スキンケアブランドが、1万5,000円のバナナを販売。「化粧品代」の行き先を問いかける

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「100%天然の輝きを放つ、生命力のオーブ」が約3万5,000円。「医師が推奨する、毎日のビタミン活性剤」が約3万円。

Image via The Ordinary

ロンドンやパリの街角に突如現れたこのポップアップストアで売られているのは、特別な新薬ではない。その正体は、どこにでもあるオレンジやレモンだ。1本約1万5,000円の値がついた「魔法のエネルギーバー」に至っては、ただのバナナである。

このあまりに“非常識な”価格設定は、私たちが日々、化粧品カウンターで疑いなく受け入れてしまっている「贅沢」の正体を暴き出している。

カナダ発のスキンケアブランド「The Ordinary(ジ・オーディナリー)」が世界6都市で展開したポップアップ「The Markup Marché(ザ・マークアップ・マルシェ)」は、美容業界の価格設定に対する、痛烈な皮肉だ。彼らがターゲットにしたのは、製品の原価に対して最大700%にも達すると言われる過剰な価格上乗せ(マークアップ)である。

ポップアップストアに並ぶのは、豪華なパッケージに包まれ、大袈裟な宣伝文句を添えられた日常の食料品。消費者は、食品秤を使って「中身の価値」と「広告・パッケージのコスト」の圧倒的な乖離を視覚的に突きつけられる。

The Ordinaryが問いかけているのは、私たちが支払っている高額な代金の大部分は、肌を美しくする成分ではなく、ブランドが作り上げた「物語」や「雰囲気」を維持するために消えているということだ。このポップアップは、そんな消費のあり方を「バナナを1万5,000円で買うことと同じくらい滑稽なことだ」と笑い飛ばしてみせた。

Image via The Ordinary

この試みの背景には、現代の消費者が「憧れ」や「イメージ」だけでは財布を開かず「実際の効果」を重視するという価値観の変化がある。

SNSを中心に、高価なブランド品と同等の効果を持つ安価な製品を探し出す「デュープ(Dupe)文化」が定着し、消費者の関心は少しずつ「誰が言っているか」から「何が入っているか」へと移り変わった。The Ordinaryはこの変化を支持し、創業当初から掲げてきた「成分の透明性」という武器を、スーパーマーケットという日常の風景に持ち込むことで、より広い層へとその思想を浸透させたのだ。

さらに、このプロジェクトは業界の風潮への批判に留まらない。展示された食品を地元のフードバンクへ寄付し、10万カナダドル(約1,100万円)以上の寄付を表明しているのも特徴だ。美容業界の価格構造を批判するだけでなく、食料支援という具体的な行動と結びつけた。

「宣伝文句ではなく、成分を買おう」The Ordinaryが発したこのシンプルなメッセージは、美容業界の枠を超え、あらゆるビジネスにおける誠実さのあり方を問い直す。

私たちが支払う代金の「行き先」は、本当に社会や肌を豊かにするものなのか。業界のブラックボックスをあえて開示し、その内訳に誇りを持てるかという企業の覚悟こそが、これからの時代のブランド価値になるのだろう。

【参照サイト】The Markup Marché.
【参照サイト】The Ordinary sells $176 bananas to make a point about beauty markups
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