コロナ禍で一気に活用が進んだリモートワーク。皆さんも経験があるだろうか。通勤時間が節約できるなどの利点がある一方、日本労働組合総連合会の調査によれば、仕事とプライベートの時間の区別がつかなくなると回答した人は70%以上に上る。また55%以上の人が、勤務時間外に仕事の連絡を取ったことがあるという(※1)。このようなデータからわかるのは、リモートワークによって、働く人のウェルビーイングに少なからず影響が及んでいるということだ。
これらの課題に対処すべく、コロナ禍のヨーロッパで、世界初となるリモートワークに関する新たな法律を策定したのが、ポルトガル政府だ。政府の発表によると、新しい労働法規則により、勤務時間外に社員に連絡を取った企業には罰則が科せられるようになる。
また、リモートワークで発生した電気代やインターネット利用料などの諸費用は、企業に経費として請求可能だ。加えて、7歳以下の子どもを持つ親は、事前調整することなくリモートワークができるようになるという。さらに、リモートワークで孤独を感じる人のため、2ヶ月に1回は、対面でのミーティングを設定することを企業に求めている。
ポルトガルの労働・社会保障担当大臣によると、こうした法律策定の背景には、国民の労働環境の整備だけでなく、ノマドワーカーを自国へ引き寄せる狙いがあるという。場所を問わずに働くノマドワーカーにとって、リモートワークがしやすい環境は魅力的だ。本法律を通して、海外からこうした人材をポルトガルに呼びこもうとしている。
子どもが急に熱を出しても家で面倒を見ながら仕事ができるなど、リモートワークは仕事とプライベートの兼ね合いがしやすいという利点がある。日本では、働き方改革としてリモートワークの導入を求める声が長年あったが、普及には時間がかかっていた。その点、コロナ禍で一気に活用が進んだことは、筆者としては嬉しく感じるところだ。
しかし同時に、リモートワークの増加によるメンタルヘルスの悪化、長時間労働といった課題も浮き彫りとなった。コロナ後もリモートワークを継続的に活用していくためには、このような課題を一度立ち止まって考え、今から対策を取っていくことが必要だ。その点、ポルトガル政府が策定した法律は、リモートワークの課題を解決する上でとても画期的だ。
この法律の懸念点としては、たとえば時差のある地域でリモートワークをする場合には、どうしても決まった労働時間内に連絡が取れない可能性もあることや、フレックスタイム制を用いる組織では、連絡の取りにくさから、労働時間のフレキシビリティが失われてしまうかもしれない点だ。このような点を十分に検討しながら、各国がそれぞれの状況に合った対策を練っていってほしい。
【参照サイト】日本労働組合総連合会 テレワークに関する調査2020
【参照サイト】euronews.next “Portugal makes it illegal for your boss to text you after work in ‘game changer’ remote work law”
Edited by Motomi Souma