「ケーキを焼くなら、店のオーブン使ってOK!」光熱費に悩むイギリス人を救うパン屋

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2022年、家庭の電気・ガス料金が80%も引き上げられたイギリス(※1)。生活を切り詰めようとして心の余裕をなくしたり、寒くても暖房の使用を控えたりする人が、多くいるかもしれない。

「光熱費が高騰するなかでも、クリスマスケーキを作って楽しんでほしい」。そんな想いから、2022年11月以降、人々が持ってきたケーキ生地を無料で焼く取り組みを行っているのが、Brickyard Bakeryというパン屋だ。

パン屋のオーナーであるエド・ハミルトン・トレウィット氏は、お客さんたちが、自宅のオーブンを何時間も使ってケーキを焼くことを躊躇していると知る。そこで、いつも稼働させている自店のオーブンを使うことにしたのだ。

金曜日にケーキ生地を持ってきてもらい、次の月曜日に焼きあがったケーキを渡す取り組みは好評を博し、今年のクリスマスまで繰り返し行うことにしたという。パン屋ならではの設備を活かして、街の人々に笑顔をもたらしている。

オーナーの優しさは、これだけにとどまらない。同店は今年の9月以降、オーブンの熱で暖かくなった部屋を、無料で開放する取り組みを行っている。これも、光熱費が高騰するなか、人々が自宅で寒さを我慢しないようにするための工夫だ。

部屋は、厨房の上階にある。オーナーによると、上に昇ったオーブンの熱が、有効活用されないまま逃げて行っていたという。そこで、この部屋を、人々がソファなどに座ってくつろげる場所にした。店でパンを買わなくても利用できるうえ、コーヒーと紅茶の無料サービスを用意しているという。

暖かい部屋を開放する取り組みは、SNSなどで注目を集め、寄付を申し出る人や、部屋にお菓子や本を置いていく人が現れたそうだ。他者に与えようとするパン屋の姿勢が、人々の心を動かしたのかもしれない。

食品などの値上げラッシュに戸惑う今日に、思わずほっこりするニュース。一人の人の優しさが伝播して、まちに、社会全体に広がっていく──そんな取り組みが世界各地で広がっていけば、寒い冬も温かい心で過ごせるかもしれない。

※1 「命に危険が」 イギリスで光熱費上限を80%引き上げ – BBCニュース
【参照サイト】Donations for the Warm Room
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