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微生物と共に社会をつくる?人間中心ではない「マルチスピーシーズ」の社会がもたらす喜びとは【多元世界をめぐる】

「マルチスピーシーズ」という言葉、聞いたことがありますか?「多種」を意味するこの言葉が今、人間中心のデザインから脱却する一助になるとして注目されているのです。愛媛大学のルプレヒト教授にお話を伺ってきました。

土をいじる女性

「音」が微生物を元気にする?土壌再生の最新研究

普段の生活の中で、微生物の存在に思いを馳せたことはありますか?──人間と同様に土壌微生物も特定の音に活力を得るという性質を活用し、荒廃した土壌を再生しようとする研究が始まっています。

人間中心を超えて都市の正義を問う。ヘルシンキが目指す「マルチスピーシーズ・シティ」とは?

フィンランド・ヘルシンキが発表したのは「マルチスピーシーズ」の視点から目指す、カーボンニュートラルへの道のりです。人間中心でない新たな考え方を提案するというこの概念が、いまヘルシンキで広がりを見せています。

ウイスキーの現場

発酵が教えてくれた、「目に見えないもの」を大事にする力

2023年2月、イタリア、フィンランド、スペイン、タイから、食文化の研究者、ジャーナリスト、世界トップクラスの料理人など、計12人の食や農の専門家たちが日本にやってきました。ほとんどが初めて日本を訪れるという彼らの訪問の目的は、日本各地の「発酵の現場」を回ることでした。

発酵食品は、健康に良いのはもちろん、その持続可能な生産工程はサステナビリティの側面からも魅力的なものです。ただ、今回のツアーを通して発酵食品が教えてくれたのは、「目に見えないもの」の大切さでした。たとえば、発酵食品は、作り手の技術だけでなく、微生物、土地の風土、環境、素材……そのすべてが重なり合って完成するもの。イタリアで地域の素材を使って味噌や醤油をつくる発酵食品のプロフェッショナルのカルロさんは、発酵は「魔法だ」と言いました。

そんな発酵に欠かせない微生物の存在は、私たちが生きる土地の健康を守るために大切な存在であり、土地の健康こそが、私たちが生きる世界をよくするために必要なもの。カルロさんはそんな言葉を伝えてくれました。そして、その土地の健康を守るために、化学薬品を使った大規模な農業ではなく、小さな農業や家庭での食事などが大事だと言いました。

最後に、こんな言葉を残してくれました。

「日本は島国です。世界中の島には、それぞれ生態系がありますが、その境界はどこでしょう?微生物の境界はどこでしょうか?たとえば、日本の生態系は、中国や韓国、他の国の生態系ともつながっています。私たちは、海や土地が誰かのものだと思っていますが、世界はすべてつながっています。宇宙はすべて一つの生態系。私たちが勝手に境界線を引いているだけで、本当は、ばらばらではなくかかわりあっています。料理も同じ。イタリア料理、フランス料理……全て同じ宇宙のなかにある材料を使っています」

効率や論理、目に見えるものが重視される社会では、つながりや微生物などの「目に見えないもの」はしばしば見逃されてしまいます。だけど、そんな目に映らない存在を大事にしながら生きることができたら、そこにはきっと、もっとやさしくて明るい世界が広がっているはず。そう思うのです。

目に見えない多様性を学べる、オランダの微生物ミュージアム

微生物も植物や動物のように、気候変動によって存在が脅かされています。オランダの微生物博物館「Micropia」で、地球の生態系にとって大切な、微生物について学んでみませんか?

プラごみからバニラ香料

プラごみが「バニラの香料」に。バクテリアを使った英の研究

イギリスの研究者が、プラスチックごみを「バニラ香料」にする方法を開発しました。バクテリアを使ってプラスチックの成分に化学反応を起こさせることで、バニラ香料の素であるバニリンという物質が作り出すことができます。

オランダ発、人を土の栄養に変えるコンポスト棺桶

人の体が堆肥化するには10年以上かかり、ニスが塗られた棺桶の金属部分と合成衣類は、数十年から何百年といったさらに長い時間がかかる。そんな中、今回オランダのデルフト工科大学の学生が設立したスタートアップLoopは、菌を使った生きた棺桶を開発した。堆肥化のプロセスを促進し、2〜3年で人の体を堆肥化させるこの棺桶は、人体からの老廃物を栄養素に変えるだけでなく、周りの土の性質を改善し、新しい生命が繁栄する機会を与える。