狭い店舗に限られた品揃え?カナダの“ちょっと不便な“スーパーが物価高の救世主に

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世界でインフレが進み、毎日食卓に並べる食品の値上がりは、私たちの生活に大きな影響を与えている。節約のため一品おかずを減らしたり、安くなる時間帯を狙ってスーパーに駆け込んだりしている人もいるだろう。

原価が上昇すれば商品の値上がりは避けられない。それを防ぎ、消費者に安価で提供するには、あらゆる面での運営コスト削減が必要となる。それを実践したのが、カナダを拠点とする大手格安スーパーのLoblaw Companies Ltd.(ロブロウ・カンパニーズ・リミテッド 以下、ロブロウ)だ。

2024年9月、ロブロウはカナダ・オンタリオ州のウィンザー、セント・キャサリンズ、ブロックヴィルで、最初の3店舗となる新形態の格安食料品店舗「No Name」を試験的に導入した。ロブロウは、運営コストを削減し品揃えを限定することで、食料品や日用品などの必需品を他の小売店と比べ、最大20%節約して顧客に提供することを目標としている。

シンプルで明るい黄色のパッケージで知られるロブロウの既存格安ブランドを活用したスーパー「No Name」の店内は、店舗運営の簡素化のため、さほど広くはない。また、食料品や日用品の品揃えは1,300品目と少ないが、リンゴ、バナナ、ピーマン、ニンジンといった青果やベーグルなどの保存のきくベーカリー、冷凍食品などの品揃えは豊富だという。これは彼らが需要の高い商品を重点的に販売しているからだ。

そして、No Nameは週ごとの配送回数を減らして物流コストを削減しているほか、棚やレジなどの備品を再利用して建築コストを最小限に抑えている。さらに、マーケティングを限定的にし、チラシ配布もしないという徹底ぶりだ。

このスーパーには乳製品や生肉製品を販売するための冷蔵設備がなく、営業時間は午前10時から午後7時までと短い。このことについて、ロブロウ公式ウェブサイトの声明で、バンク氏は次のように話している。

No Nameはこれまでとは全く異なるショッピング体験を消費者に提供します。一般的な食料品店の経営にはコストがかかりますが、建築費や運営費、店舗の「複雑な部分」を軽減することで、効果的な節約が実現可能です。また、合理化された品揃えは、廃棄物の削減にもつながります。

一般的なスーパーに慣れた人々は、No Nameの店舗に少々不便さを感じるかもしれない。

しかし、消費者の便利さと引き換えに、私たちは失っているものをしっかりと認識する必要があるのではないだろうか。小売店の従業員は長時間労働しているかもしれない。そして原料を育てる農家が低賃金で働いているかもしれない。すばやく商品を運ぶために、必要以上の車両が使われているかもしれない。

その点ロブロウは、時間・商品・運営・物流を最小限に抑えて無駄を省くことで、「ちょっとの不便さ」と引き換えに、安価な商品を提供すること、そして環境負荷の削減を実現しているのだ。

No Nameは、便利さに執着することが、社会にとって必ずしも良いことにはならないということを考えさせてくれる事例だろう。

【参照サイト】Loblaw Companies Ltd.
【参照サイト】Big savings – Loblaw pilots new no name® store to bring more value to customers 
【参照サイト】Loblaw Introduces a New No Name Store Format in Ontario
【参照サイト】Loblaw pilots new ‘No Name’ value store
【参照サイト】Loblaw piloting ultra-discount No Name grocery stores in Ontario
【参照サイト】Canadians are feeling increasingly powerless amid economic struggles and rising inequality
【参照サイト】Canada’s cost of living questions aren’t going away anytime soon
【参照動画】Here’s what ‘No Name’ ultra-discount stores will look like
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Edited by Megumi

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