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象牙取引

象牙取引のための密猟

象牙取引問題とは?(What is Ivory trade)

象牙取引問題とは、野生の象の牙を抜いて市場に流すことで起こる問題のこと。海外で取引すると高値で売れるために、アフリカ諸国では密猟が起こり、アフリカゾウはこの100年で3%まで減るなど、絶滅の危機に瀕しています。

現在日本には、世界最大級の象牙マーケットがあります。日本では象牙の80%がはんことして利用されており、約8,000のはんこ屋が象牙を「最高級の素材」として取り扱っています。なぜ最高級かというと、象牙の材質がなめらかで朱肉が馴染みやすいから。そして日本で出回っている象牙は、1989年のワシントン条約前にすでに日本に輸入されていた象牙と、1999年と2009年に限定的に輸入されたもののみなので、希少価値も高いからです。

象牙取引問題に関する数字と事実(Facts & Figures)

世界の象牙取引の現状に関する数字と事実をまとめています。象牙取引の背景がわかりやすいように、時系列順で並べました。

世界

  • 1977年 アフリカには約130万頭のアフリカゾウが生息していた
  • 1979年~1989年 象牙取引の需要の高まりから、アフリカ象の数が半減(pan African census)
  • 1989年 ワシントン条約「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)」にて象牙の国際的な取引は全面的に禁止
  • 1990年代 複数の国家(日本含む)が、厳正な管理のもとでの象牙取引を始めるために世界に働きかけてきた(WILDAID Japan)
  • この時点で象牙取引に深く関与していた国は、ケニア、タンザニア、ウガンダ、中国、日本、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム(CITES)
  • 2000年初期 密猟ではなく、管理された象牙取引ならOKというムードが世界に広がる
  • 2006年 密猟が再び増え始める
  • 2010年~2012年 2万頭のアフリカゾウが密猟される。ゾウの数はさらに10%減
  • 2013年 過去2~3年間の密猟が発覚。世界の象牙取引に対する目が再び厳しくなる
  • 2015年 オバマ元大統領が率いるアメリカと、中国が象牙取引禁止に向けて合意
  • 2016年 アメリカ大陸とアフリカ諸国32カ国の連合で、日本に市場閉鎖を呼びかける
  • 2017年12月31日 中国で象牙の販売が禁止
  • 世界では350,000頭のゾウが残っており、毎年10,000〜15,000頭が密猟されている(2019/Guardian)

日本

  • 1960年代 日本が世界の象牙取引の火付け役となる。(トラ・ゾウ保護基金)
  • 1989年 ワシントン条約によって国際的な取引は全面的に禁止されたが、日本を含むいくつかの国が象牙取引をはじめるために世界に働きかける(WILDAID Japan)
  • 1999年 ワシントン条約の認可を得て、象牙を限定輸入
  • 2009年 ワシントン条約の認可を得て、2回目の象牙輸入
  • 2011~2016年 日本から密輸出が発覚、138件押収事例。そのうち113件は中国への輸出で、106件は中国政府が押収。日本で止められたのは7件のみ。
  • 2017月12月31日 中国で象牙の販売を禁止したことで、日本が世界最大級の象牙マーケットとなる

大きなニュースといえば、1989年のワシントン条約により、象牙の国際取引が全面的に禁止されたことです。国際的な取引はできなくても、象牙取引を厳正に管理している国・地域だけを対象に、限定的な取引が許されるようになりました。日本では1999年と2009年に、個体数が多く減少傾向が見られない種の象牙を輸入しています。

しかしその後、日本でも密輸出が明らかになりました。大阪港で2.4トン、未加工の象牙と印材(はんこ)です。それ以降は、税関から密輸入・輸出が発表されていないので、それを根拠として今も日本は「密猟には関与していない。市場も閉鎖しない」という姿勢を示しています。ワシントン条約の報告書(2019年8月)では、「日本の取引への評価は、世界的な平均に届かない粗末な管理」と記されています。

象牙はもともと、中国をはじめとした東アジアを中心に需要がありました。工芸品や印鑑などに使われているのです。しかし2018年、象牙の最大の輸入国であった中国が販売を禁止したので、国内でいまだに象牙製品が販売される日本は、世界最大級の象牙マーケットとなりました。

アフリカの象牙取引・密猟の現状とは?

アフリカでの象牙取引や密猟の現状について、新聞記者・ルポライターであり、『牙  アフリカゾウの「密猟組織」を追って』の著者の三浦英之氏は、東アフリカでの体験をふまえてこう話しています。

ケニアのアフリカゾウたちは、えぐりとられるようにして牙を抜き取られていました。他の種もどんどん減っていっている。密猟の取材は、相手(密猟者)に狙われてしまう可能性あるので危ない。

現地のガリッサ大学が、テロ集団アルシャバブに襲われることもありました。襲撃を生き延びた学生から「日本人は象牙を買うのか?アルシャバブの資金源の40%は象牙取引だ。なぜ象の牙にダイヤモンドのような値打ちがつくのだ?」と言われました。

日本人が何気なく買っている象牙のハンコですが、需要があるという意味では、これらのテロ組織の活動をサポートしてしまうことになる。少なくとも現地の学生たちはそう主張しています。

