プラスチック資源循環促進法、何が変わる?わかりやすく解説
2022年4月1日に施行される「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」、略して「プラスチック資源循環促進法」または「プラスチック新法」。
国会で2021年6月に可決され、プラスチックに関わる業界へのビッグニュースとしてこれまで何度か話題になってきたものの、一体どのような法律で、具体的に何が変わるのかがイマイチわからない。
今回はそんな人のために、この新法についてわかりやすく解説していく。
プラスチック新法とは?これまでと何が違う?
プラスチック新法は、日本国内のプラスチックを規制する法ではない。事業者や自治体が、プラスチック製品の設計から製造・使用後の再利用まですべてのプロセスで資源循環をしていくための法だ。
これまでも日本はプラスチックのリサイクルに取り組んできており、さまざまな法も存在していた。しかしそれらは「容器包装リサイクル法」や「家電リサイクル法」など、それぞれの製品に焦点を当てたもの。すでにある製品が廃棄されたあと、どのようにリサイクル(=再活用)するか、という問題に目を向けていたのだ。
プラスチック新法では、「そもそもごみを出さないよう設計する」というサーキュラーエコノミー(循環経済)の考えが取り入れられ、基本原則として3R(リデュース・リユース・リサイクル)+「リニューアブル(再生可能)」を掲げている。
環境省の説明をまとめると、基本的にプラスチックの不必要な使用はしないこと(リデュース・リユース)。どうしても使わなくてはならない場合は、再生素材や再生可能資源(紙・バイオマスプラスチック等)などの再生できるものに切り替える(※今回の新しいR・リニューアブル要素)。
他にも徹底したリサイクルを実施し(リサイクル)、それが難しい場合には熱回収によるエネルギー利用を図ることで、一つのプラスチック製品のライフサイクル全体で資源をなるべく循環させていきたい、というものだ。
具体的には、以下の5つの措置を定めている。
プラスチック資源循環促進法にかかわる5つの措置
01. 環境配慮設計指針の策定
商品が「できる前」の設計、製造の段階で、環境配慮の方針を示す。
02. ワンウェイプラスチックの使用を合理化
コンビニのストローやスプーンなど、販売・提供段階でのワンウェイ(=使い捨て)プラスチックの使用を減らす。それには、現時点で使い捨てプラスチックを無償提供する事業者への勧告も含まれている。
03. 市区町村による分別収集や再商品化を促進
自治体による容器包装などの再商品化が可能に。
04. 製造・販売事業者等の自主回収を促進
自主回収・再資源化計画を作成。認定されれば廃棄物処理法の業許可が不要に。
05. 排出事業者に対する排出抑制や再資源化を促進
事業者が自主回収、再資源化計画を作成。認定されれば廃棄物処理法の業許可が不要に。
プラスチック有料化の対象となるのは?
2022年4月から国が特定プラスチック使用製品として定めた12品目を提供する対象事業者は、使用の「合理化(=環境負荷にならないように、提供方法を工夫すること)」を求められる。
国が特定プラスチック使用製品として定めた12品目
- フォーク
- スプーン
- ナイフ
- マドラー
- ストロー
- ヘアブラシ
- くし
- カミソリ
- シャワー用キャップ
- 歯ブラシ
- ハンガー
- 衣類用カバー
対象事業者
前年度に提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上の、以下の事業者が対象となる。
- 小売業(スーパー・コンビニ・百貨店など)
- 宿泊業(旅館・ホテルなど)
- 飲食店(カフェ・レストラン・居酒屋など)
- 持ち帰り・配達飲食サービス業(フードデリバリーのサービスなど)
- 洗濯業(ランドリーなど)
具体的には、どのように「合理化」していくのか?
- スプーンやフォークを有償で提供する
- プラスチックの代わりに、木製スプーンや紙ストローを提供する
- テイクアウトの飲料の蓋をストローが不要な飲み口機能付きに変更する
- ストローを付けるのをデフォルトにせず、利用が必要な場合にだけ声をかけてもらう
- 宿泊施設で、アメニティを部屋には置かず、必要な方はフロントに声をかけたりアメニティコーナーで受け取ることができるようにする
- クリーニング店でハンガーを店頭回収し、リユースまたはリサイクルを行う
プラスチック新法施行の背景
新法施行の背景には、深刻な海洋プラスチック問題や、これまで日本がプラスチックごみを輸出していたアジア諸国の廃棄物輸入規制強化がある。
背景その1:海洋プラスチック問題
海洋プラスチックとは、私たちの普段の生活や経済活動から海に流れ着いたり、直接海や川に捨てられたりして、最終的に海洋を漂うプラスチックごみのことを指す。世界の海に存在しているプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン。
プラスチック製品は丈夫で長持ちするために、一度海に流れついてしまうとほとんど分解されることなく、海洋生物の生態系や私たちの生活にも悪影響を及ぼすとして、今さまざまな国や企業がこの問題について取り組んでいるのだ。SDGs(持続可能な開発目標)のゴールの一つにもなっている。
背景その2:国内の資源循環の必要性の高まり
日本はこれまで、国内でごみとなっていたプラスチックを資源としてアジア諸国に輸出していた。しかし、2017年に中国がプラスチックの輸入を規制。それに続くようにして、タイなどの東南アジア諸国でも次々とプラスチック輸入の規制を強化していった。
こんな背景から、日本は国内で資源を循環させる必要性が高まってきたのだ。
2022年4月の施行後、何が変わる?
企業(12品目の特定プラスチック製品を扱う事業者)に求められること
- 目標の設定:プラ削減の目標を定めて、計画を立てる
- プラ製品使用の合理化:先述した「合理化」アクションにより、プラごみの排出を抑える
- 情報の提供:店頭ポスターやウェブサイトで、プラ循環のための取り組みについて公表する
- 体制の整備等:プラごみ削減責任者を立て、従業員にも浸透させる
- 安全性等の配慮:合理化をはかる際の、安全性・機能性その他の必要な事情に配慮する
- 実施状況の把握:自社で行うごみ削減の状況や効果を把握し、ウェブサイトなどで発信する
- 関係者との連携:国や関係地方公共団体、消費者などと密に連携して効果を高める
- 加盟者における特定プラスチック使用製品の使用の合理化:加盟者の事業で使われるプラ製品の合理化、そして指導を行うことでごみの排出を抑える
自治体に求められること
市町村は、家庭からのごみの分別回収に努め、必要に応じて再商品化をする。都道府県は、市町村の取り組みをサポートする。
消費者にとっての変化とは?
これまで無料で受け取れていたコンビニのプラスチックのスプーンや、ホテルのアメニティであるヘアブラシ、カミソリ12品目が有料化される。これからはマイボトルやマイバッグに加えて、マイカトラリーやマイブラシなど一通り持ち歩くことが求められるだろう。おしゃれで持ち歩けるカトラリーを販売する会社も増えてくると予測されている。
また、引き続きのごみ分別も求められる。これまで汚れたプラスチックごみを「燃えるごみ」として廃棄していた場合は、洗って分別するようになる可能性もあるので、各自治体のウェブサイトで確認が必要だ。
まとめ:プラスチック新法で生活が変わる
2022年4月施行のプラスチック資源循環促進法により、事業者、自治体などはさまざまな変化が求められる。生活レベルでも、これまで無料だったものが有料化されたりと不便を感じることはあるだろう。
この法律により、日本のプラスチック資源はどれほど循環されるのか。引き続き動向を追い続けたい。
【参照サイト】プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律
【参照サイト】環境省 – プラスチック資源循環法関連
【関連記事】12種類のプラ使用製品の排出抑制、プラスチック新法により4月1日から義務化