「The Alex Blake Charlie Sessions」。シンガポールにある廃炉となったパシル・パンジャン発電所で、2019年から開催されている音楽&カルチャーフェスだ。
このフェスは、「女性が今日の最高の音楽を作っている」という信念のもと開催されており、出演者はすべて女性が主体のアーティスト、監督も女性である。2019年に続き2度目の開催となった2023年度は、2月21日〜2月25日までの5日間の日程で行われた。
参加アーティストはジャンルや国籍など多様性に富んでいる。2023年、日本からは音楽家・シンガーソングライターの青葉市子(あおば・いちこ)氏が出演した。そのほかには、米国インディーズ界隈で注目を集めるSoccer Mommy氏や、アジア系アメリカ人の気鋭シンガーソングライターDeb Never氏、シンガポールで活躍するバンドComing Up Rosesも起用されたことから、アジア人およびアジア系北米人女性たちの活躍を祝うフェスとも言える。
イベントを手掛けたのは、「24OWLS」。シンガポールで音楽プログラムを数多く主催するクリエイティブ集団だ。Youtubeで当日の様子を収録した動画も公開している。
会場には、ジェンダーに中立で、社会的にもホットな話題を扱ったギャラリーなどのスペースも設けられた。「探求」と「実験」をテーマにした本ベントでは、音楽ライブ以外にも、シンガポールの最近のポップカルチャーを感じられる空間となっている。
たとえば、「Chio Books」という書店では、同性愛や音楽をテーマに本がセレクトされ、LGBTQ+の象徴であるレインボーカラーが多く掲げられていたという。シンガポールを拠点に活動するアーティストGeraldine Lim氏は、神話と女性像というテーマのユニークな作品を展示した。
「探求」と「実験」をテーマにした本ベントは、音楽ライブ以外にも女性に焦点を当てたプログラムがたくさんあることがわかる。
シンガポールは、1965年にマレーシアから分離独立してできた、まだまだ若い国。多民族国家として国のアイデンティティを形成してきた。世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数(GGI)2023年によると、シンガポールは49位。日本も含めジェンダー平等に保守的な傾向を持つアジアで、このようなフェスが開催されたことは先駆的だと言える。
何か社会に影響を残したいのなら、堅く伝えるだけでなく、音楽イベントのようなポップなアプローチも有効かもしれない。「The Alex Blake Charlie Sessions」は、楽しんでいるうちに自然と社会課題を考えるきっかけを与えてくれる好例だ。今後も、女性の活躍やシンガポールのカルチャーの成長に大きな影響を与えるイベントとなるだろう。
【参照サイト】The Alex Blake Charlie Sessions ABOUT
【参照サイト】World Economic Forum Global Gender Gap Report 2023
Edited by Kimika