大きな障壁となっている。

持続可能な未来に向けて

ランドフィル・マイニングにはまだまだ課題がある。だが、循環型社会という世界共通の目標と将来的に予想されるレアアースの価格上昇や利用制限をふまえると、今後、ランドフィル・マイニングが資源供給における実現可能な代替手段となることも予想される。

私たちが生み出す廃棄物には貴重な物質が含まれている可能性がある。持続可能な未来を実現するために、地中に埋まった価値ある資源を再利用するランドフィル・マイニングの今後に期待したい。

 

【参照サイト】Yu-Chi Weng 他『Management of landfill reclamation with regard to biodiversity preservation, global warming mitigation and landfill mining: experiences from the Asia–Pacific region』(Journal of Cleaner Production Volume 104、Pages 364-373、2015年)
【参照サイト】Mining Landfills
【参照サイト】Landfill Mining, what are the benefits? – Landfillsolutions
【参照サイト】松藤敏彦『廃棄物処理における埋立地の役割と位置づけ』(廃棄物資源循環学会誌 Vol.23 No.5 pp.341-347、2012年)
【参照サイト】研究者に聞く!!|環境儀 No.24
【参照サイト】田中宏和・香村一夫『管理型最終処分場の安定化における塩類溶出特性 (その2)―― 経過時間と埋立層から溶出するイオン種の関係についての一考察――』(廃棄物資源循環学会論文誌 Vol.28 pp.114-127、2017年)
【参照サイト】世界の埋立処分の現状と将来トレンドに関する研究
【参照サイト】途上国のゴミ捨て場の改善に関する研究
【参照サイト】Project – EU Training Network for Resource Recovery Through Enhanced Landfill Mining
【参照サイト】Recycling rare-earth elements is hard — but worth it
【参照サイト】Town of edinburg landfill reclamation demonstration project. Report supplement: Enhancing the fuel quality of reclaimed waste. Final report (Technical Report) | OSTI.GOV
【参照サイト】WORLD RESOURCE FOUNDATION (WRF) TECHNICAL BRIEF: LANDFILL MINING
【参照サイト】Landfill Mining – Process, Feasibility, Economy, Benefits and Limitations
【参照サイト】Why Isn’t Landfill Mining More Popular?

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