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リニアエコノミーとは・意味

ゴミ捨ての標識。Close up of a recycle garbage bin logo at Pershing Square in Los Angeles, California.

リニアエコノミーとは?

「リニアエコノミー(直線型経済)」とは、資源を採掘し、モノを作り、捨てるという一方通行型の経済の仕組み。現在の大量生産・大量消費・大量廃棄のシステムのことである。

リニアエコノミーは、‘Take, Make, Waste Economy’とも呼ばれる。つまり、「Take(取り)、Make(作り)、Waste(無駄にする)経済」であり、気候変動、生物多様性の損失、汚染を引き起こしている主因となっている。

この概念は、資源を循環させることで廃棄物をゼロにする仕組みである「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の議論において、従来・現在の社会のメカニズムとして登場することが多い。

リニアエコノミーの考え方に基づく社会では、製品の寿命が短ければ短いほど、生産者に撮っては利益になる。言い換えれば、消費者が製品を購入後すぐに捨て、すぐに新しい商品を購入するほど、より多くの利益が発生するということである。

このような経済システムを具体化したものが「計画的陳腐化 (Built-in Obsolescence)」である。計画的陳腐化とは、製品の寿命が有限であるように意図的に計画・設計し、一定期間後に陳腐化または機能しなくなるようにする手法である。計画的陳腐化は、顧客に再購入を誘導するために用いられることが多い(※1)

リニアエコノミーの例

様々な業界で利用される「トレンド」という概念は、消費者の購買行動を短いスパンで維持するための恣意的なマーケティングトリックであることが多い。

ファストファッション

「今シーズンのトレンドカラーは…….」このようなファッショントレンドは誰が決めているのか、考えたことはあるだろうか。現代社会では、多くの業種が低価格(しばしば低品質)の衣料品を短いサイクルで大量生産し、販売している。

短いスパンで移り変わる「流行」という枠から外れた衣料品やコスメは「時代遅れ」であると消費者に感じさせることで、新しい商品への購買意欲を高めることに成功している。

スマートフォン

次々と新しいモデルが登場するスマートフォンも、計画的陳腐化の好例だ。手持ちの機種がまだ使えるのにもかかわらず、最新機種が登場するたびに購入する人も多いだろう。

機能的陳腐化が意図的に行われることも多くある。例えば、アップルが旧モデルの実用性を低下させ、最新モデルの購入を促すために、iPhoneの旧モデルの動作速度を意図的に遅くしていたことが明るみに出た。この問題は、アメリカ、フランス、チリなど世界各国で集団訴訟に発展したほどだ。

他にも、自動車、コンピューター、ソフトウェアなどは、陳腐化が組み込まれた製品の好例である(※2)

サーキュラーエコノミー

オランダ政府 From a linear to a circular economyより引用

サーキュラーエコノミーはリニアエコノミーに代わる、より倫理的で環境に配慮したモデルとして注目されている。

サーキュラーエコノミーとは、生産と消費が閉じたループのように循環する経済システムのことである。製品の共有、再利用、リユース、修理、再生、リサイクルなどに基づき、製品や原材料は何度も再利用され、「廃棄物」は新たな原材料となる。

日本で広く浸透している3R(リデュース・リユース・リサイクル)や、リユースエコノミーは、人間活動において廃棄物が出ることを前提としている。これらの取り組みが廃棄物をできるだけ減らすことに重点を置いているのに対し、サーキュラーエコノミーはそもそも廃棄物を前提としていない点が異なる。その特徴は、製品やサービスを設計段階から廃棄物を出さないようにデザインすること、通常なら廃棄物として処理されるものを新たな原材料として利用することである。

サーキュラーエコノミーが機能するためには、消費者行動の変化が必要である。マーケティングの策略に踊らされた受動的な購買ではなく意識的な購買行動がポイントだ。つまり、計画的陳腐化に気付いたり、必要であるから買うという意識を持つことが有益である。

また、飽きたらすぐに捨てるというマインドではなく、今あるモノをできるだけ長く大切に使い、捨てずに寄付したり、別のものに再利用しようという考え方を持つことも重要だ。そして、「買い物は投票だ」とよく言われるように、できるだけ環境に配慮した商品を購入することで、その生産者をサポートすることができる。


※1 Doyle, Charles. A Dictionary of Marketing. Oxford University Press, 2011.
※2 ibid.

【参照サイト】‘From a linear to a circular economy’. オランダ政府
【参照サイト】Closing the loop: New circular economy package, European Parliament.
【参照サイト】Circular economy: definition, importance and benefits, European Parliament.
【参照サイト】Sarhan, Adam. 「アップル集団訴訟、『計画的陳腐化』の何が問題だったのか?」 Forbes Japan.
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