貧困と海洋プラの問題を同時に解決。ごみを出した分だけ支払う「プラスチックオフセット」

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国や企業レベルでの脱プラスチック政策が加速している。日本でも、小売店や飲食店で使い捨てスプーンなどの削減が求められたり、プラスチック資源循環促進法が制定されたりと、プラスチックごみ削減のための政策が打ち出されるようになった。しかし、世界全体でみればプラスチックの年間生産量は過去20年で5倍になると予測されているなど、世界の努力とは裏腹に増加の一途をたどっている(※1)

そこでせめて、自然界に放出されたプラスチックを回収し、社会課題の解決策として利用できないかと考えた人がいる。それがプラスチック・フォー・チェンジ(以下、PFC)のCEOアンドリュー・アルマックさんだ。2011年に南アジアを旅したアルマックさんは、極度の貧困状況とおびただしいプラチックごみの散乱に呆然とした。この旅がきっかけとなって、散乱したプラスチックを減らし、同時に貧困の解決にもつながるプラスチック・フォー・エクスチェンジを思いついたという。

仕組みは簡単。企業がプラスチックの排出量10kgあたり6ドル(約660円)を支払うと、途上国でプラスチックごみを集める人々の賃金として使われる。つまり、温室効果ガスを相殺するカーボンオフセットならぬ、プラスチックのオフセットというわけだ。

ごみを集めて暮らす人々

Image via Plastic for Change

PFCは、リサイクル業として世界で初めて、世界フェアトレード連盟から団体に組織としての認証も受けており(※2)、プラスチックごみの収集をする人たちとの取引が公平であること、労働環境が安全であることなどについても第三者のお墨付きを得ている。

PFCでは、集めたプラスチックをもとにリサイクルプラスチック製品もつくっている。どのごみが何に使われた、という透明性が確保され、貧困で苦しむ人々の支援にもなる、世界で唯一のフェアトレードリサイクルプラスリック製品に対する企業の期待は熱い。

化粧品ブランドThe Body Shopもその一つだ。長年、サステナビリティ度の高いリサイクルプラスチックを探し求めていたところ、PECのリサイクルプラスチックに出会った。今では、PECのリサイクルボトルを売れ筋のシャンプーボトルなどに使用している。その結果、多くのペットボトルのリサイクルをはかるだけではなく、ごみを集める人たちの人数や、収入を増やすことにも貢献できるようになり、ブランド価値の向上につながっている。

世界には1,000万人以上もの人々がごみ収集で生計をたてていると言われ、その多くは貧困を強いられている。また、海だけをみても、すでに放出されているプラスチックは約1,300万トン。自然界には回収しきれないほどのプラスチックがあふれている(※3)。その意味では環境中に放出されたプラスチックごみを回収、リサイクルすることによって、仕事をつくり貧困問題の解決をはかる、PEFの挑戦は環境問題と貧困問題の二つを解決する画期的な取り組みと言えるだろう。

一方、廃棄物問題の解決において一番に優先すべきは発生抑制であることを忘れてはいけない。世界がこのままのペースでプラスチックが増加させると、2050年までに120億トン以上のプラスチックが埋め立て・自然投棄されると予測されている(※4)。まずはできる限りリデュース、リユースをすすめ、どうしても使用が必要なプラスチックの排出に限って、少しでもポジティブな影響を生み出す手法として活用することが有効なのではないだろうか。

※1 The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics, World Economic Forum
※2 製品に対するフェアトレード認証である国際フェアトレード認証ラベルではなく、組織に対して与えられるフェアトレード認証、World Fair Trade Organizationの認証を得ている。
※3 Breaking the Plastic Wave: Top Findings for Preventing Plastic Pollution
※4 Geyer, R., Jambeck, J. R., & Law, K. L. (2017). Production, use, and fate of all plastics ever made. Science advances, 3(7), e1700782.

【参照サイト】PLASTICS FOR CHANGE
Edited by Kimika

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