Browse By

ソーシャル・リセッションとは・意味

孤独

ソーシャル・リセッションとは?

「ソーシャル・リセッション(social recession)」とは、人と人との交流の減少によるコミュニティ内のつながりの希薄化、およびウェルビーイングの低下を表す。「リセッション(recession)」は日本語で「不況」と訳され、ソーシャル・リセッションは「社会的不況」「交流の減少」とも呼ばれる。

新型コロナとソーシャル・リセッション

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が国際的に拡大していった2020年3月、アトランティック誌は新型コロナが引き起こすソーシャル・リセッションの可能性について、ウェブサイト上に記事を掲載している。

新型コロナによって、人々はこれまでの生活様式を変えざるを得なくなった。外食や習い事などの外出は制限され、人によっては、家族や友人と接することも難しくなった。アトランティック誌は、人と人との交流のない期間が長くなることで社会的なつながりに綻びが生じると、人々の気分や健康、労力や学力、コミュニティへの意識(一体感、連帯感)に悪影響を及ぼす可能性を指摘している。

加えて、新型コロナが世界中に広まった影響で、世界中の人々が他人とのつながりを断つことからその悪影響が長く続く可能性がある、とも記事のなかで指摘した。

現代社会にはびこる孤独

新型コロナが人と人との交流を断絶する前から、ソーシャル・リセッションは課題視されている。政治経済誌エコノミストのウェブサイトには、カイザー・ファミリー財団とエコノミストが2018年に行った調査で、日本では9%以上、アメリカでは22%、イギリスでは23%の成人が、いつも、あるいはしばしば孤独を感じ、仲間に恵まれない、あるいは仲間外れや孤立を感じている、と書かれている。

また同ウェブサイトで取り上げられていた国際機関OECD(Organisation for Economic Cooperation and Development、経済協力開発機構)のデータによると、2003年から2015年の間に、学校で孤独を感じていると答えた15歳児の割合がほぼすべての加盟国で上昇している。

ソーシャル・リセッションを引き起こす原因として度々議題に挙げられるのがテクノロジーの影響だ。一人で遊べるスマートフォンの普及やSNSの普及は、若者の孤独感を増加させる原因として非難されている。

しかしスマートフォンやSNSが害であるとは言い切れない。カイザー・ファミリー財団と政治経済誌エコノミストの調査では、孤独を感じていると答えた人のうち、ソーシャルメディアが役に立っていると答えた人と悪化させたと考えた人がほぼ同数だった。

長期的なソーシャル・リセッションが及ぼす悪影響

孤独を感じる状態が長く続くと、慢性的なストレス状態に陥り、害を及ぼす可能性がある。研究者たちは、慢性的な孤独は心臓病、認知症、うつ病、不安神経症のリスクと関連することを発見している。

孤独であることは、寿命が短くなることにも関連する。孤独は、肥満や座りっぱなしの生活よりも死亡率の上昇に関係している、というのだ。アトランティック誌が掲載した記事によると、アメリカのブリガムヤング大学のJulianne Hold-Lunstad(ジュリアン・ホールド=ランスタッド)が行った2010年のメタ分析により、孤独が死亡率に与える影響は、断続的または中程度の喫煙者と同様であることが分かっている。

人とのつながりを強化するためにやりたいこと

人と人とのつながりは、私たちが健康で充実した生活を築くための基盤である。

ワイル・コーネル・メディカル・カレッジの医師であり研究者であるDhruv Khullar(ドルヴ・カラー)は、ガーディアン誌の記事でこう書いている。

メールやビデオ通話、あるいは電話も、孤立感や孤独感を回避するのに役立つ可能性がある。テクノロジーは人と人との交流を完全に代替するものではないが、デジタルテクノロジーは、社会的なつながりの一端を担うことができると考える。利用する形式は、テキストよりも電話、電話よりもビデオ通話がよいと考える。

最後に、ソーシャル・リセッションを食い止めるためにやりたいことを4つ紹介する。

まず、毎日15分以上、大切な人(一緒に住んでいる人以外)とコミュニケーションをとる。ビデオ通話を利用すれば、相手の顔を見たり声を聞いたりすることができ、人と人とのつながりをより感じられる。

二つ目に、人と一緒に過ごすときにはその時間に集中すること。やるべきタスクから離れ、一緒に過ごす時間を大切にする。ビデオ通話をする際には、目の前に映る人に集中することを心がける。そうすることでSNSやメールの確認に気が取られなくなり、対話の質が高まる。

三つ目は、自分自身と向き合う時間を実践すること。自分ひとりと向き合う時間は、他者とよりよくつながるための土台となる感覚を与えてくれる。1日に数回、テクノロジーや仕事を離れて、静かな時間を楽しむ時間を作る。瞑想や自然の中で散歩する時間に使うのもよい。

最後は、人を助けること。人に手を差し伸べることは、その人とのつながりを築くだけでなく、自分は社会に貢献する価値があることを思い出させてくれる。隣に暮らす高齢者の様子を見に行く、仕事と育児の両立に悩む仲間の相談にのる、家族がいつもよりイライラしていたら、思いやりと理解を持って対応する。

また、自分が困ったときには他の人に助けを求めることも忘れないでほしい。

【参照サイト】The Coronavirus Could Cause a Social Recession
【参照サイト】Loneliness is pervasive and rising, particularly among the young | The Economist
【参照サイト】‘Social recession’: how isolation can affect physical and mental health | Coronavirus | The Guardian

FacebookTwitter