「地球の幸福度ランキング2024」が示す、経済発展ではない豊かさ

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安心・安全でよりよい生活がしたい。幸せに生きたい。誰しもが共通に持っている願い。そんな人々の願いをかなえるのが政治や統治の役割だ。

そこで、政治リーダーたちはこう言うかもしれない。「経済をよくします」と。

選挙で唱えられることの多くは、「経済成長」の重要性である。これは日本だけでなく世界でも同様だ。たとえば、2022年に英国の元首相Liz Truss(リズ・トラス)氏が就任時、優先課題に次の3つを掲げたのは記憶に新しい。

「成長、成長、成長」

政治家にとっては経済成長、すなわちGDPの拡大は至上命題のようなものかもしれない。一方で、多くの人にとって人生の目的は、GDPを拡大することなのだろうか。それはいつの間にか、何か重要なものとすり替わってはいないだろうか。

そんな疑問に答えるのが、ベルリンに拠点を置くシンクタンク・Hot or Cool Instituteが発表した「地球幸福指数(Happy Planet Index。以下、HPI)」と呼ばれる指標だ。HPIとは、「平均寿命」と自己申告による「ウェルビーイング」を「エコロジカル・フットプリント」で割ることで、本当に重要なもの、つまり人間が本来あるべき姿で、自然と共存した生活が営まれている度合いが地域ごとに導き出されるものだ。

2024年5月2日に発表された最新結果で上位を占めたのは、南太平洋のバヌアツ共和国、北欧のスウェーデン、中米のエルサルバドル、コスタリカ、ニカラグア。それらにデンマーク、スペイン、パナマ、フランス、チリが続く。

HPIの要素すべてで「良い」スコアを達成した国はないが、1位のバヌアツ共和国は平均寿命70.4歳で、ウェルビーイングスコアは10点満点中7.1点。1人当たりのCO2排出量は3.17トンにとどまる。

日本はどうだろうか。日本は、今回のHPI全体スコアは147カ国中49位。平均寿命は84.8歳で147カ国中2位。ウェルビーイングスコアは10点満点中6.1点と悪くない。一方で1人当たりのCO2排出量が11.66トンと多く、147カ国中119位という結果だった。それでも、2019年から12位上昇している。

また、GDP世界1位のアメリカは102位。GDP世界2位の中国は51位、ドイツは35位だった。この傾向からもわかるように、GDPとHPIに相関関係はない。GDP上位10か国中6か国はHPIスコアが世界平均以下だった。つまり基本的なニーズが満たされた後は、消費レベルの高さがウェルビーイングの高さに必ずしもつながらないことが明らかになった。Hot or Cool Instituteのエグゼクティブ・ディレクターであるルイス・アケンジ博士はプレスリリースにて次のように述べている。

「私たちは、無駄な消費と不平等に焦点を当てる必要があります。これらは地球の危機を悪化させています。これからは主に、富を既に裕福な人々に移転するだけの提案された技術的および経済的な気候解決策の正当性を疑問視しなければなりません」

過剰消費は地球に害を与えるだけでなく、現在のところそれを技術で解決できている国はほとんどなく、人々の幸福にもつながっていない。GDPでもなければ、自立・自由を基準とした人々の幸福度でもない、「地球の幸福度指数」。これは私たちが人生において本当に望んでいることは何か気づかせ、私たちの政治と生き方の双方を考え直させる指標なのだ。

【参照サイト】Happy Planet Index プレスリリース
【参照サイト】Hot or Cool Institute公式ホームページ
【参照文献】Happy Planet Index2024
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Edited by Erika Tomiyama

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