近年日本ではたばこ税が値上がったり禁煙スペースが増えたりと、喫煙をやめるインセンティブが働きやすい環境になっている。しかし世界レベルで見てみれば、人口増加の影響でたばこの生産量は2025年までに50%も増加すると言われている。それならばいっそのこと、たばこの悪い側面にばかり注目せず、今後増加するたばこを有効活用する手立てを考えてみるのはどうだろうか。
オーストラリアのメルボルンにあるRMIT大学の研究チームは、たばこの吸い殻をアスファルトに混ぜて道路を作る研究を進めている。吸い殻はパラフィンワックスなどで閉じ込めたうえで使われるためアスファルトから漏れ出る心配はなく、含まれる吸い殻の密度によってはひどい渋滞にも耐えうる強度の道ができるという。しかもこの吸い殻を含むアスファルトは従来のアスファルトよりも熱伝導率が低いため、実用化されれば都市部のヒートアイランド現象を緩和する効果も期待できる。
研究者の一員であるAbbas Mohajerani氏は「この研究は新たな建築材料の可能性を示すと同時に、廃棄物処理の問題の解決にもつながる」と語る。たばこの吸い殻は全世界で毎年130万トンも出ており、そのほとんどがゴミとして捨てられる。
それらの残骸にも有害な化学物質が残るため、川や海に流れ出れば海の生き物を危険にさらすことになりかねない。この状況に問題を感じたMohajerani氏は、有害な物質を「封じ込める」方法を模索し続けた。2016年には吸い殻をレンガに再利用する研究で世界的に有名になり、今回はアスファルトとして使う方法を世界に示した。
道を歩くと時折たばこの吸い殻が捨てられているのが目に入る。そのままだと単に道を汚すゴミだが、アスファルトと一体化させる発想でよりよい道を作ることができる。人口増加に伴いたばこも増えるかもしれないが、同時に道路の需要も増すだろう。そのなかでMohajeraniたちの研究は大いに役立つことが期待される。