失敗は成功の母。失敗作だけを集めたスウェーデンの美術館「The Museum of Failure」

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私たちの生活には過去に生まれた数えきれないほど多くのイノベーションが深く関わっており、様々な革新的技術、デザイン、サービスが社会をよりよい方向へと導いてきた。

しかし、それらのイノベーションの裏には、それよりはるかに多くの失敗があったことを私たちは知らない。競争原理によって成功事例ばかりが世間に知れ渡り、失敗作はすぐに隠され、市場からかき消されてしまう。

だが、本来であれば新しいアイデアやテクノロジー、デザインのインスピレーションは成功だけではなく過去の失敗も踏まえて想起されるべきではないだろうか。失敗に関する情報へのアクセスが少なく、成功ばかりが評価されがちな現状で、果たしてどこまでイノベーションが促進されるのだろうか。

このような現状に問いを投げかけるべく、失敗作の魅力や可能性を提示しているのが、「The Museum of Failure」という美術館だ。スウェーデンのヘルシンボルクにあるこの美術館は、今年の6月に無料で一般公開がスタートする。

館内には60以上の失敗作が並んでおり、それらの概要や背景が展示されている。会期中には館内ツアーと関連ワークショップが開催予定だ。具体的には、キュレーターによる失敗作の鑑賞説明や、失敗作をどのように自分自身のビジネスや生活に活かすべきかインタラクティブに考えられるワークショップを体験できる。

作品の一例としては、コルゲート社が1980年に発売した冷凍食品のビーフラザニアが挙げられる。このラザニアはパッケージに歯ブラシのロゴが入っていることから不人気となり、同社の代表的な失敗作となった。確かに食品と歯ブラシはミスマッチだ。

また、Google Glassのように将来的には再び注目を浴びる可能性もあるイノベーションも美術館に飾られている点にも着目したい。Google Glassはテクノロジーと人間をインタラクティブにつなぐ革新的なアイデアだったが、市場への投入が早すぎたのか、効率性を過剰に求めすぎたのか、前評判とは裏腹に多くの人々に普及することはなかった。人々の本質的ニーズや社会背景などの考慮の有無も「失敗作品」のキュレーション基準となっている。

「企業を批評するよりも、失敗を歓迎する社会を創出することが、革新への近道かもしれない」

名作や名画が並ぶ美術館で、あえて失敗作を展示する取り組みは、失敗作をリスペクトする姿勢を社会に示すと同時に、生活者に失敗を踏まえて物事を思考することの重要性を気づかせてくれる。

「The Museum of Failure」から触発されて生まれる新たなイノベーションに期待したい。

【参照サイト】The Museum of Failure

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