2019年8月8日 WILDAID×アフリカゾウの涙 キャンペーン発表会より

日本で象牙取引がなくならない理由(Causes)

日本では、他国から象牙を輸入することはないものの、国内での象牙取引が合法です。国際的に禁止されて批判も受けているのに、なぜなくならないのか。その理由としては、下記が挙げられます。

  1. 象牙取引で利益を得る業界がある
  2. 象牙業界と政府機関のつながり
  3. 違法取引が記録に残っていないため否認している
  4. はんこ屋は積極的に「象牙を出さない」という行動をとりにくい
  5. 人々がはんこと象牙問題の関係性を知らないため抗議運動が起こりにくい

日本において象牙取引がなくならないのには、歴史的な経過と日本の官僚機構という二つの問題があります。

認定NPO法人「トラ・ゾウ保護基金」事務局長の坂元雅行氏によると、象牙取引において一番力を持っているのは、ハンコ屋ではなく象牙製造業者だといいます。以下、彼の講話です。

象牙製造業者は、登録された400~500の未加工象牙の一部をストックとして持っており、30年以上前から通産省、経産省とパイプを持っています。

1989年にワシントン条約で象牙の国際取引禁止の提案があったとき、日本の象牙業界は経産省に「この決定に反対してくれ」と声をあげました。しかし当時、日本は象牙取引の火付け役だったこともあり、世界から悪い意味で注目されていました。外務省は国際関係への悪影響から反対ではなく「投票を棄権」することを発表したんです。

しかし取引はすぐ再開できるよう努力すると象牙業界に約束。そして、補助金をつけて業界を支援してました。それが現在でも続いています。そこの政策転換ができていません。ただ、国際世論や国際的なパートナーとの関係を考えて行動していこうとしています。

はんこ屋さんたちの中には、象牙を使わないところもあります。しかし業界のプレッシャーがあるので「うちは象牙を使いません!」という積極的な姿勢は取りづらいかと。

2019年8月8日 WILDAID×アフリカゾウの涙 キャンペーン発表会より

象牙取引問題はなぜ問題なのか?(Impacts)

象牙取引はなぜ問題なのでしょうか。主な理由としては下記が挙げられます。

  1. アフリカゾウ絶滅による生物多様性の損失
  2. なくならない需要による密猟・違法取引
  3. 象牙に関する国際関係の悪化

一番の問題は、「野生動物の密猟」です。管理された象牙取引については、アフリカの一部地域ではアフリカゾウが「害獣」となっている現状も考慮しなければなりません。象は個体数が減っている保護動物でありながら、同時に(生息地の不足から)現地の農作物を荒らす存在ともなっているのです。ただし、密猟は何をもってしても違反です。

象牙の密猟

象牙取引問題を防ぐためにできること(What We Can Do)

象牙取引を食い止めるために、私たちができること。それは何より、象牙のはんこを選ばないことです。

いま日本国内で流通している象牙は、過去に輸入されたもの。消費したからといって、日本に新たに象牙が輸入されることはありません。ですが、密猟の増加と無関係なわけではありません。象牙のものを好んで(または知らずに)買う人がいる限り、需要があり市場があるのでゾウの密猟や違法取引は止みません。この「需要と供給」の関係を断ち切るため、いま日本国内でも下記のキャンペーンが広がっています。

#私は象牙を選ばない

あなたのハンコは、何で出来てる?「#私は象牙を選ばない」象牙販売の禁止求める“印鑑”アニメーション

環境保護団体WILDAIDと認定NPO法人アフリカゾウの涙による「Hankograph(ハンコグラフ)」というキャンペーン。すべて木製のハンコによるアニメーションを作成し、象牙の現状を伝えています。アフリカゾウがハンターにより撃たれ、生きたまま牙を抜かれてハンコになるというショッキングなストーリーが、お馴染みの朱色で描かれているのです。

「#私は象牙を選ばない」という象牙はんこ不買の意思表明を示す署名も行っています。

#REDonNOSE
REDonNODSE

REDonNODSE

ハンコグラフに引き続き、「#私は象牙を選ばない」という宣言をする運動です。日本国内における象牙販売を止めることに賛同する人達は、象牙を選ばない宣言の証として、印鑑の朱肉や血を イメージした赤いステッカーをゾウの象徴でもある鼻に貼る、または朱肉などにより鼻を赤く塗ることで運動に参加することができます。

「#REDonNOSE」運動の特製ステッカーもあり、公式賛同者をはじめ多くの人に鼻に貼ってもらい、その様子をハンコグラフのウェブサイト上で発信していくといいます。

ハンコグラフのサイトはこちら

象牙取引問題に取り組む国際団体(Organization)

象牙取引問題に関する国際的な団体としては下記が挙げられます。

象牙取引問題を解決するアイデアたち(Ideas for Good)

IDEAS FOR GOODでは、最先端のテクノロジーやユニークなアイデアで象牙取引問題の解決に取り組む企業やプロジェクトを紹介しています。

【参照サイト】ヤフー政策企画
【参照サイト】Still poached for ivory

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