ジェンダーギャップ指数とは?2023年「男女不平等」の現状
ジェンダーギャップ指数とは?
ジェンダーギャップ指数は、各国の男女格差を数値として可視化したものである。0が完全不平等を、1が完全平等を表す。毎年、世界経済フォーラム(WEF)が公開しており、賃金格差や進学率、健康や政治参加など、様々な観点から男女格差の現状を評価し、改善することを目的としている。
ジェンダーギャップ指数を構成する要素
ジェンダーギャップ指数は、経済、教育、保健、政治という4分野で構成されており、各分野には2次指標がいくつか設定されている。以下がその一覧だ。
経済分野
- 労働参加率
- 同一労働における賃金格差
- 推定所得の男女比
- 幹部や管理職の男女割合
- 専門職・技術職の男女割合
教育分野
- 識字率
- 初等教育進学率
- 中等教育進学率
- 高等教育進学率
保健分野
- 出生時の男女比
- 健康寿命の男女比
政治分野
- 国会議員の男女比
- 女性官僚の比率
- 国家元首の在任年数(過去50年)
世界の現状
では、各国の2023年のジェンダーギャップ指数はどうなっているのだろうか。
2023年版の調査において、世界全体のスコアは0.684。国別では、14年連続でアイスランドが1位を獲得。スコアは0.912と、146カ国中唯一0.9を超えた。これは、ジェンダーギャップのうち90%以上を解消したことを意味する。反対に、最下位はアフガニスタンで、スコアは0.405だった。
以下では、上位10カ国・下位5カ国と、日本を含むG7の順位を確認してみよう。
上位10カ国
1位 アイスランド(0.912)
2位 ノルウェー(0.879)
3位 フィンランド(0.863)
4位 ニュージーランド(0.856)
5位 スウェーデン(0.815)
6位 ドイツ(0.815)
7位 ニカラグア(0.811)
8位 ナミビア(0.802)
9位 リトアニア(0.800)
10位 ベルギー(0.796)
下位5カ国
142位 パキスタン(0.575)
143位 イラン(0.575)
144位 アルジェリア(0.573)
145位 チャド(0.570)
146位 アフガニスタン(0.405)
G7
6位 ドイツ(0.815)
15位 イギリス(0.792)
30位 カナダ(0.770)
40位 フランス(0.756)
43位 アメリカ(0.748)
79位 イタリア(0.705)
125位 日本(0.647)
世界のジェンダー平等の状況は新型コロナ感染症拡大以前の水準に回復した一方で、危機の収束により変化のペースが停滞してしまっている。2022年度版の結果から縮まったジェンダーギャップは全体で0.3%にとどまっている。
日本の現状
日本のスコアは0.647で、125位。前年(スコア0.650、116位)と比べてわずかに後退した。主要7カ国(G7)のなかでは日本(125位)が最下位。また、アジアでもフィリピン(16位)、シンガポール(49位)、ベトナム(72位)、タイ(74位)、韓国(105位)、中国(107位)も下回る結果となった。
日本の経済、教育、保健、政治、それぞれのスコアは以下である。
- 経済 0.561 123位
- 教育 0.997 47位
- 健康 0.973 59位
- 政治 0.057 138位
教育と健康の分野ではスコアが0.9を超えており、男女平等がかなり達成されている一方で、経済分野(0.561)と政治分野(0.057)の達成率が低くなっている。特に政治分野でのスコア0.057は世界最低レベルで順位は138位である。国会議員や閣僚の女性比率が低いことや、女性の国家元首が誕生していないことが大きな理由だ。
では、それぞれの分野のスコアを見てみよう。
経済分野
日本 0.561(123位)
- 労働参加率 0.759(81位)
- 同一労働における賃金格差 0.621(75位)
- 推定所得の男女比 0.577(100位)
- 幹部や管理職の男女割合 0.148(133位)
1位:リベリア共和国 0.895
ワースト:アフガニスタン 0.188
教育分野
日本 0.997(47位)
- 識字率 1.000(1位)
- 初等教育進学率 1.000(1位)
- 中等教育進学率 1.000(1位)
- 高等教育進学率 0.976(105位)
1位:ベルギー、カナダ、フィンランド、フランス、ニュージーランドなど25カ国 1
ワースト:アフガニスタン 0.482
保健分野
日本 0.973(59位)
- 出生時の男女比 0.944(1位)
- 健康寿命の男女比 1.039(69位)
1位:ブラジル、ドミニカ共和国、ハンガリーなど 26カ国 0.98
ワースト:アゼルバイジャン共和国 0.936
政治分野
日本 0.057(138位)
- 国会議員の男女比 0.111(131位)
- 女性官僚の比率 0.091(128位)
- 国家元首の在任年数(過去50年) 0.000(80位)
1位:アイスランド 0.901
ワースト:アフガニスタン 0
ジェンダーギャップによる問題
ジェンダーギャップが広がると、下記のような問題が生まれてくる。
- 政治・経済共に重要な意思決定への女性の参加率の低さ(これにより、一部の属性の人々により重要な決定がされてしまう)
- 男女の賃金格差
- ジェンダーと社会的役割に関する偏見(差別・マイクロアグレッションなどにつながる)
- 暴力による被害
- セクハラ・モラハラ問題
- 男性優遇・女性優遇制度(“ピンク税”やレディースデーなど)
まとめ
ジェンダー平等は、2006年の初調査以来、わずか4.1%しか進んでいない。このままだと、全体的なジェンダー平等が達成されるのは2154年。つまりギャップを埋めるのに「131年」もの年数が必要なのだ。また経済分野、政治分野の達成までにはさらに時間がかかる見込みで、経済的平等を達成するには169年、政治的平等には162年が必要だという。
ジェンダー平等は、単なる目標ではなく、社会全体の健康と繁栄にとって不可欠なものだ。教育、職場、政治などの分野で平等な機会を確保し、ジェンダーに基づく差別を撤廃するため、さまざまなセクターの早急な連携が求められる。
▶ジェンダー不平等についてもっと知る
【参照サイト】Global Gender Gap Report 2023(WEF)
【参照サイト】「ジェンダーギャップ・レポート 2023」 停滞するジェンダー平等 – 格差是正まで131年(WEF)
【参照サイト】Benchmarking gender gaps, 2023(WEF)
【参照サイト】「ジェンダーギャップ指数2023」日本は過去最低の125位に後退、G7で最下位(プランインターナショナル)