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ポピュリズム(Populism)とは・意味

Crowd of people walking street

ポピュリズム(Populism)とは?

ポピュリズムとは、一般市民の意見を代弁し、彼らの利益を優先していると主張する政治活動や思想を指す。支配勢力に対して大衆運動を動員するために用いられる政治スタイルともいわれる。また同様の思想を持つとされる人物や集団を「ポピュリスト」と呼ぶ。

ポピュリズムの定義は、一つの言葉だけで表すのは難しい。時代によってその現れ方が異なるからである。現在、最もよく知られているのはアメリカの右派の政党、指導者、運動であるが、左派の場合もある。

ポピュリズムという言葉は社会改革運動や政治運動そのものを指す場合もある。『精選版 日本国語大辞典』(小学館、2006年)には以下のように記載されている。

[一] (Populism) 一九世紀末にアメリカ合衆国に起こった、農民を中心とした社会改革運動。第三の政党・人民党を結成し、政治の民主化や景気対策などを要求した。
[二] (populism)
① 一九三〇年代以降に中南米諸国の都市化を反映して発展した、労働者を支持基盤とする民族主義的な政治運動。アルゼンチンのペロン、ブラジルのバルガスなどが推進した政治をいう。ポプリスモ。
② 俗に、大衆に迎合するような政治姿勢をいう。

政治学者Cas Muddeは著書『Populism: A Very Short Introduction』において、政治学におけるポピュリズムとは、社会が”the pure people” (純粋な民衆)と”the corrupt elite”(腐敗したエリート)という互いに対立する2つのグループに分かれているという考え方だと述べている。

ポピュリズムは政治改革を鼓舞する一方で、怒れる市民の敵意を「straw man(ストローマン、議論に勝つため、または議論を作り出すために創作された議論、主張、または相手)」に向けるために利用されることもある。

ポピュリズム運動の各国の事例

ポピュリズムは、大きな変化の局面で出現することが多い。

アメリカでは繰り返し登場する政治テーマである。アメリカ史における代表的なポピュリズム運動には、1849年のノウ・ナッシングス、1868年〜88年ごろのグリーンバック運動、1891年に設立された人民党などが挙げられる。

ノウ・ナッシングスはアメリカにおける初期のポピュリスト政党のひとつだ。外国人排斥を掲げるノウ・ナッシングスは、白人キリスト教至上主義の信念を利用して、少数民族に対して嫌がらせを行ったり、移民に対する政治的プロパガンダを流したりした。

グリーンバック運動は、インフレの持続を願う債務者、主に農業に携わる人々が紙幣の流通量を維持または増加させるために行った運動である。

人民党は、中西部・南部の農民が主体となって結成した1890年代にアメリカで活躍した第3政党で、交通・通信機関の国有化、労働時間の短縮、銀貨の自由鋳造によるインフレ政策を主張した(出典元:『世界史事典三訂版』旺文社、2000年)。

ドイツでは、2015年に中東や北アフリカでの紛争や内戦などを逃れた多くの人々がやってきたことを受けて、欧州連合からの離脱と移民流入規制を掲げる政党「Alternative für Deutschland(AfD、ドイツのための選択肢)」やポピュリズム運動が台頭したことが良い例である。

イギリスでは、2016年に「Brexit(ブレグジット、イギリスのEU離脱)」について国民投票が行われたが、これもポピュリズムの事例といえる。The Civil Liberties Union for Europe( 欧州自由人権協会)、通称Libertiesはウェブサイトで、EU離脱を目指すイギリス独立党は移民や”Brussels” (the “establishment”, i.e. the leading elite)に対する国民の恐怖と感情を利用することに成功したと書いている。

“Brussels”はEU本部の所在地であるベルギー王国の首都を表す。”establishment”(エスタブリッシュメント)とは社会的に確立した制度や体制、または、それを代表する支配階級を指す。

直近では、2022年9月、イタリアの上下院の総選挙で、野党の右翼ポピュリズム政党「Fratelli d’Italia(FDI、イタリアの同胞)」が第1党に躍進し、日本経済新聞は記事にて「ポピュリズム(大衆迎合主義)色の濃い右派政権が誕生する見通しとなった」と書いている。

