「通勤のジェンダーギャップ」を明かしたスウェーデン。盲点からまちづくりを考える

2022.11.22

Souma Motomi

モビリティのあり方は、気候変動対策において最も重要な話題のひとつだ。特に、CO2の排出が問題視されているガソリン車に対しては、EV(電気自動車)への置き換えや、公共交通機関への使用を増やすなどして、徐々に減らしていこうとする動きが先進国の間で見られる。

欧州では、車を使うことを前提に計画された「都市デザイン」そのものを見直し、徒歩や自転車で15分以内で移動できるまちづくり「15-minute city」といった新しい概念も注目を集めている。

車の使用を減らすまちづくりについて考えるとき、「ジェンダーギャップ」という意外な観点から問題解決の糸口を見つけた事例を紹介したい。

スウェーデン北部の都市ウメオでは、通勤のデータを分析した結果、そのジェンダー間ギャップが明らかになった。女性は路線バスを多く利用する傾向があり、男性は車を多く利用する傾向があったという。人々は、「より多くの男性が、通勤に路線バスを使うようになる方法はないだろうか」と考えた。車によるCO2の排出を大幅に減らすことにつながるからだ。

しかし、それを阻む要因のひとつがこの都市の「レイアウト」にあることもまた、明らかになった。ウメオ市では、病院などの女性が比較的多く勤務する職場が多い地区には路線バスが通っていることが多いが、ビジネス街や工業地帯といった男性が多く勤務する地区はそうではない。都市の中の「働く場所」もまた、ジェンダー間で偏りがあり、それが交通手段のギャップにもつながっていたのだ。

この状況を改善するためにウメオ市が進めているのが、「平等で持続可能な通勤のためのイノベーション(Innovation for equal and sustainable work commuting)」という名の調査プロジェクトだ。同プロジェクトでは、同都市の工業地帯で働く男性に公共交通機関で移動してもらう方法を調査している。

今後は、工業地帯のバス停やバスの本数を増やすといった具体的な対策を講じるほか、ジェンダーが交通手段の選択に及ぼす影響についても調査していきたいと、ウメオ市の男女平等戦略担当官のリンダ・グスタフソン氏は語る。都市圏の移動において、徒歩、自転車、公共交通の3つが占める割合を2025年までに65%にするのが同市の現在の目標だ。

一般的にも、車を好むのは女性よりも男性であり、使用率も高いとされている(※)。また、世界の大半の都市計画には、圧倒的に女性よりも男性が多く関わっており、男性のニーズを満たすようにデザインされている部分が多いと言える。こういった視点を持つことで、ウメオ市のようにより持続可能な都市を作るヒントが得られるかもしれない。

ウメオ市では、鉄道線路下の通路を、人が隠れられる太い柱や暗い空間をつくらず明るく広々としたデザインに整備するなど、夜間に移動する女性の意見を取り入れたまちづくりも行っているという。市役所に男女平等戦略担当官というポストがあり、そこに女性がついているということ自体も、まず私たちが参考にすべき部分かもしれない。同都市の今後の施策にも、引き続き注目していきたい。

Gender and Age Differences in Metropolitan Car Use. Recent Gender Gap Trends in Private Transport

【参照サイト】Swedish town rethinks its public transport to attract more men

この記事を書いたライター

相馬 素美

Souma Motomi

相馬素美(そうま・もとみ)1996年横浜出身。東京音楽大学器楽専攻鍵盤楽器(ピアノ科)、同大学院伴奏研究領域にて研鑽を積む。2020年にハーチ株式会社に入社、IDEAS FOR GOOD、Circular Yokohama等にてサステナビリティに関する幅広いトピックの取材・執筆のほか、企業向けのサステナビリティ研修、展示、地域イベント、ワークショップ等の企画運営を担当。2023年、半年間アイルランドに滞在し、語学研鑽や取材活動を行う。(この人が書いた記事の一覧