古代の技術で、電気なしの涼しさを。ハチの巣にヒントを得たインドの建築技術

2024.07.23

熱波が各地を襲い、世界のエネルギー需要は大幅に増加している。危険な暑さから逃れるためにエアコンの使用を余儀なくされる一方で、エアコンをつけるとエネルギー消費が増え、さらに環境負荷が増大する。このジレンマを打ち破る方策はないのだろうか。

インド・デリーを拠点とする建築事務所CoolAnt(クール・アント)は、テラコッタ(素焼きの陶器)と水を使い、電気や化学薬品に頼らない伝統的な冷房方法とシステムを採用した冷却装置を開発した。これは自然からインスピレーションを得るバイオミミクリーの概念を活用したものだ。

その冷却装置とは、「ハチの巣状の壁」だ。水に浸したテラコッタを使って作られた壁から水が蒸発すると、冷却効果が生まれ、壁が取り付けられた建物を冷やすことができる。チューブやタイルの中の水が蒸発する際に、周囲の空気を冷却し、家や建物の熱を下げるのだ。

Image via CoolAnt

小さな部品からなる特殊な壁が、素材の特性を利用して建物を冷やすというこの取り組みは、標準的な空調システムよりも低コストだ。その技術の背景には、何世紀にもわたって複数の文明で利用されてきた蒸発冷却法がある。

古代エジプト人は水を入れた多孔質の瓶を扇いで涼しい空気を作り出し、ローマ人は家やテントのドアにびしょ濡れの厚手のシート状のものを吊るしていたという。どちらの古代人も、冷たい空気を作り出すために「濡れた素材」に頼っていたのだ。

そうした冷却技術を応用した蜂の巣壁は周囲を涼しくするだけではない。水が蒸発することで、鉢の表面にあるバイオフィルムが強化され、周囲の空気の浄化にも役立つ。さらに、このデザインはプラスチックを一切使用していない。

Image via CoolAnt

CoolAntがこれまで見出した自然冷却法に関する研究は、すべてオープンソースとして提供されており、世界中の建築家やエンジニアが同様の冷却方法を導入できる。金銭的ハードルが低く、エアコンと比べてエネルギー消費も少ない点が強みだ。

これらのシステムは、インドのジャイプールにある官公庁の建物や、一部の個人住宅ですでに使用されている。また、サルダール・ヴァラブバイ・パテル国際空港や商業ビルへの設置も計画・実施されている。CoolAntの作品は、最近ではパブリック・アートとしても評価されており、現在ロンドンの科学博物館などで展示されているという。

アート、自然、テクノロジーをデザインに融合させ、古代人の技術を復活させたこのハチの巣プロジェクト。未来の快適な暮らしに本当に必要なのは、かつて自然から学び、生活の中で培われてきた技術なのかもしれない。

【参照サイト】CoolAnt 
【参照サイト】Engineers discover how to cool buildings without electricity — inspired by beehive architecture
【参照サイト】Inspired by Beehive, Delhi Architect Develops Affordable Terracotta Cooling System
【参照サイト】This company designed walls that can cool a house without any electricity
【参照動画】Ant Studio’s CoolAnt Beehive Cooling Installation
【参照動画】Indian architect looks to nature to cool without chemicals
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Edited by Megumi

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この記事を書いたライター

Ellis

Ellis

Ellis。イギリス在住四半世紀以上。イギリスで最も緑が多い都市に暮らす一児の母。ロンドンの出版社での勤務を経てフリーランスライターとして14年。関心は多様性を認める社会、海洋保護、フードロスへの取り組みとウェルビーング。執筆を通して一人でも多くの人に光が見える社会の在り方を伝えていきたい。好きなものは発酵食品とチリ産ワイン、ピラティス。無類の猫好き。(この人が書いた記事の一覧