2030年に向けたエネルギーミックスとは?現状と課題をわかりやすく解説
2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて、注目を浴びる言葉の一つがエネルギーミックスだ。これは、2030年に日本が目指したい電源構成を指す。
本記事では、エネルギーミックスに関する基本情報と、日本の課題、そして今後目指していく姿について簡単に解説していく。
エネルギーミックスとは?
エネルギーミックスは、さまざまな発電方法を組み合わせて(ミックスして)社会に必要な電力を供給すること。「電源構成」や「ベストミックス」などと呼ばれる場合もある。
現在、火力や水力、原子力、再生可能エネルギーなど、さまざまな発電方法があり、それぞれ長所もあれば短所もある。ある特定のエネルギー源だけに依存すると、災害や国際情勢の変化(紛争など)、パンデミックなど何らかの理由でその発電ができなくなったときに、人々の生活に欠かせない電気が供給できなくなる。
▶ それぞれのエネルギー源比較はこちら: 再生可能エネルギーを巡る世界の潮流は?その種類とメリット・デメリット
そこで、先進諸国では基本的にいくつかの異なる電源を組み合わせて電力の安定供給を図っている。これがエネルギーミックスを行う理由だ。
エネルギーミックスの最適化に向けて、日本では「Economy(経済性)」「Environment(環境性)」「Energy Security(供給安定性)」、そしてすべての前提である「Sefety(安全性)」の4つの観点を重視。その頭文字を取って「3E+S」と表現されている。以下は、政府が2030年に目指す、理想の形の形である。
▶ 用語解説:エネルギーミックスとは・意味
エネルギーミックスに向けた、現状と課題とは?
では、現状は一体どうなのか。まず、日本のエネルギー自給率は諸外国に比べて著しく低い。その理由は、国内にエネルギー資源となる石油・石炭・液化天然ガス(LNG)などの化石燃料がほとんどなく、主に中東からの輸入に頼っているからだ。
2018年度のエネルギー自給率を他の先進国と比較すると、日本は11.8%、アメリカは97.7%、オーストラリアは320.0%、カナダは175.8%となる。
東日本大震災の前年、2010年におけるエネルギーミックスの内訳は、石油、石炭などを合わせた火力発電が66%、原子力発電が25%、再生可能エネルギーが9%となっていた。しかし、2011年の福島第一原子力発電所の事故により、2012年には原子力発電が2%となり、このバランスが大きく崩れた。原発の停止に伴い、石油、石炭、液化天然ガス(LNG)への依存が大きくなったのだ。
2019年には火力発電が76%、原子力発電が6%、再生可能エネルギーが18%に推移している。
日本が2030年に目指す電源構成とは?
日本が今後目指していく姿については、2021年10月に経済産業省より発表された「第6次エネルギー基本計画」を見ていこう。
2021年に見直された「2030年度のエネルギーミックス」では、主に火力発電の再生可能エネルギーの割合が変化した。原子力発電の割合は維持するものの、再生可能エネルギーを18%程度から約2倍程度の36〜38%に引き上げ、主力であった火力発電を76%から41%へと大きく減らす。また、新たに発表された電源構成では「水素・アンモニア発電」も、1%を占めるように目標を設定するという。
特に、産業・業務部門のエネルギー消費効率の改善はまず取り組むべき課題として挙げられており、政府は、省エネ設備投資を行うとしている。また、2022年4月に導入されたFIP制度(※1)などの入札制度を使い、再エネの市場への統合などをはかることで、国民負担を減らしていくという。
※1 再生可能エネルギー発電事業者が、市場価格で売電するときに、一定の割増金(プレミアム価格)を上乗せできる制度。
まとめ
エネルギーミックスの内訳は、国の方針や地理的条件などによりさまざまだ。災害が多く、他国からのエネルギー輸入に頼っている日本は、今後脱炭素を実現できるのだろうか。
2050年のカーボンニュートラル達成に向けてエネルギーをどう供給していくのかに、引き続き注目していく。
【参照サイト】経済産業省 – 2050年カーボンニュートラルを目指す 日本の新たな「エネルギー基本計画」
【参照サイト】経済産業省 資源エネルギー庁 – 2030年エネルギーミックス実現へ向けた対応について~全体整理~
【関連ページ】エネルギーミックスとは・意味