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現実世界とリンクする「メタバース」が社会に貢献する事例8選

メタバース

VRやARなどを使ってインターネット上の仮想空間(バーチャル空間)に参加し、現実とリンクした様々な活動を行うことができるメタバース。メタバースとは、「超(メタ)」と「宇宙(ユニバース)」を合わせた造語である。アメリカの大手テック企業フェイスブックが、2021年10月に社名を「Meta」に変更し、メタバース分野に約100億ドル(約1兆1,400億円)の投資をすると発表したことは記憶に新しい。

2024年には7,833億ドル(約88兆円)規模の市場になるとの見通しもあるメタバースだが、なぜここまで注目されているのだろうか。そして、メタバースは私たちの社会にどのような影響を与えていくのだろうか。本記事ではそんな問いに答えるため、社会に貢献するメタバースの事例を8つ紹介していく。

社会に貢献するメタバース事例5選

身体的・精神的な自由

現実社会において、身体的・精神的に自身が望む姿でいられないという悩みを抱えている人々は数多く存在する。そうした人々にとって、思い通りの姿で社会生活を送ることのできるメタバースは、理想を現実に変える力を持った魅力的な場所になっている。

1. 身体的な制限がないアバターが選べる「VRChat」

VR空間にアバターでログインしてコミュニケーションを楽しむ「VRChat」では、デフォルトで利用できるアバターのほかに、特定の条件を満たすことで自分の好きなアバターをアップロードできる機能が実装されている。オリジナルアバターには身体的な制限がなく、人間以外にもロボットや動物など、現実の自分と異なる姿で生活を送ることができる。こうした身体的、そして精神的な自由は、現実の社会でこれまでに感じてきた疎外感を軽減することに役立つと考えられている。

2. 誰もがありのままの自分自身でマラソンに参加できるマラソン大会

デオドラント企業の「Degree(ディグリー)」は、メタバースプラットフォームにて、仮想空間の多様性と包括性を推進するマラソン大会「Metathon™(メタソン)」を開催した。メタソンの開催にあたり、すべての立場の人に「もっと動いてみよう」という自信を持たせると提言し、利用できるアバターの種類を増やした。通常のランニングウェアに加え、車椅子や義肢装具の装着を可能にし、参加者は自身の身体に最もフィットしたアバターを作成することができるようにしたのだ。これにより、誰もがありのままの自分自身でマラソンに参加するという身体経験を得られることを目指した。

世界初、多様性を祝う「メタバース・マラソン」

民主主義の理解と実行

メタバースの多くは、ブロックチェーン技術を用いており、そのうちのいくつかは従来の運営主体のプラットフォームとは異なる構造を取っていることがある。

3. 生まれや育ちに左右されないオープンな運営「Decentraland」

VRプラットフォーム「Decentraland」は、DAO(分散型自律組織)と呼ばれるブロックチェーン技術を用いて、ユーザーが主体となって組織運営を行っていく仕組みを採用している。中央管理者が存在しない「Decentraland」の世界では、例えば、どのアイテムを使えるようにするかなどのルールは、一定の条件を満たしたユーザーたちの投票によって決めることができる。生まれや育ちに左右されないオープンな運営は、自分たちの声で社会を変えていくという民主主義の理念や実行を理解する上で重要な役割を担うと期待されている。

「エコ・安全・低コスト」なイベント開催

場所による制限が限りなくゼロになるメタバースは、大規模なイベントとの相性が良いと考えられている。メタバース空間でイベントに参加できることの利点は大きく分けて2つある。一つは、車や電車、飛行機を用いた移動がなくなることによって、CO2の排出量を大幅に削減できるということ。そしてもう一つが、大々的に人々を集めることができるということだ。

4. トラヴィス・スコット氏がオンラインゲームで新曲披露

2020年の新型コロナウイルスの流行以降、人々が密集する大規模なイベントは自粛されているが、オンラインの仮想空間ではそうした制限をなくして、安全なイベントを開催することができる。コロナ禍の2020年に、アメリカのラッパーであるトラヴィス・スコット氏が新曲披露の場としてオンラインゲーム「Fortnite」を利用したことは大きな話題を呼んだ。約9分間のライブは、同時接続数1230万人以上という驚異的な結果を残している。

場所に縛られない働き方

メタバースを仕事に活用しようという動きも活発になってきている。私たちの働き方は、どう変わっていくのだろうか。

5. アバターでメタバース空間に集まる、Officeアプリケーション

世界的なソフトウェア開発・販売会社であるマイクロソフトは、2022年に「Mesh for Microsoft Teams」の販売を予定している。このツールでは、カスタマイズしたアバターでメタバース空間に集まり、Officeアプリケーションを用いた会議や共同作業を行うことが可能になるとされている。

6. アバターでメタバース空間に集まる、Officeアプリケーション

また、Metaも同様のコンセプトのワークスペースツール「Horizon Workrooms」を開発しており、場所に縛られない自由な働き方が現実的なものとなってきている。こうした働き方が普及することで、場所や移動の制限で才能を生かすことができなかった人々が活躍できる時代がやってくると期待されている。

文化や歴史の保全

文化や歴史的な遺産の保全といった分野でも、メタバースは一役買っている。長い年月を経て人類が培ってきた歴史ある文化や遺産の数々は、人為的な被害や自然災害によって壊されてしまうという危険と常に隣り合わせにある。そうした未来に残すべき物たちをメタバース空間上に構築し、バックアップを取っていこうとする動きが近年世界中で盛んになってきている。

7. バーチャル空間に首里城跡を再現したエリアを構築した「バーチャルOKINAWA」

沖縄発のメタバース「バーチャルOKINAWA」では、バーチャル空間に首里城跡を再現したエリアを構築し、2019年に焼失した正殿などの建造物を復元するだけでなく、首里城の歴史や沖縄の文化も学ぶことができるようになっている。このような取り組みは、他国の文化や歴史を正しく理解する上でも重要な役割を果たすことだろう。

コミュニケーションを円滑にする

メタバースはすでに私たちの買い物の仕方を変えている。これまでよりも、購入前に商品がどんなものかを認識しやすくすることで、コミュニケーションコストを低くしたり、誤った商品の購入を防いだりすることが可能となり、商品在庫や廃棄物を減らすことにつながるだろう。

8. 拡張現実技術を使用して部屋に家具を配置するIKEA

IKEAは、ARを使用して部屋に家具を配置し、自宅やオフィス空間で商品がどのように見えるかを購入前に確認することができるアプリを提供している。

同様に、Warby ParkerやL’Oreal、WatchBoxなどの小売業者も現在、ARを使用して、顧客が自宅にいながらも商品を試すことが出来るサービスを提供している。

まとめ

オンラインゲームやコミュニケーションといった分野から徐々に広まってきたメタバースだが、人々の認知と技術の進歩によって、日々実現できることが増えてきている。プライバシーの問題やアクセスの平等性、国際的な法律の整備など数々の問題を抱えてはいるが、こうした新しい技術によって社会が大きく動いていくことは確かであろう。メリットとデメリットを冷静に判断しながら、今後も注目していきたい。

【参照サイト】メタバースとは・意味
【参照サイト】メタワーク(Metawork)とは・意味
【参照サイト】Travis Scott Destroys ‘Fortnite’ All-Time Record With 12.3 Million Live Viewers
【参照サイト】沖縄発のメタバース バーチャルOKINAWA
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【関連記事】メタバースは「公正な社会」に貢献するか?香港の学生が提案する、仮想空間×ソーシャルグッドの可能性

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