LEAPアプローチとは・意味
LEAPアプローチとは?
LEAPアプローチとは、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が提唱する、自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づき体系的に評価するためのプロセスである。「LEAP」とは、Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェーズの頭文字をとったもので、企業が自社の経営判断を行うとともに、投資家等に対して情報開示を行うためのガイダンスである。
【LEAPアプローチの4つのフェーズ(出所:TNFD)】
L(Locate):サプライチェーン全体を対象に自然との接点を発見し、優先すべき地域を特定する
L1:ビジネスのフットプリント
L2:自然との接点
L3:優先地域の特定
L4:セクターの特定
E(Evaluate):自社の企業活動と自然との依存関係や影響を診断する
E1:関連する環境資産と生態系サービスの特定
E2:依存関係と影響の特定
E3:依存関係の分析
E4:影響の分析
A(Assess):診断結果を基に、重要なリスクと機会を評価する
A1:リスクの特定と評価
A2:既存リスクの軽減と管理
A3:追加リスクの軽減と管理
A4:重要性の評価
A5:機会の特定と評価
P(Prepare):自然関連リスクと機会に対応する準備を行い、投資家に報告する
P1:戦略とリソース配分
P2:パフォーマンス測定
P3:報告
P4:公表
まず最初に行うべきは優先地域の特定
LEAPアプローチは優先地域の特定から始まる。TNFDは、①完全性の低い(劣化している)生態系、②生物多様性の重要性が高い生態系(いわゆる生物多様性ホットスポット)、③水ストレスがある地域、の3つを優先地域と定めている。企業は、自社が直接あるいはバリューチェーンを通して間接的にこれらに該当する地域で事業を行っている場合には、事業のその生態系への依存度、事業活動がその生態系に及ぼす影響を分析・評価することが求められている。
TNFDは、食品、エネルギー、鉱業、輸送、インフラ、農林水産業、紙・パルプなどを重要セクターとしており、これらのセクター向けのガイダンスを優先的に開発するとしている。
LEAPアプローチに基づく情報開示の例
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が気候関連の情報開示スタンダードになったように、将来的にはTNFDに準拠した情報開示が主要な上場企業に義務化されると言われている。
TNFDフレームワークの最終版公開は2023年9月、義務化されるとしてもその先の話であるが、キリンホールディングスは日本企業で初めてLEAPアプローチに基づく開示を開始した。こうした情報は投資家にとって有用なものであり、同様の取り組みを行う企業が増えることが期待される。
事業への影響が大きく、かつ自然や社会環境上も重要な場所~スリランカの紅茶農園~
Locate: 「キリン午後の紅茶」のおいしさを支えるのはスリランカの紅茶農園。農園に沿岸大都市の水源が存在
Evaluate: 日本が輸入するスリランカ産茶葉の約25%を「キリン午後の紅茶」が使用。茶葉生産地は気候変動により水リスク・ストレスが増大し、豪雨で肥沃な土壌も流出
Assess: 依存度が高いスリランカ産茶葉が持続可能に使えない場合は商品コンセプトが成立しなくなる
Prepare: 2013年からスリランカの紅茶農園に対してレインフォレスト・アライアンス認証取得支援を実施。認証取得農園数・トレーニング農園数は環境報告書・Webで広く公開(出所:キリンホールディングス環境報告書2022)
【参照サイト】TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク 試作版v0.1
【参照サイト】TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク 試作版v0.2概要
【参照サイト】The TNFD Nature-related Risk and Opportunity Management and Disclosure Framework Beta v0.3 Summary
【参照サイト】キリンホールディングス環境報告書2022