ロンドンの新たな助け合いの象徴。廃棄食品を入れられる、人々のための公共冷蔵庫「フレディ」

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人々は、日々驚くほど多くの食べ物を無駄にしている。貧しい国では飢えに苦しむ人が多くいる一方で、日本では食料消費全体の約3の1にあたる2,800万トンが毎年捨てられており、他の先進国でも同様の問題を抱えている。食品廃棄物の問題にはさまざまな要因があるが、そのひとつは、需要と供給のバランスがとれていないということだ。

仕入れられ、売れ残った食品の多くは、寿命があり捨てざるを得なくなる。また、たとえ新鮮なものであっても、社内の決まりにより早めの廃棄が義務づけられていることも多い。「銭にならなければ、モノはあげられない。」という資本主義の悲しいモノの考え方だ。

そんな発想がまかり通っている世の中の頭を冷やすような取り組みが英国で行われている。「フレディ」と名付けられたロンドン初の公共冷蔵庫だ。設置されたのは、あまり裕福ではない人々が多く住む一方で、アフリカ系音楽などの文化を発信する、市の南側ブリクストン地域だ。

フレディに入っている野菜や果物、パンなどの食品は、市民や事業者が自由に食べ物を入れ、欲しい人が誰でも持って行ってよいことになっている。設置・運用の費用はクラウドファンディングや寄付によりまかなわれている。

ロンドンでは、スーパーや飲食店が閉店すると、街には大きなゴミ袋が並び、間もなく回収業者がトラックに投げ込んでいく。その袋が捨てられる前までに、ホームレスの人々が中から食べ物を取り出すという風景も見られる。その開いた袋の中を覗き込むと、さきほどまで陳列されていたばかりの新鮮な食べ物が、まだたくさん残っていることが多い。

本当に生活に困窮した人は、“ゴミ化”された食物をあさってでも飢えをしのごうとするだろう。しかし、多くの市民は、人目を気にしてできない。これは、食品を路上にあるゴミ箱に入れるか、冷蔵庫に入れるかだけの違いなのだ。

冷蔵庫に入れることにより、ゴミではなく食べ物ですよ、というメッセージを発信し、市民がためらうことなく手を伸ばすことができる。また、日々の生活に困窮した人々に、わざわざゴミ箱から拾わせるのではなく、正式に食べ物として持ち出してよい場所を作ることは、社会の思いやりではないだろうか。

このようなインフラを整備することで、今まで廃棄していた食材を冷蔵庫に持ち込む業者も出てきている。ドイツや、スペイン、インドなどの国でも同様に公共冷蔵庫の取り組みが行われている。これは、ロンドン内のコミュニティにおける新たな助け合いの象徴だ。

【参照サイト】THE PEOPLE’S FRIDGE
【関連ページ】食品廃棄物とは?数字と事実・原因・解決策

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