いま急激に注目される「不動産テック」とは?定義や事例を解説
従来の不動産(Real Estate)に最新のテクノロジー(Tech)を組み合わせ、不動産業界における課題や習慣に新たな風を吹き込む不動産テック(Real Estate Tech)。
対象となるのは不動産の売買や投資、経営、物件探しなど、売り手、買い手両方を問わない。たとえばVR(仮想現実)による物件見学や、インターネットを利用した個人間の賃貸物件のマッチング、AI(人工知能)による自分にピッタリな物件の提案などが挙げられる。
一般社団法人不動産テック協会によると、2022年8月現在で日本国内に430の不動産テックサービスが存在し、年々拡大を続けている(※1)。さらに、2020年度の不動産テック市場規模は前年度比108.6%の6,110億円と推計され、2025年度には2020年度比203.9%の1兆2,461億円に到達すると予測されている(※2)。
今回の記事では、不動産テックの具体例とそれに取り組む企業をいくつか紹介する。
日本で拡大を続ける不動産テック領域3選
スペースシェアリング
オフィスや自宅などにある空きスペースを活用するサービス。時代が変わり、「資産を所有する」から、「借りる」への優先度が高まるなかで、ITを活用した不動産活用が注目を集めている。似た概念として、シェアリングエコノミーと呼ばれることもある。
たとえば、アメリカ・サンフランシスコ発の民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」は世界中に浸透している。自宅にある空き部屋を観光客にシェアし、貸主が空き部屋を有効活用できる利点に加え、旅行者にとっては現地の人と関わる楽しさや、ホテルよりも格安で滞在できるメリットがある。
またコロナ禍で人々の働き方も変容しつつある。リモートワークを活用することで、企業にとって大規模なオフィスを所有もしくは借りるメリットが少なくなった。そこで、他の企業と一つの物件を共有するシェアオフィス「コワーキングスペース」の不動産テックも着実に地位を築いている。
ITの力を利用することで稼働率の悪い不動産資産を有効活用し、さらには不動産テックの一つである「マッチング」に特化したサイトを活用。それにより多くの人に知ってもらうチャンスを生み出すことにつながっている。
IoT(Internet of Things)
IoTとは、Internet of Things(モノのインターネット)略で、インターネットに接続されたモノが通信機能を持っている機器のこと。不動産テックとしては、「スマートホーム」と呼ばれる鍵の閉め忘れなどを防止するIoTや、遠隔地から部屋の様子が見られるセキュリティに特化したIoTなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで拡大を続けている。
IoTの利点はスマートフォンなどのデバイスからインターネットに接続するだけで、さまざまな課題を解決できる点にある。たとえば、セーフィー株式会社のクラウドカメラ「Safie」は、不動産物件の管理から金物・工具の盗難予防と進捗管理の遠隔化まで多岐に活躍。顔認証システムを使った解錠は利用者側も管理者側も、面倒な手続きや対応が必要なくなる。
人口減少が進む現代で、働き手の確保は不動産業界にとっても他人事ではない。IoTを活用することで、管理者側も利用者側もより効率性を高め、物件の価値を高めていくことが期待できる。
VR・AR
コロナ化において、物件の内見ができない状況は不動産業界にとって大打撃となった。また利用者側にとっても、自分の目で確認できないという不安を膨張させた。そこで活躍したのがAR(Augmented Reality : 拡張現実)とVR(Virtual Reality:仮想現実)の不動産テックだ。
3D技術を活用した物件の疑似内見は、借主が物件を自分の目で見ているのと同じように細部まで確認でき、その場を実際に見に行かなかったとしても、安心して契約に進むことができるメリットがある。
顧客が事前に物件を確認できることで、最適な物件を選ぶまでの時間が短縮されただけでなく、不動産業者の人件費も節約にもつながる。VR技術がさらに発展していけば、物件にどんなインテリアを置くのか、家具のサイズはいくつかなど、現地に行かなくても済むようになるだろう。
まとめ
人材不足、コロナ禍による混乱、効率的ではない対面業務など、不動産業界の課題を解決する不動産テック。導入コストはかかるものの、長期的な視点に立てば、顧客にも不動産業者にもメリットが大きい。
不動産テックの発展は、より暮らしやすい生活に私たちを導いてくれるだろう。
(※1)不動産テック カオスマップ
(※2)2021年版 不動産テック市場の実態と展望
【参照サイト】airbnb
【参照サイト】Safie
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