アート・アクティビズム（アーティビズム）とは・意味

アート・アクティビズムとは、アートを使って社会問題や環境問題の解決のために働きかける活動・キャンペーンのこと。「アーティビズム（Artivism）」といわれることもある。また、アート・アクティビズムの活動家を「アーティビスト」と呼ぶ。

アートは古くから社会変化を促すための有効な方法として世界的に利用されてきたが、近年インターネットやSNSの普及したことで、アート・アクティビズムはより身近なものとなっている。

取り上げる社会課題の一例としては、ジェンダー、人種差別、移民、人権問題、地球温暖化、反戦などが挙げられる。社会に目指す変化をもたらすため、写真、映画、音楽、絵画、ストリートアート、広告、ポエム、ポスターアート、演劇など、あらゆる芸術表現を使ってメッセージを投げかける。

「社会の変革」を目的として行動を起こすアクティビズムは、社会・法律・政治などの専門知識を必要とすることから難しく捉えられ、受け入れられにくい。

また時にデモや抗議活動などで暴力的な手段が取られることもあり、アクティビズムに対して好意的な印象を持たない人もいる。

それに対してアートは多くの人にとって身近で親しみやすく、非暴力的・平和的でありながら、人々の注目を集めることができる。また、社会問題に関心が低い層にも受け入れられやすい。

このため社会変化を生み出したい活動家にとってアートは、より多くの人に働きかけ、社会に疑問を投げかけるためのアクセスポイントとなる。

またアートが持つ人々の心を揺さぶる力は、社会変化を促すエネルギー（燃料）にもなりうる。アートを介すことで、社会問題解決のための新たな視点が生まれる可能性もある。

アート・アクティビズムは取り上げる社会課題、そして作品ごとの表現方法によって多種多様である。まず反戦絵画として有名なのは、1937年にパブロ・ピカソが描いた『ゲルニカ』だ。これはスペイン市民戦争で起こった、ゲルニカ地方への無差別爆撃への抗議を示す作品である。

また1960年代にアメリカで起こったメキシコ系米国人による公民権運動では、チカーノ・アートと呼ばれる絵画や壁画が描かれた。「チカーノ」とはメキシコ系米国人ギャングを表す言葉で、チカーノ・アートはアメリカに移民したメキシコ人たちが抑圧や差別に対する抗議をアートで示したものである。

2000年代以降のアート・アクティビズムでは、下記アーティビストの作品がよく知られている。

中国の現代美術家・建築家であるアイ・ウェイウェイは自由や民主主義を求め、写真や映像、インスタレーション、ドキュメンタリーフィルム、ブログなどを通して中国共産党の政治体制に抗議している。

2008年に起きた四川大地震で、多くの児童・生徒が粗悪に建築された校舎の下敷きになり死亡した事件では、被害の実態を明らかにしない政府に抗議し、自ら調査を行い犠牲者リストを作成した。

イギリスを拠点とする素性不明のストリート・アーティスト、バンクシーは多くの作品を通して反戦、難民、人種問題をはじめとする社会・政治批判や反資本主義のメッセージを表している。

バンクシーは世界各地のストリートや壁面など、誰もが閲覧可能な公共の場所に作品を描くことで有名である。

フランスのストリート・アーティストJRは、世界各地の紛争・貧困地域などで暮らす人々を撮影し、建物の屋根やストリートの壁に引き伸ばしたポートレートを貼る手法で貧困、差別、弾圧といった社会問題に対するメッセージを投げかけている。

2007年にはイスラエルの街で同業種のイスラエル人とパレスチナ人の写真を並べることで、和解を促すメッセージを込めた「Face 2 Face」というプロジェクトを行った。

アート・アクティビズムは芸術家や活動家に限らず、あらゆる人々が社会にアプローチできる手段のひとつだ。ストリートアートに代表されるように、文化・芸術的クリエイティビティは貧困層、有色人種、移民、若者など社会システムから取り残された層が抱える葛藤をエネルギーに生まれることも多い。

アートを通して声なき声を拾い、分かりやすい形で当事者の視点や問題の本質を表現することは、あらゆる層が社会の共通課題に対し当事者意識を持つきっかけにもなる。

しかし同時に、アートの文化・伝統的な価値や表現の自由を侵すものであってはならない。意見や主張を押し通すためではなく、芸術を楽しむ自由を尊重しながら、社会のあるべき姿や変革のための新しい価値観を柔軟に表現していくことが重要だろう。

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