自然派からゼロウェイストまで。ヨーロッパで注目の“スローな”コスメ【欧州通信#25】

Browse By

近年ヨーロッパは、行政およびビジネスの分野で「サステナビリティ」「サーキュラーエコノミー」の実践を目指し、さまざまなユニークな取り組みを生み出してきた。「ハーチ欧州」はそんな欧州の最先端の情報を居住者の視点から発信し、日本で暮らす皆さんとともにこれからのサステナビリティの可能性について模索することを目的として活動する。

ハーチ欧州メンバーによる「欧州通信」では、メンバーが欧州の食やファッション、まちづくりなどのさまざまなテーマについてサステナビリティの視点からお届け。現地で話題になっているトピックや、住んでいるからこそわかる現地のリアルを発信していく。

前回は、バレンタインなどのイベントに合わせて選びたい「欧州各国のサステナブル・チョコレート」を紹介した。皆さんの試してみたいものは見つかっただろうか。今回のテーマは「サステナブルなコスメ」。環境に大きな負荷をかけずに、乾燥や汚れから肌を守る、ヨーロッパの化粧品やスキンケアブランドをご紹介したい。

【フランス】拡大する「スローコスメ」市場。パリ市もゼロウェイストコスメブランドを立ち上げ

現在、フランスでは自然素材を使用した「スローコスメ」の市場が拡大している。Harris Interactiveの調査によると、18~50歳のフランス女性の92%が少なくとも年に1回はナチュラルまたはオーガニック化粧品を購入しているという(※)

ベルギー発のスローコスメティック協会が設定したスローコスメティック認証は、認定されている約330ブランドのうち、80%以上がフランスのコスメブランドであるとされており、その広がりがうかがえる。

パリ市も2021年には、スローコスメティック認証を受けたフランスのゼロウェイストコスメの先駆者「Pachamamaï(パチャママイ)」と共同でコスメブランド「A Portée Demain(ア・ポルテ・ドゥマン)」を立ち上げている。自然由来の素材で、包装なしの固形シャンプーや固形歯磨き粉などを揃えているだけでなく、100%フランスでの製造を行うことで、持続可能なローカル消費を促進している。

これらのブランドの商品は、オンラインやパリ市庁舎に隣接するブティック「Paris Rendez-Vous」で購入可能だ(2024年1月〜春までは休業中)。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Pachamamaï(@pachamamai)がシェアした投稿

9 FRANÇAISES SUR 10 ACHÈTENT DES COSMÉTIQUES BIO OU NATURELS. MAIS PAS FORCÉMENT EN MAGASIN BIO !
【参照サイト】SLOW COSMÉTIQUE
【参照サイト】PARIS-CI LES COSMÉTIQUES RESPONSABLES

【イギリス】「自然」を取締役に就任した、Faith in Natureのスキンケア

スーパーや自然派のドラッグストアなどにいくと、カラフルな植物柄パッケージの商品を見かける。イギリス発のB Corpブランドである「Faith in Nature」の商品だ。

1974年に設立されたFaith in Natureは、1999年以来パッケージにリサイクル可能な素材を使用しており、最近はリフィルステーションの推進や大容量ボトルの使用を促進することでプラスチック使用量を減らすなど、ゼロウェイストに向けた解決策に取り組む。

その他にも同社は、全ての製品をイギリス国内で製造することで、地元の雇用を促進するとともに、輸送にかかるカーボンフットプリントを削減したり、チャリティー団体・TreeSistersとのパートナーシップにより、注文ごとに木を植えたりしている。また2022年には、「自然」が取締役に就任したことで話題になった。

通常のシャンプーや石鹸と比べると少し値段は張るものの、手が届かないレベルではない。リフィルなどの選択肢もうまく使いながら、生活に取り入れたいブランドだ。

【参照サイト】Faith in Nature

【オランダ】子どもの未来を奪わない、赤ちゃんから使えるスキンケア「Naïf」

オランダ発のスキンケアブランド「Naïf」は、子どもから大人まで全ての人と地球に優しい製品を提供する。「自分の子どもに使いたくない製品は作らない」「子どもの未来を奪わない」をモットーに、地球にも身体にも優しい製品を生み出すブランドだ。

B Corp認証を取得しており、環境負荷削減と生物多様性を守るため、ビジネスの隅々まで工夫を凝らす。オランダで販売される日焼け止めの多くが「化学UVフィルター」と呼ばれる成分を含む中、Naïfの日焼け止め製品では一切使用されていない。また、製品中のマイクロプラスチック不使用を掲げるのと同時に、パッケージに使用するプラスチック量の削減にも力を入れている。

