街中の「昨日」のパンを集めて売る、パリのベーカリー「DEMAIN‐明日‐」

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美食の国・フランスで有名なものとして、バゲットやクロワッサンを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、そんなフランスの象徴ともいえるパンでさえ、日々大量に廃棄されているのが現実だ。実際、フランスでは毎年約130万トンものパンが捨てられており、これはバゲットに換算すると約5億2,000万本にものぼる(※1)

パリ11区にあるベーカリー・DEMAIN(ドゥマン、「明日」の意)は、こうした食品ロスを防ぐユニークな取り組みで注目を集めている。この店は、提携するパリ市内の17のベーカリーから、前日の売れ残りのパンやペストリーを回収。工夫を凝らし、新たな商品として販売しているのだ。

例えば、前日のパンオショコラなどは、平らにして焼き、蜂蜜をかけてトーストすることで、口当たりと風味が良いパンに変身。全粒パンやライ麦パンなど、時間が経っても美味しく食べられるパンも扱っている。

Image via DEMAIN

Image via DEMAIN

さらに、売れ残ったパンを活用したグルメサンドイッチも提供。例えば、パストラミ、チェダーチーズ、キャラメリゼオニオン、ほうれん草を挟んだボリューム満点のサンドイッチがあり、価格も6ユーロ(約970円)以下と、欧州での価格としては手頃で。中には1ユーロ未満で購入できるパンもある。これは、物価高騰のなかで暮らす市民にとっても、ありがたいことだろう。

平均すると、パン屋は1日の生産量の5〜10%を廃棄しています。毎日数百種類の異なる製品を生産しなければならないパン屋にとっては、避けられない損失です。

DEMAINの共同創業者であるマーティン・ハーベリン氏は、POSITIVRのインタビューでこのように語っている。

フランスでは2016年に、スーパーマーケットが売れ残った食品を廃棄することを禁止し、慈善団体への寄付を義務付ける法律が施行された(※2)。しかし、店舗や家庭からの食品ロスは依然として多く、さらなる対策が求められている。

廃棄されるはずだったパンを創意工夫で再活用し、持続可能な消費を促進するDEMAIN。今後もより多くの売れ残り商品を有効活用するために物流システムの改善を行い、ゆくゆくは新たな販売拠点を開くことも検討していく予定だ。

DEMAINの取り組みは、単に食品ロスを減らすだけでなく、地域のベーカリー同士の協力や、誰もが手軽に利用できる仕組みを作ることにより、地域ビジネスの持続可能性にも貢献している。こうした工夫が広がることで、食品ロス削減の意識が社会全体に浸透し、持続可能な消費の文化が根付いていくかもしれない。

実は、こうしたパンの再流通の動きは日本でも見られる。たとえば「夜のパン屋さん」は、閉店後に売れ残ったパンを回収・販売する取り組みを行っており、現在は都内を中心に全国各地へと広がりを見せているのだ。このように、フランスだけでなく日本でも、食品ロスを減らすための工夫が少しずつ根付き始めている。

※1 Food waste in numbers Food waste in bakery and pastry shops Crumbler
※2 France’s law for fighting food waste Food Waste Prevention Legislation Zero Waste Europe Factsheet
【参照サイト】DEMAIN
【参照サイト】Demain : la boulangerie anti-gaspi qui vend le pain de la veille à moitié prix
【関連記事】開店は夜の7時半。ホームレス支援のビッグイシューが始めた「夜のパン屋さん」
Edited by Megumi

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