「一つ買うと一つ無料」に隠されたメッセージとは?KFCの乳がん検診啓発キャンペーン

Browse By

男性は65.0%、女性が50.2%。日本人の2人に1人以上が、一生のうちにがんと診断されている(※1)。長年病院に行かず、体に異変を感じたときには、もうかなり進行している場合もある。がんを克服するためには早期発見が鍵を握っているため、定期的な検診が大切だ。

女性のがんの発生部位で最も多いのは乳房。乳がんの検査を受けている女性も多くいるだろう。国立研究開発法人国立がん研究センターによると、日本では、40~69歳の女性の約半数が過去2年に乳がん検診を受診しているという。リスクを考慮すると、誰もが気を付けてほしい病気だ。

海外に目を向けると、中南米の女性にとってもメジャーな病気である。コスタリカは中南米で2番目に乳がんの死亡率が高いが、まったく検診を受けない女性も多いという。

そこで一見、乳がんと関係なさそうな企業が立ち上がった。ケンタッキーフライドチキン(以下、KFC)だ。コスタリカのKFCは、10月の国際乳がん対策デーに合わせて一大キャンペーンに打って出た。「一つ買うと一つ無料(buy 1 get 1 free)」の文字をデカデカと載せたポスターを街中に貼り付けるキャンペーン。ここまでは、普通のお得情報といった様子だ。

しかし注文しても、一向に無料の商品が出てこずに怒るお客さんが続出。それもそのはず、目立たないところに次の文言が書かれているのだ。「このプロモーションは無効です。このようにチェックを怠ると乳がんも発見できません。自己診断を行い、定期的に医師の検診を受けましょう。」

Buy 1 get 1 free

Image via McCann

人々は怒り心頭だったが、半ばドッキリに引っかかってしまったプロモーション動画は、SNSで大受けして話題を呼んだ。このギミックがきっかけとなり、検査をまったく受ける気がなかったコスタリカの女性の72%が検診を始めているという。あえて「騙される」体験を仕掛けることによって、問題を自分ごとにしてもらったのだ。

また、今回の取り組みは、広告を見た人に「そういえば私もやったほうがいいかも」と思わせる効果があると同時に、情報リテラシー向上にもつながる。大事な情報は日々の忙しさの中で、つい見逃したり忘れたりしてしまいがちだが、この広告動画は、注意書きをしっかり読まずに騙されたお客さんとの対話を通じて、人々に「小さな情報(小さなサイン)」の大切さを説いている。

多くの人々を啓発し、おまけに、このプロモーションによって2万6千食ものフライドチキンの売りあげが出たのだから、KFCとしては一石二鳥といったところだろう。

※1 国立研究開発法人国立がん研究センター – 最新がん統計
【参照サイト】KFC Adwarness
【参照サイト】がん検診受診率(国民生活基礎調査による推計値)
Edited by Kimika

FacebookTwitter