批判的な文脈で使われる言葉として

ポピュリズムは、排外主義(他の集団・民族・国家に対して排斥的、敵対的、攻撃的な行動や政策などを指す)と結びつきやすく、対立する勢力に攻撃的な姿勢をとることが特徴として挙げられる。また第2次世界大戦前に台頭したファシズム(広義では、全世界の強権的、独裁的な思想および政治形態)がポピュリズムの一種と位置づけられることがある。

歴史総合エンタテイメント専門チャンネル「The History Channel」はウェブサイトで「ポピュリストは一般大衆の代弁者として、『我々対彼ら』のスタンスで発言する。その指導者たちは、怒りをあおるような巧みな表現を用い、陰謀論を展開し、専門家への不審を押し付け、ナショナリズム(国家主義)を推進し、部外者を悪者扱いしてきた」と強い言葉で表現している。

第45代アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプ氏や、イギリスの第21代労働党党首ジェレミー・コービン氏、フィリピンの第16代大統領ロドリゴ・ドゥテルテ氏は、ポピュリストだと言われることが多い。ジェレミー・コービン氏は、党のスローガン「少数ではなく多数のために」をめぐってポピュリストだと非難された。

まとめ:ポピュリストに出会ったら?

近年はグローバル化の進展による格差の拡大や移民・難民の増加がポピュリズムを掲げる政治家の増加につながっているとされる。移民反対などを訴える極右のほか、バラマキ型の政策を掲げる左派のポピュリズムも勢いを増している。

排外主義的な、または極端に攻撃的なポピュリズムやポピュリストにはどう対処すべきなのか?

Liberties(正式名称The Civil Liberties Union for Europe、 欧州自由人権協会)はウェブサイトで、「『唯一の解決策』は存在しない」と書きながらも、過激なポピュリズムやポピュリストの力を弱めるための戦略はいくつもあると紹介している。

Libertiesはまず、ポピュリズム政党やポピュリストを無視しないことが重要である、と述べている。ポピュリズム政党やポピュリストを無視すると、彼らは無視されることを利用して被害者の役割を担い、エリートの外側にいる自分達の立場をさらに強固なものにしてしまう。むしろポピュリストに本質的な議論を求めるべきだとしている。そうすれば、彼らが問題点について多くを語るが、自ら適切な解決策を提示しないことを示すことができる。

そして政府がどのように行動し、なぜ特定の決定がなされるのかを、市民が見て理解する機会が与えられるよう、透明性を高めることも解決策になりえること、そして最後に、有権者と選任者との対話が不可欠であることを示している。

『The Global Rise of Populism』の著者である政治学者Benjamin Moffitt(ベンジャミン・モフィット)は、真のポピュリストは、統一された民意を代弁すると主張する。

ポピュリズム、ポピュリストと「揶揄」される政党や人々は、怒りをあおるような巧みな表現を用いて民衆を統率するため、ポピュリズムそのものが単に過激なものとして捉えられがちだが、原点に立ち返ってみると、政治の民主化や景気政策など、民衆の利益や意見を推進する活動や思想である。

ポピュリズムは何も新しいものではない。ポピュリズムは長い間、民主政治とともにあり、その活動や成功は山と谷を経験してきた。現在はポピュリズムの全盛期を迎えているともいえ、これは政治全般のあり方に影響を及ぼす。ポピュリズムの意味を重々理解し、そのうえで信じないことが大切だと言える。

【参照サイト】Populism definition and meaning | Collins English Dictionary
【参照サイト】What is populism, and what does the term actually mean? – BBC News
【参照サイト】What is populism: definition, characteristics, examples | liberties.eu
【参照サイト】What actually is populism? And why does it have a bad reputation?
【参照サイト】What Is a Populist? – The Atlantic
【参照サイト】Populism in the United States: Timeline – HISTORY
【参照サイト】Greenback movement | United States history | Britannica
【参照サイト】ポピュリズム – 経済ナレッジバンク

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