オープンソースで誰もが修理可能。長く使い続けられるミキサー「re:Mix」

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多くのキッチン家電は、製造終了にあわせて、5〜10年で交換部品が製造されなくなる。長く大切に使いたくても、部品が見つからず修理ができなかったり、修理をしたくても購入金額以上の費用を請求されたりして、泣く泣く買い替えを決断する人もいるだろう。

キッチン家電の大半を占める小型家電は、一部リサイクルに回されるものの、30パーセントほどは埋立処分され、処分場のひっ迫の要因となっている(※)

壊れたら捨てるしかない──そんな状況に疑問を持ったドイツ・ベルリンのスタートアップ企業Open Funkが生み出したのが、キッチンミキサー「re:Mix」だ。徹底したサーキュラーデザインを特長とし、自宅で修理してアップグレードしながら、長く使い続けることができるのだ。

ミキサー

Image via Open Funk

通常のミキサーであれば、最初から付属していた容器しか使うことができず、食品を入れるジャー部分は各メーカーによって形状やサイズが異なることがほとんどだ。しかしre:Mixは、よくある家庭で使うガラス瓶すべてに対応している。本体のケースは100%再生プラスチックで、輸送による温室効果ガスの排出を抑えるため自社工場のあるベルリンを拠点に製品の設計、製造、組み立て、修理を行う。さらに製品が不要になった場合は、顧客から適正価格で買い取り、改修したあと再度流通させるシステムも持つ。

首尾一貫したサーキュラーなアイデアは、創業者の一人、ポール・アンカ氏の悔しい原体験から生まれている。ポール氏は購入後数か月で壊れたブレンダーの修理を工場に依頼したが、見積もりだけで50ユーロ(約8,000円)を請求されたことに納得がいかなかった。そこで、SNSを通じて壊れたミキサーを多数集めて分解し、なぜブレンダーが壊れるのかを解明。そこで、部品が低品質の材料で作られていることや、迅速に組み立てるために簡易接着剤でつけられたものも多く、そもそも長く使えない・修理ができない仕様であることがわかった。公式サイトでは、開発への想いを下記のように語っている。

世界中で廃棄される電子廃棄物は、年間5,300万トン、ヨーロッパでは一人当たり年間16キログラムに相当します。世界に出回っている製品の大半は、製品開発のコストを最小限に抑えているために安く販売していますが、距離が遠い地球の裏側で生産されているため、修理サービスは高額になります。要するに、「壊れたらどうなるか」まで考慮されていない製品ばかりです。そこで、人と地球にとって良いものをどう構築できるのかを考え生まれたのがre:Mixです。

ミキサー

Image via Open Funk

re:Mixは、互換性が高く手に入りやすい部品を使うモジュラー設計や、無償で設計図を公開するオープンソースで修理へのアクセスを容易にするなどの特徴を持つ。さらに保存用のガラス瓶は、そのままジャーとして使うこともできる。

「長く使える商品」という視点を加えることで、地球や環境のためだけでなく、「私たちの暮らしやすさ」にも直結させたアイデアだ。次にキッチン家電を買い替えるとき、壊れた先にどんな選択肢が用意されているのかを、チェックしてみてはいかがだろうか。

経済産業省|小型家電リサイクル制度の施行状況について
【参照サイト】Open Funk
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Edited by Erika Tomiyama

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