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プラスチックオフセットとは・意味

プラスチック

プラスチックオフセットとは

プラスチックオフセットとは、消費者や企業がプラスチッククレジットを購入するか、プラスチック廃棄物をリサイクルする団体や環境団体に資金を直接提供することにより、プラスチック消費量をオフセット(相殺)できる仕組みである。カーボンオフセットのプラスチック版と捉えると分かりやすい。

プラスチックオフセットの目的は、言わずもがなプラスチック廃棄量の削減である。世界各国で大量に生産され、捨てられ続けるプラスチック。特に海洋プラスチック問題は深刻で、年間800万トン(ジェット機5万機相当の重さ)のプラスチックが世界の海に流入している。

世界各国が対応を迫られプラスチック規制も年々厳しくなっている。特にEUでは2030年までにすべてのプラ容器包装を、コスト効果的にリユース・リサイクル可能にするなど積極的なプラスチック削減目標を掲げている。そんな中、削減努力をおこなったうえでどうしても発生してしまうプラスチックを間接的に削減しようと生まれたのがプラスチックオフセットだ。

プラスチックオフセットの方法

具体的には、まずプラスチックオフセットの取引事業者(プロバイダーと呼ばれる)が企業のプラスチック廃棄量を測定。換算された額を企業が年単位か月単位で支払う。この資金やクレジットは開発途上国の廃品回収業者やプラスチック問題の分野で活動する環境団体に投資され、プラスチックの消費量が相殺されるという仕組みだ。

プラスチックオフセットはカーボンオフセットと同様に、日常生活や経済活動において避けることのできないプラスチック消費量を全体量で捉え、埋め合わせる考えである。本来は企業や消費者が直接的にプラスチック消費量を削減することが望ましいが、消費量を完全にゼロにすることは極めて難しい。そのため、プラスチック消費量の削減努力をしたうえでどうしても発生してしまう分については、オフセットを行うなどして間接的にプラスチック量を削減することが求められている。

プラスチックオフセット事例

プラスチックオフセットの主要なプロバイダーはアメリカを拠点とするrePurposeやVerraなどが挙げられる。

rePurposeの事例

アメリカのプロバイダーrePurposeが企業へ展開するサービスでは企業のプラスチック消費量を測定し、クレジットを算出する。企業が支払うクレジットはインドやケニアなど8カ国以上のリサイクル業者へ提供され、リサイクルに充てられる。

rePurposeはプラスチックオフセット量によって、独自の認証を設定しており、ブランドの商品にもロゴとして使用することができる。相殺量によって「Plastic Neutral」、「Plastic Negative」の認証が与えられ、ブランドの商品を通して消費者へも企業の取り組みを訴えることができる。

rePurposeの公式Webサイトによると2,400名以上の廃品回収業に携わる人々がrePurposeの国際基準に沿った倫理的な労働環境で従事しており、年間70万kg以上のCO2排出量の削減を達成している。

プラスチック・フォー・チェンジの事例

もう1つ、プラスチックオフセットの貢献事例として、プラスチック・フォー・チェンジ(以下、PFC)の取り組みがあげられる。

PFCの取り組みは、途上国に散乱したプラスチックを減らすのと同時に、貧困の解決にもつながるもの。企業がプラスチックの排出量10kgあたり6ドル(約660円)を支払うと、途上国でプラスチックごみを集める人々の賃金として使われる仕組みになっている。またPFCでは、集めたプラスチックをもとにリサイクルプラスチック製品を作っている。

PFCは、リサイクル業として世界で初めて、世界フェアトレード連盟から団体に組織としての認証も受けており、プラスチックごみの収集をする人たちとの取引が公平であること、労働環境が安全であることなどについても第三者のお墨付きを得ている。

貧困と海洋プラの問題を同時に解決。ごみを出した分だけ支払う「プラスチックオフセット」

プラスチックオフセットの問題点

プラスチックオフセットはカーボンオフセットのように国際的な基準や制度が確立されていない点が問題として挙げられる。各プロバイダーが独自の基準でプラスチック消費量の測定をし、価値の算出を行っているのが現状だ。

また、統一された基準が存在しないため、オフセットした総重量と同等のプラスチックが全て適切にリサイクルされているのかといった不透明性への批判もある。

こういった問題を解決するため、アメリカのプロバイダー、Verraは「プラスチック廃棄削減基準」の認証取得へ向けて活動している。

また、企業や消費者が実質的なプラスチック削減行動をしていなくても、プラスチックオフセットを利用するだけで「十分にプラスチック削減ができている」と錯覚してしまう可能性がある、との指摘もある。

あくまで、オフセットという概念はプラスチックを削減するための、一つの暫的な選択肢である。使用したプラスチックのリサイクルをオフセット制度で適切な団体に委託しながらも、プラスチックを削減する事業活動や消費活動を確実に行っていくことが、本当のプラスチック問題解決につながるのではないだろうか。

【参照記事】海洋プラスチック問題について (WWF)
【参照記事】プラスチックを取り巻く国内外の状況(環境省)
【参照記事】What is Plastic offsetting ?(PLASTICS FOR CHANGE)
【参照記事】AFTER CARBON OFFSETTING, COMES PLASTIC OFFSETTING(Prevented Ocean Plastic)
【参照記事】rePurpose公式Webサイト
【参照記事】What’s wrong with plastic credit and offset schemes?(Eco-Business)
【関連ページ】カーボンオフセットとは
【関連ページ】貧困と海洋プラの問題を同時に解決。ごみを出したぶんだけ支払う「プラスチックオフセット」

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