製品は97.7%が天然素材で作られ、サトウキビ原料のバイオプラスチックから再生プラスチックへの切り替え、詰め替え容器の使用拡大なども推進する。2019年と比較してプラスチック包装容器の使用を半減させたことで、具体的な環境保護への取り組みを示している。

手作り感のあるかわいいパッケージが印象的な「Naïf」の商品は、オランダのスーパー大手・アルバートハインや薬局大手・エトスなどで購入できるのも嬉しい。

 

View this post on Instagram

 

A post shared by Naïf Good Care (@naifcare)

【参照サイト】Naïf

【オーストリア】薬剤師が開発したナチュラルコスメ・Saint Charles Apothecary

ウィーン6区に本店のあるナチュラルコスメのお店・Saint Charles Apothecaryの創業は1886年。当時は薬局としてスタートした。一歩入るとタイムスリップしたような気分になる店内には、開店当時の薬局の面影を残す棚にアンティークの薬瓶を思わせる不透明なガラス容器に入れられたバス用品やケア製品が並ぶ。

薬剤師でもあるお店のオーナーの信条は、自然が持つ治癒力を用いて製品を開発すること。ヨーロッパの伝統的な薬草から作られるのは、100%天然素材のナチュラル・オーガニックな石鹸やコスメだ。

お店の一押しである石鹸にはストーリーがある。2008年に鳥インフルエンザが流行した際、オーナーは、通常は化学薬品が用いられる消毒用石鹸を全て天然ハーブから作ろうと思いついた。より高い殺菌効果を得るため試行錯誤の末、タイムのエッセンシャルオイル・シナモン・ユーカリプスなどを組み合わせた原料で「自然派消毒石鹸」が誕生した。そのほかにも、薬草をベースにしたバス用品・スキンケア・サプリまで、一貫したコンセプトで作られた豊富な製品ラインを提供している。

オーナーの自然へのこだわりは、環境保全やサステナビリティへの取り組みにも反映されている。例えば、製品容器の9割はダークな紫か茶色の100%リサイクル可能なガラスボトルを使用し、プラスチックの使用は極力避けている。また化粧箱は一切使用せず、ガラス容器の保護には全て再生紙を使っている。少しすくんだ色の再生紙に無造作に包まれたなガラスの容器は、どこかノスタルジックでお洒落だ。

Image via Saint Charles Apocthecary

【参照サイト】Saint Charles Apothecary

編集後記

肌荒れを防ぐために、あるいはリラックスできる時間のために、スキンケアを日常に取り入れている人は多いだろう。しかし、それらの成分が流れ出たときに自然を悪影響を与えてしまったり、パッケージに使い捨てプラスチックが使用されていたりと、依然として問題も多い。

一方、今回ご紹介したブランドのように、自然由来の成分をなるべく環境負荷の小さい方法でユーザーまで届けようとする試みが広がっている。信じられるブランドの商品を少しずつ生活に取り入れることは、自然環境を改善する「投票」にもなり、長期的な私たちの生活環境も豊かにしてくれるかもしれない。

Written by Erika Tomiyama, Megumi, Kozue Nishizaki, Yukari Fujiwara
Presented by ハーチ欧州

ハーチ欧州とは?

ハーチ欧州は、2021年に設立された欧州在住メンバーによる事業組織。イギリス・ロンドン、フランス・パリ、オランダ・アムステルダム、ドイツ・ハイデルベルク、オーストリア・ウィーンを主な拠点としています。

ハーチ欧州では、欧州の最先端の情報を居住者の視点から発信し、これからのサステナビリティの可能性について模索することを目的としています。イベントでの講演や、アムステルダムの現地視察ツアーなどお気軽にご相談ください。

事業内容・詳細はこちら:https://harch.jp/company/harch-europe
お問い合わせはこちら:https://harch.jp/contact

「欧州サステナブル・シティ・ガイドブック」発売中!

ハーチ欧州では、アムステルダム・ロンドン・パリの最新サステナブルスポットを紹介する「欧州サステナブル・シティ・ガイドブック」を販売中です。

海外への渡航がしやすくなってきた昨今、欧州への出張や旅行を考えている方も多いのではないでしょうか。せっかく現地に行くなら、話題のサステナブルな施設を直接見てみたい──そう思っている方もいるかもしれません。今回は現地在住のメンバーが厳選した、話題のレストラン・ホテル・百貨店・ミュージアムなどのサステブルスポットを一冊のガイドブックにまとめました。実際に渡航される方の旅行のお供にしていただくのはもちろん、渡航の予定がない方も現地の雰囲気や魅力を存分に感じていただける内容になっています。ご購入・詳細はこちらから!

欧州通信に関する記事の一覧

FacebookTwitter