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【まとめ】自然界の仕組みから学ぶバイオミミクリーとは?活用事例8選

蜂

Image via Pixabay

バイオミミクリーとは?

気候変動が深刻化する中、世界ではサステナビリティを超えたリジェネレーション(再生)サーキュラーエコノミー(循環経済)が叫ばれている。こうした循環型・再生型の社会構築を進めていく切り口として、改めて「バイオミミクリー」に注目が集まっている。

バイオミミクリー(生物模倣)とは、自然界の仕組みから学んだことを技術開発に活かすことをいう。生物を意味する「Bio」と模倣を意味する「Mimicry」を合体させた言葉。学問用語にとどまらず、近年は実社会でもこの考え方の適用が進んでいる。

たとえば、JR西日本の新幹線のデザイン。新幹線の屋根部分は音を立てずに餌を採るフクロウの羽の構造を、先端部分はしぶきを上げずに高速で水中に突入できるカワセミのクチバシの構造を模倣して設計され、走行時やトンネル突入時の騒音の軽減に成功している。

バイオミミクリーの意義は、単に自然からアイデアを拝借して人間に恩恵をもたらすだけではない。現存する生物のありようを模倣することは、38億年という長い年月をかけて最適化された形態や仕組みを取り入れることを意味し、それは地球環境への負担が少ない持続可能なつくりである可能性が高い。

この記事では、バイオミミクリを利用した世界のアイデア5選をご紹介する。

バイオミミクリーを活用したアイデア5選

01. エネルギー生産を40%アップさせる、ひまわり型ソーラーパネル

エネルギー生産40%アップ。太陽の動きに合わせて開いて傾くひまわり型ソーラーパネル

ひまわりは太陽光を最大限浴びることができるように、太陽の動きに合わせて向きを変える。この習性をソーラーパネルに活かせば、多くの太陽光を取り込み、より多くのクリーンエネルギーを生成できるのではないか。そう考えた元に誕生したのが、Smartflowerだ。Smartflowerは日の出から日没まで、常に太陽に対して90度の角度で傾くよう、太陽の動きに合わせて向きを変える。これによりSmartflowerは、従来のソーラーパネルより40%も多くのエネルギーを生成でき、その電力量は年間4,000~6,200kWhになるという。

  • 国名:オーストラリア
  • 団体(企業)名: Smartflower
02.サーキュラーエコノミーを実現する「ハチの巣」型住宅

組み立ても壊すのも簡単。サーキュラーエコノミーを実現する「ハチの巣」型住宅


HIVEは、「ハチの巣」からインスピレーションを受けたハニカム構造(六角形)の住宅・共有施設である。ミツバチが巣をつくるように綿密に、耐久性を持って作られ、居住者のライフステージにあわせて柔軟に家をカスタマイズできるようになっている。たとえば住宅の他に共有キッチン、静かに仕事をするプライベートルーム、遊び場、プール…… そして純粋に巨大なハチの巣として使うことも可能だ。住民が増えコミュニティが拡大したときでも、建てた土地への影響を最小限に抑えながら、より多くのモジュールをすばやく追加できる。

03.ごみを食べる、ジンベイザメ似の水上ドローン

港のごみを食べる。ジンベイザメ似の水上ドローンWasteShark


世界一大きい魚と呼ばれるジンベイザメは、平たく巨大な口を持っているのが特徴だ。さほど動き回らなくても、その大口でプランクトンや小型の甲殻類を豪快に飲み込んでいく。このジンベイザメの動きを参考にしてできた、水上に浮かぶごみを回収するドローンが「WasteShark」だ。1日に16時間稼働し、最大200リットルのごみを「食べる」ことができる。

04.樹木がつくり出す木陰の涼しさを再現した日除け
木

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都市部に比べるて森の表面温度が低い理由として、日射を受ける木の葉の面が小さいため、大気への熱伝達効率が大きいことや、2次元の小さな木の葉が3次元空間に適当な間隔をあけて配置されているため風の通りがよいことなどが上げられる。

この原理を使用したのが、セキスイハイムサプライ株式会社が開発した「エアリーシェード」である。樹木の葉のような配置を作り、都市の表面温度を下げることで森のような環境を人工的に作った。立体形状のユニットの組み合わせが、夏場の暑い時間に日射しを遮る構造になっていたり、1つ1つの日除けの構造体が小さいため、日よけ自体が熱を持ちにくい性質があり、1枚板による日除けと比べて熱がこもりにくい。現在は公園や学校、老人ホームなどで導入されている。

