南米コスタリカの「車の走らない街」に学ぶ、徒歩と幸福度のカンケイ

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「だれも車を使わない街」

そんな場所が本当に存在する。しかもそこでの生活は、環境への負担が軽減されるだけでなく、人々のつながりを強くしてウェルビーイングを高めることもできるらしい。一体、どんな街なのだろうか?

南米コスタリカにある海沿いの街、Las Catalinas(ラス・カタリナス)には、車が存在しない。2006年に起業家のチャールズ・ブリュワー氏がこの土地を購入し、徒歩での移動を前提とした街をつくったのだ。歩いて生活することが中心になると、住民同士の挨拶や会話が生まれやすく、そのつながりからコミュニティへの所属意識が高まりやすい。広場などの公共の場は、人々が交流する場となっているようだ。

The New York Timesの取材によると、ラス・カタリナスには車がないため子どもたちが走り回っても安全で、質の高い教育とヘルスケアも確保されており、こうした環境が住民のウェルビーイング向上に寄与するという。また、人間の生活範囲と自然を保護するエリアを分けながらも、ハイキングやサイクリングを通して自然に触れることができ、人と自然のバランスが保たれている。

ラス・カタリナスの街の様子

Image via Courtesy of Las Catalinas

ラス・カタリナスで自転車に乗る様子

Image via Courtesy of Las Catalinas

ブリュワー氏は、ニューアーバニズムに基づいて街をデザインしたという。ニューアーバニズムとは、主に北米の自動車中心の郊外都市開発への批判を背景とする考え方だ。自然環境への影響が配慮され、住宅や公共の設備、商業施設など生活に必要な機能が近くにあり、徒歩で暮らしやすい街づくりを目指している。徒歩と自転車の利用を中心とする点は、欧州で事例が多く見られるコンパクトシティとも似ている。ただしニューアーバニズムでは場づくり(プレイスメイキング)が重視され、広場や歩道など公共の場は複数の機能を持ち、人々の交流が生まれやすい大きさや形にデザインされる。

コスタリカは、地球幸福度指数(HPI)が高いことでも有名な国だ。HPIとは、暮らしの満足度や資源利用の効率などから幸せの持続可能性をはかる指標のこと。ラス・カタリナスのように自然を再生しながら人々の心の豊かさを高める街づくりは、幸福度も高めることができるだろう。まさにコスタリカにとってピッタリな街づくりなのかもしれない。

そもそも車を使わない生活を前提とした街をつくることによって、CO2排出をおさえるだけでなく、私たち人間の心にもポジティブな変化が見られるようだ。環境問題への解決策が人々のウェルビーイングを損なってしまうと、その生活は長続きしない。自然環境を守りながら私たちの暮らしの心地よさも高めることができれば、より多くの人が環境負荷の少ない生活を無理なく続けられるのではないだろうか。

【参照サイト】Las Catalinas
【参照サイト】A New Community Rises in Costa Rica, but Don’t Bring Your Car
【参照サイト】Congress for the New Urbanism
【関連記事】パリ市長、職場も買い物にも「15分でいける街」計画を発表

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