ここ最近、世界中の消費者の間で関心が高まっているのが、製品の安全性や信頼性だ。グローバル化に伴いあらゆる製品のサプライチェーンが複雑化するなか、それらの原材料や調達先はますます不透明になり、消費者の多くがそのブランドを本当に信用してよいのか疑心暗鬼になっている。世界中で起こっている有名ブランドによる不祥事も背景にあるだろう。
特に、普段から我々が口にする食品や肌につける化粧品といった消費財ともなれば、消費者がそれらの原材料に対して敏感になるのは当然だ。そんな消費者の懸念を晴らすべく、VR(バーチャル・リアリティ)を活用して新たなプロモーションを展開したコスメブランドがある。
それが、韓国のオーガニックコスメブランド「innisfree」(イニスフリー)だ。イニスフリーは、豊かな大自然に恵まれ、観光地としても人気の高い韓国の火山島、済州島でとれた自然原料や植物を基にして作られたコスメを販売しているブランドで、既に中国のショッピングモールなどでは店舗も数多く展開している。
このイニスフリーは今年の8月、特に消費者の安全性に対する意識が高い中国で、VRを活用したユニークな店舗プロモーションを実施した。韓国のデジタルエージェンシー、PostVisualとの協働により上海ディズニーリゾートにある店舗に用意されたのは、VRヘッドセットとサイクリング用のバイクマシンだ。
店舗を訪れた人々がヘッドセットを頭に被ってバイクにまたがると、イニスフリーが販売するコスメの原材料の生産地である済州島をVR空間で空中サイクリングできるようになっている。済州島の大自然を360度パノラマ映像により肌で感じながら、アイコンタクトするだけでイニスフリーが使用している緑茶や菜の花といった自然植物を収集できるというものだ。
世の中には「オーガニック」と称するブランドは溢れているが、実のところそれらがどこまで本当に信用できるものなのか、消費者には判断する術がない。もちろん、VRで原産地を見せられたところで、それらが本当にコスメに使用されているかどうかを確かめることにはならない。
しかし、少なくとも消費者は原材料がどこでどのように作られており、最終製品になっているのかをしっかりと映像でイメージすることができる。VRというテクノロジーを利用して消費者にリアルなサプライチェーンを見せることで、ブランドとしての信頼性を伝えようとするイニスフリーの試みは、新たなCSRコミュニケーションのヒントにもなりそうだ。
【参照サイト】innisfree
【参照サイト】innisfree VR