〜歩いて、食べて、手を動かして。IDEAS FOR GOODとめぐる「これからの豊かさ」の探究リトリート〜
GDPの拡大や効率化、便利さの向上──。私たちは長いあいだ、経済が成長し、暮らしが便利になっていくことを「豊かさ」のひとつとして追い求めてきました。その結果、できることは増え、暮らしは確かに便利になりました。
一方で、気候変動や生物多様性の損失が進み、地域では、そこにしかなかった風景や文化、暮らしの営みが失われつつあります。これまでの「豊かさ」を、そのまま未来へ延長していくことは、本当にこれからの私たちにとっての豊かさにつながるのでしょうか。経済的な成長や物質的な充足を絶対条件としない豊かさがあるとしたら、それはどこにあり、どのように生み出すことができるのでしょうか。
今回、そんな問いを深めるべく訪れるのは、富山県です。

豊かな水に育まれ、人と自然との関係のなかで独自の風土を育んできた砺波(となみ)。すでにある景観や暮らしのなかに新しい価値を見つけてきた射水(いみず)・内川。そして、60年以上続く味噌屋を起点に、人が集まり、新しい時間や関係が生まれはじめている魚津。3つの地域をめぐりながら、村を歩き、食卓をつくり、魚をさばき、そして風土に触れます。
ここで出会うのは、誰かが完成させた「豊かなもの」ではありません。人と人、土地と自然、過去とこれから。その関係のなかで見つけられ、受け取られ、ときには手放されながら、少しずつ育まれてきたもの。だから私たちも、ただ「見に行く人」ではなく、そのプロセスに少しだけ入ってみる。豊かさを探しに行くのではなく、豊かさが生まれる場所に身を置き、その生まれ方を自分の身体で確かめてみます。
今回のツアーは、富山という土地に触れ、「これからの豊かさ」を自分なりに考えてみる、その小さなヒントを持ち帰る1泊2日の探究リトリートです。IDEAS FOR GOODの記事で出会った人や場所へ。今度は、その記事の続きを、自分の足で確かめに行きませんか。
今回の訪問先
01. 土地と人の関係から、「豊かさ」を読み解く(砺波・南砺|杜人舎/散居村)
富山県西部に位置する砺波・南砺エリア。立山連峰からの恵みの水と、家々が屋敷林(カイニョ)に囲まれて田園の中に点在する国内最大級の「散居村」が広がる地域です。古くから真宗文化や民藝運動の拠点でもあり、自然への敬意と受け入れる心を表す「土徳(どとく)」の精神風土が今なお暮らしに深く息づいています。
旅のはじまりは、富山県西部で地域の文化や風景を伝える「富山県西部観光社 水と匠」が手がけた杜人舎へ。水と匠の林口砂里さんのご案内のもと、民藝や土徳の考え方に触れながら、「豊かさは、どこから生まれているのだろう?」という問いに向き合います。


この地に広がる散居村の田園風景は、誰かが一度に作ったものではありません。水や雪、土といった自然条件と向き合い、何世代にもわたって手を入れてきた結果です。ここで、自らの足で村やまちを歩き、「土地の豊かさを見る目」を開いていきます。
夜は、その日に出会う土地の食材をヒントに、みんなで食卓をつくります。「何を食べたいか」ではなく「今ここにあるもので、何をつくれるか」「ここにいる人たちでなにができるか」。自分たちでコントロールするのではなく、あるものを受け取り、何かに委ねながら時間や関係そのものをともに編み出していく「手放しながら、つくる」食卓の体験です。
案内人:林口 砂里さん(はやしぐち・さり)さん

東京デザインセンター等での勤務を経て、2012年より拠点を富山県高岡市に移し、地域のものづくり·まちづくり振興プロジェクトにも取り組んでいる。2019年に、富山県西部地区の地域資源を活かして活性化を図る観光地域づくり法人「富山県西部観光社 水と匠」のプロデューサーに就任。富山県高岡市出身。
02. 「見慣れたもの」を、もう一度見つけ直す(射水・内川|まち歩き、魚さばき)
二日目は、富山湾と富山新港を結ぶ「内川」を中心に栄えた、射水市の港町・新湊エリアへ。かつて北前船の寄港地として賑わい、川の両岸に漁船が連なり民家が隙間なく立ち並ぶノスタルジックな情景から「日本のベニス」とも称される。水辺と人々の暮らしの境界線が緩やかに入り混じる、独特な情緒を持つ地域です。
ここ射水市・内川では、建築や空間デザインを通じて、地域の「場づくり」を行ってきたグリーンノートレーベルの明石博之さんと一緒にまちを歩きます。「すでにあるものの価値を見つけ直す」感覚を味わいながら、水路、古民家、道端の小さな変化、普段は見過ごしてしまうものに目を向けてみる。そんな朝の時間を過ごします。

