地球幸福度指数(HPI)とは?
地球幸福指数(Happy Planet Index。以下、HPI)は、ベルリンに拠点を置くシンクタンク・Hot or Cool Instituteが3〜4年ごとに発表する「持続可能な幸福」を測る指標のこと。これは、「平均寿命」と自己申告による「ウェルビーイング」を「エコロジカル・フットプリント」で割ることで算出される。これにより、人間が本来あるべき姿で、自然と共存した生活が営まれている度合いが地域ごとに導き出される。

Image via Happy Planet Index
わかりやすく言えば、「環境に配慮しつつも、人々が長く幸せに暮らすにはどうしたらよいか」という視点に立つのがHPIだ。国内総生産(GDP)に替わる次世代の指標として注目を集めている。
HPIは政策立案者に対して以下の4つの重要なポイントを提供している。
- GDPを超える視点:HPIなどの代替指標をGDPと併用し、国の進展をより包括的に評価する必要がある。
- 人々中心の優先事項:市民の参加を通じてHPIのような新指標を用いた新たな国家成功ビジョンを定義し、公正で効果的な政策を推進する。
- 共有繁栄のモデルを目指す:プラネタリーバウンダリーの範囲内で良好な生活を送れている国は今のところないが、それに近づいている国は存在し、これは達成可能であることを示している。
- 過剰消費と不平等への対処:経済的不平等は非効率であり、持続可能な幸福の進展を妨げる。裕福層のライフスタイルは環境に過度な負荷を与え、幸福度への貢献はわずかである。
HPIは政策立案者と市民にとって貴重なツールであり、プラネタリーバウンダリー内での幸福に焦点を当てることで、健全な地球で全員が繁栄できる未来への道筋を提供する。
地球幸福度指数(HPI)世界一は?
2024年のHappy Planet Index(HPI)の結果は、基本的なニーズが満たされた後の高い消費レベルが幸福度に直結しないことを示している。最高スコアを記録したのはバヌアツ、スウェーデン、エルサルバドル、コスタリカ、ニカラグアで、西ヨーロッパがラテンアメリカを除外して最高スコアの地域となった。
日本は、今回のHPI全体スコアは147カ国中49位。平均寿命は84.8歳で147カ国中2位。ウェルビーイングスコアは10点満点中6.1点と悪くない。一方で1人当たりのCO2排出量が11.66トンと多く、147カ国中119位という結果だった。それでも、2019年から12位上昇している。
2024年の最新のHPIレポートでは、パラダイムシフトの必要性を強調している。現在、持続可能な幸福(高い平均寿命、良好な生活満足度、エコロジカル・フットプリント内の排出量)を完全に達成している国はないが、バヌアツやスウェーデンのような発展段階にある国々が、高い社会・生態効率を達成できることを示している。
最高得点を記録した南太平洋の小さな島国であるバヌアツ。同国の平均寿命は70.4歳で、所得レベルを考慮すれば高い数値にあるが、世界的には平均的である。しかし、高い幸福度スコアと、世界の公正なレベルを大幅に下回るカーボンフットプリントが全体スコアを押し上げている。一方、スウェーデンは最も効率的な富裕経済国だ。カーボンフットプリントは世界の公正なレベルを超えているが、その資源消費で他の富裕国よりも高い平均寿命と幸福度を実現している。
近年のHPIの傾向
新型コロナのパンデミックにより、二酸化炭素排出量が減少したにもかかわらず、平均寿命と幸福度が低下したため、世界中でHPIスコアが下がった。しかし、サハラ以南のアフリカでは、カーボンフットプリントの大幅な増加なく平均寿命が延び、西ヨーロッパではカーボンフットプリントが減少。これらの傾向が示すのは、環境負荷を減らしつつ生活の質を向上させることができるということだ。しかし、気候変動を本格的に食い止めるためには、これをさらに加速させる必要がある。
一方、国全体の平均HPIスコアは有用だが、所得格差による不平等なリスクや責任が覆い隠されている可能性がある。HPIの分析では、高所得者層のカーボンフットプリントが非常に大きく、幸福度の向上が僅かであるため、そうした人々のスコアが低所得者層よりも低いことがわかっている。これは、経済的不平等が効率性を損なうことを示している。メキシコやコスタリカでは、高所得者層が公平な消費限度内で生活すれば、持続可能な幸福を実現できる可能性があるという結果が出ている。
なぜ地球幸福度指数(HPI)が注目されるのか?
私たちはこれまで、「経済発展が人々に豊かで幸福な暮らしをもたらす」と信じてきており、現在も人々の幸福度を保つために経済成長の施策が取られることもある。しかし経済成長が進んでいるにもかかわらず、貧富の差、不安定な経済成長、気候変動の脅威などにさらされている。
研究によると、ほとんどの適度に発展した国では、富や所有物などの物質的な状況が幸福度を決定する上で果たす役割は小さいとされている。心理学者の中にはそれが10%に過ぎないと主張する人さえもいるという。もちろん、健康的な食事、質の高い医療、レジャー活動などの消費が増えることで一定の幸福度は向上するが、ある程度を超えると、追加の収入や消費が幸福度のさらなる向上には繋がらない。これは経済学で「収穫逓減」と呼ばれる現象である。
このように、どんなに経済が成長しても、環境汚染や気候変動があっては安心な暮らしが脅かされ、不安定な経済成長や貧富の差は人々の幸福を妨げる。HPIは、経済成長にだけ重きを置いた国の在り方に疑問を投げかけているのだ。
【参照サイト】Happy Planet Index
【参照サイト】A NEW MEASURE OF PROGRESS: THE HAPPY PLANET INDEX
【参照サイト】This country regrew its lost forest. Can the world learn from it?
【参照サイト】esencial COSTA RICA
【参照サイト】GDP Ranking









