“女性を縛る場”だったキッチンから、変革の声を。料理と対話でジェンダー平等を問い直す「Woman In The Kitchen」

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「女性は台所にいるべき」という言葉を聞いて、あなたはどう感じるだろうか。

この言葉は、長い間、女性の役割を家庭に押し込める象徴のように使われてきた。その言葉に込められた性別による期待や制約は、今も多くの人々にとって違和感を覚えるものだろう。そして、この古くからのフレーズを逆手に取った動画が、国際アドボカシー団体・グローバルシチズンから配信された。

いま、世界中でジェンダー平等が叫ばれる中、あえて「キッチン」を舞台に女性のエンパワーメントを語る意義はどこにあるのか。グローバルシチズンの動画シリーズ「Woman In The Kitchen」では、アメリカで女性が家事をすべきと考えられていた1950年代のキッチンを彷彿とさせるキッチンで、現代の格差問題に切り込む。

デザートを作りながら語られるのは、女性が経済的・社会的に過小評価されている分野について。たとえば、アフリカでは多くの女性がビジネスを始めたくても、必要な資本や資金にアクセスできずにいる現状。また、家庭内での無償の介護労働の多くを女性が担っているという事実。さらに、医療現場では女性の従事者数は多いものの、意思決定の場における存在感はまだまだ小さいこと。そして、テクノロジー業界に目を向けると、女性がリーダーシップを発揮する機会が著しく限られているのが実情だ。

 

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動画の中で語られる現状は決して明るい話題ではないものの、ポップなデザインで彩られたキッチンと美味しそうなデザートが作られていく過程の視覚効果もあり、決して押し付けがましくなく、これらの課題について前向きに検討する気持ちにさせるから不思議だ。そしてそれこそがこの動画が意図するところだろう。

かつて女性を家に縛りつける象徴的な場所として用いられていたキッチンが、今はもはや単なる家事労働の場ではなく、生活の中心であり、コミュニケーションのきっかけの場になっている。キッチンから社会変革は起こせるのだと、同キャンペーンは強く訴えかける。

一方、このようなテーマを皮肉として扱ったものの中で過去に物議を醸した例もある。例えば、2021年にはハンバーガーチェーンのバーガーキングが「女性は台所にいるべき」という広告を国際女性デーに発表し、大きな反発を招いた。この広告は、女性シェフの割合が低いことを受けて、女性のキャリア支援を訴える意図だったが、そのメッセージはうまく伝わらず、企業側は謝罪を余儀なくされた。

これはいまだに女性がキッチンにいることに不満を感じている人が少なからずいること、そして女性に対するバイアスがかかっていることの裏付けだろう。日本で共働きの既婚男女に対して行われたアンケートによると、女性の約7割が「家事の7割以上を自分が担っている」と回答し、約半数が家事の分担について満足していない結果だったという(※)。女性とキッチンを巡る議論は、これからますますこれからますます社会全体の議論として大きくなっていくのではないだろうか。

このテーマについて議論する必要がないほどに、誰もが性別にとらわれることなく仕事でも家庭でも役割を担える日は遠い未来ではないと願ってやまない。

一条工務店「夫婦の家事シェアに関するアンケート(2022年9月)」

【参照サイト】GLOBAL CITIZEN
【参照サイト】Burger King sparks uproar with ‘Women belong in the kitchen’ tweet ad on international Women’s Day
【関連記事】「アフリカへ帰れ」黒人系へのヘイト投稿を逆手に取った観光PR

Edited by Megumi

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