05.サメの皮膚を模倣した抗力や紫外線によるダメージを軽減した塗料
サメ

Image via unsplash

研究機関であるIFAMによって開発された塗料は、サメの皮膚を模倣している。サメの皮膚は、小歯状突起といわれる小さな鱗のような突起で覆われており、これらはサメの体全体に小さなくぼみを作るように作用する。これらの小さなくぼみが、水の層に乱流を引き起こし、これによりサメが泳いでいるときに、水の層抗力を減らすことができる。

これと同じ原理を当てはめた塗料は、長持ちするだけでなく、特定のナノ粒子が組み込まれているため、強い紫外線や温度変化、および機械的負荷に耐えることが可能。飛行機、船、および潜在的に風力タービンの抗力によるエネルギーの非効率性を解決した。IFAMは、世界中のすべての飛行機がこの塗料を使用すれば、年間448万トンの燃料を節約できると主張している。

  • 国名:ドイツ
  • 団体(作成者)名:IFAM
06.鳥と泊まれるツリーハウス「Biosphere」

快楽的なのにサステナブル?鳥と泊まれるツリーハウス「Biosphere」に学ぶ


‎デンマークの建築スタジオBIGが手掛けたのは、鳥の巣箱で覆われたホテル「Biosphere(生物圏)」だ。ホテルを覆う外側にあるのは全て鳥の巣箱で、その数は350個。スウェーデンの鳥類学者ウルフ・オーマン氏と行政の調査によれば、Biosphereのある村の森でも、巣となる木の穴が林業によって減少していることにより、鳥の数も減ってしまっていた。Biosphereは、そんな鳥たちの個体数減少に歯止めをかけることを目的に設計された、人と鳥が共生する未来を想わせる建築だ。

  • 国名:デンマーク
  • 団体(企業)名:BIG
07.バードストライクを減らす窓

ドイツでは毎年約1億1,500万羽の鳥がガラス板を認識できず、建物の正面に飛んでいるために死亡していると推定している。それにより2017年以降、建物へのバードストライクをチェックする義務を課すだけでなく、バ​​ードストライクのリスクを軽減することが都市および市町村の都市土地利用計画に関する法的で定められている。ドイツ企業であるarconの「ORNILUX®」は、透明ではっきりと見える建築空間とファサードのコンセプトの両方を可能にし、バードストライクを減らすことが証明されている認定ソリューションを提供している。

  • 国名:ドイツ
  • 団体(企業)名:arcon
08.食糧廃棄を防ぐ、液体殺菌剤


毎年、生産された果物と野菜の25%が、真菌による腐敗のために無駄になっている。この損失を防ぐために、さまざまな合成殺菌剤が使用されるが、これらは環境だけでなく人間の健康にも悪影響をもたらす。植物はこれらを防ぐために、自然に揮発性分子を生成して多くの真菌性疾患から身を守り、また環境内の他の植物を刺激しながら防御システムを活性化している。トルコの企業Nanomik Biotechnologyはこれらの化合物をカプセル化して、収穫後だけでなく畑の作物にも適用できる液体殺菌剤を作成した。

大事なのは、人間が自然界にフィットすること

いかがだっただろうか。「バイオミミクリー大学」代表の東嗣了氏によると、いまアメリカ国内では毎年10億羽ほどの鳥がビルのガラスに衝突して死んでいるという。これは、人間主体のデザインが引き起こした悲劇であり、このことから環境負荷に配慮してデザインするだけではなく、人間が地球全体のシステムにどうフィットしていくかを考える必要があるということがいえる。

いま、自然界からヒントを得て、多くの企業がアクションを起こしているが、大事なのは、人間主体のビジネスや反映のために自然の叡智を使うのではなく、私たちが自然界にフィットしていくためにバイオミミクリーで何ができるかを学ぶことだ。

今後、ビジネスでイノベーションを起こす上でも、バイオミミクリーが注目されていくだろう。これからもIDEAS FOR GOODでは循環型・再生型の社会を促進させていくアイデアをお届けする。

【参照サイト】 Ask Nature
【参照サイト】 Biomimicry 3.8
【参照サイト】 バイオミミクリー大学




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