電気は歩いて生み出せる。アフリカの青年起業家が考えた、エネルギー不足の解決法

Browse By

「世界で一番寿命が短い国」

かつてはそう呼ばれることもあった、アフリカ西部の海岸線に位置する国・シエラレオネ。ここでは、「エネルギーの貧困」が深刻な課題となっている。電気を使える人は全人口のわずか26%。特に農村部ではわずか6%の人だけが電気を利用でき、そのほとんどがソーラーランタンや乾電池に頼っている。

電気を使えない人々は、照明や暖房、調理などのために薪を燃やして生活しているのが現状。その結果シエラレオネでは、薪のために木を切り倒すことで森林破壊が進み、洪水や地滑りなどの異常気象に対して非常に脆弱な状態になっている。さらに、薪や安価なケロシン発電機に頼る家庭が多いことから、住宅火災の頻発も問題になっているという。

そんなシエラレオネから、世界を牽引する新たな学生起業家が誕生した──。

 Alan Wheeler

image via Alan Wheeler

彼の名前はジェレマイア・ソロンカ。ソロンカ氏自身、シエラレオネ内戦の戦闘中に生まれ、首都フリータウン郊外の避難民キャンプでシングルマザーと共に生活していた。そこでは、薪を燃やすことによって発生する光化学スモッグが呼吸器系の不調を引き起こしていたほか、周囲には、まともな照明がないことから学業に遅れをとっている同世代の若者たちが少なくなかったという。

こうした命に関わるような苦難が原動力となり、ソロンカ氏は画期的なアイデアを生み出した。それは、自動車や歩行者が道路で生み出す振動をクリーンな電流に変換するという新たな発電方法だ。

この発電方法の特徴は、風力や太陽光などの既存の再生可能エネルギーとは異なり、天候に左右されず発電できる点。さらに、バッテリーや外部電源との接続が不要であることから手軽に使用できる点だ。彼が17歳の時に立ち上げたスタートアップ企業「オプティム・エナジー社」は、シエラレオネ北部のマカウォとフリータウン東部のクントルーで試験的なプログラムを実施。わずか2台の装置で、約1,500人の市民が暮らす150世帯と、9,000人以上の生徒が通う15校に電気を無料で提供することに成功した。

ソロンカ氏は2021年10月、イギリスの国際教育機関「バーキー財団」が2015年に設立した国際的な賞である「Global Teacher Prize」の姉妹賞であり、人々の生活や、その先の社会に良い影響を与えた優れた学生1名に贈られる「Global Student Prize 2021」の初の受賞者になった。受賞によって得られる10万ドルの賞金を使い、彼は2030年までに10万人の人々に電気を届けるため、活動を拡大する予定。現在は、医薬品やワクチンを冷やすための電力や、日没後の患者の治療に十分な明るさを必要とするヘルスケア分野への進出計画を計画しているそうだ。

逆境をバネにして、アフリカの農村から新たなアイデアで世界の貧困問題、環境問題を解決する学生起業家。生まれた環境に関わらず世界は変えられることを教えてくれる若き存在から、今後も目が離せない。

【参照サイト】Global Student Prize 2021

Edited by Tomoko Ito

FacebookTwitter