まち歩きの後は、明石さんが運営する漁港のシェアキッチン「みなとキッチン」へ。週に一度、朝、獲れたての魚を漁師さんから届けてもらうという明石さんの生活を体験すべく、その日水揚げされた魚を自分たちでさばき、調理して味わいます。見る、聞く、触る、つくる、食べる──。五感をフルに使い、土地の恵みに自らの身体を重ねていきます。
案内人:明石博之(あかし・ひろゆき)さん
1971年広島県尾道市(旧因島市)生まれ。多摩美術大学でプロダクトデザインを学ぶ。大学を卒業後に当社に入社、2008年に代表取締役に就任。全国各地を飛び回るうちに自らがローカルプレイヤーになることに憧れ、2010年に妻の故郷である富山県へ移住。漁師町で出会った古民家をカフェにリノベーションした経験をキッカケに秘密基地的な「場」をつくる面白さに目覚めた。その後、まちの価値を拡大する「場」のプロデュース・空間デザインを仕事の軸として、富山のまちづくりに取り組んでいる。
03. 「まだないもの」を、自分の暮らしにつくる(魚津|BOBO.で体験するワークショップ)
標高2,400mを超える北アルプスの山々から富山湾の海底まで、わずか25kmの急勾配を一気に水が駆け下りる「巨大な水脈」の上にある魚津市。冷たく栄養豊富な湧水に恵まれたこの地では、豊かな水と米、山海の恵みを生かした独自の食文化が今日まで受け継がれています。
最後に訪れるのは、創業60年以上の味噌屋がひらいたカフェであり、地域のコミュニティ拠点「BOBO.」。宮本みそ店の宮本晃裕さんから、家業を守るだけでなく、人が集まる場をつくり出してきた歩みを伺います。
富山で出会った「豊かさ」を、自分の暮らしにどう持ち帰れるだろう。二日間で印象に残った風景や言葉を手がかりに、「自分の日常にあったらうれしい場や時間」を考えます。


案内人:宮本晃裕(みやもと・あきひろ)さん
宮本みそ店・BOBO.代表。富山県魚津市で、祖父母から受け継いだ味噌づくりを守りながら、自ら米を育て、糀・味噌・甘酒まで一貫して手がける。2010年に宮本みそ店を本格始動、2022年には古民家を活用した拠点「BOBO.」を開設。植物性ジェラート「BOBO.Gelato」や発酵ランチ、味噌づくり体験などを通して、発酵と農、地域の営みを次の世代へつなぐ活動を続けている。
こんな方におすすめ
企画概要
旅行代金に含まれるもの:現地バス代、乗船料、食事代(3食:1日目昼・夜、2日目朝・昼)、体験料・入場料・見学料、宿泊代、旅行保険代
※富山駅まで/富山駅からの交通費は各自ご負担ください。
旅のしおり
1日目(10月30日)
11:30:富山駅集合、バス移動
12:30~13:30:杜人舎にてランチ
13:30~14:30:善徳寺特別拝観
14:30~15:30:富山の「土徳」に触れる
15:30:善徳寺出発
16:00〜16:30:閑乗寺公園にて散居村のお話
16:30:移動、買い出し
17:30:夕食準備
18:30〜21:00:夕食&1日目の振り返り
21:00〜:自由交流・入浴・就寝(宿泊:閑乗寺高原 JOY BASE)
2日目(10月31日)
8:00:朝食、チェックアウト
8:30:バス移動
10:00~12:00:内川まちあるき
12:00~13:00:地魚をさばいて味わう体験ランチ(みなとキッチンにて)
13:00 魚津へ移動
14:00~17:00:BOBO.にて交流・ワークショップ
17:45:富山駅解散
ともに旅をつくる人
伊藤 智子(IDEAS FOR GOOD編集部)

大学時代、ヨーロッパで数年間過ごし、大学院では移民・難民研究(開発人類学)を専攻。帰国後、大阪から千葉の里山に移住し、山の中の古民家でシェアハウス生活を送りながら、生態系の一部としての人間のあり方を模索している。食を通じた地域づくりや高校生への講師活動にも携わり、人と人がつながる場づくりに取り組む。2020年からIDEAS FOR GOODで取材・執筆を続け、人間以外の視点にも寄り添いながら、日々の暮らしと社会の問いを地続きに捉える記事を届けている。
相馬 素美(IDEAS FOR GOOD編集部)

1996年生まれ、横浜出身。東京音楽大学器楽専攻鍵盤楽器(ピアノ科)、同大学院伴奏研究領域にて研鑽を積む。2020年にアーティクル株式会社に入社、IDEAS FOR GOOD、Circular Yokohama等にてサステナビリティに関する幅広いトピックの取材・執筆のほか、企業向けのサステナビリティ研修、展示、地域イベント、ワークショップ等の企画運営を担当。2023年、半年間アイルランドに滞在し、語学研鑽や取材活動を行う。
