ハワイといえば、サーフィンの聖地。海とともに生きる文化の中で、サーフボードは多くの人々の生活に欠かせない存在だ。しかし、その製造過程や廃棄の現実は深刻だ。発泡スチロールをコアにしたサーフボードは、カットや研磨の段階で大量の切れ端が生まれており、埋立地に限りがある島内で処分されている。また、使用済みボードも耐久性の限界を迎えれば多くが廃棄されているのが現状である。

Image via Hawaii Off Grid
この課題に対し、マウイ島を拠点とする建築会社・Hawaii Off Gridは、サーフボードをリサイクルした新しい建築素材「サーフ・ブロック」を開発した。これは、サーフボード製造時に出る発泡スチロールの廃材を回収・粉砕・成形し、新たな断熱材入りの複合コンクリート型枠(ICCF)として再生させたものだ。
サーフ・ブロックは、耐火性・耐嵐性・耐久性に優れるだけでなく、軽量でエネルギー効率にも優れている。室内の温度を快適に保ち、冷暖房に使用する電力を大幅に節約できるのが特徴だ。さらに施工が簡単でさまざまなデザインに変えられるため、戸建て住宅から集合住宅まで幅広く使用できる。人件費を抑えながら工期も短くなり、建築コストの抑制にもつながる。

Image via Hawaii Off Grid
ハワイは全米で最も建築費が高い州であり、住宅価格の中央値は約68万ドル(約9,600万円)にも上る(※1)。さらに、2023年8月にマウイ島ラハイナで発生した大規模な山火事では、住宅の96パーセントを含む2,200棟以上が焼失するという甚大な被害が発生した(※2)。このような状況下で、地産地消の再生建材は、住宅供給の安定化と災害復興の両面から、重要な役割を果たす可能性がある。
ハワイでは多くの建材を米本土から輸送しており、その輸送コストが建築費や住宅価格を押し上げる要因となっている。このような状況の中、サーフ・ブロックのような再生建材の活用は、新たな資源の使用を抑え、温室効果ガスの排出削減にもつながる。経済的な住宅づくりを可能にするこの技術は、建築費の高い地域で復興住宅や低所得者向け住宅を建設する際、重要な役割を果たしていくかもしれない。
廃棄されるはずだったサーフボードが、新たな暮らしを支える礎となる。持続可能な未来の住まいを築くために、私たちは限られた資源をどう生かし、どのように環境に貢献していくのか──その選択が問われているのではないだろうか。
※1 Hawaii Realtor.com
※2 Riding A Wave: Surfboard Waste Turned Into Building Blocks For New Homes Civil Beat
【参照サイト】SURF BLOCK MAUI
【参照サイト】Hawaii’s Testing Out a New Sustainable Material To Build Homes: Surfboards
【参照サイト】Riding A Wave: Surfboard Waste Turned Into Building Blocks For New Homes
【参照動画】Surfboard waste could help solve Hawaii’s housing crisis
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アイキャッチ画像:Hawaii Off Grid提供
Edited by Megumi