イマ訪れたい、ヨーロッパの最新サステナブルスポット【欧州通信#11】

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今までヨーロッパは行政およびビジネスの分野で「サステナビリティ」「サーキュラーエコノミー」の実践を目指し、さまざまなユニークな取り組みを生み出してきた。「ハーチ欧州」はそんな欧州の最先端の情報を居住者の視点から発信し、日本で暮らす皆さんとともにこれからのサステナビリティの可能性について模索することを目的として活動する。

ハーチ欧州メンバーによる「欧州通信」では、メンバーが欧州の食やファッション、まちづくりなどのさまざまなテーマについてサステナビリティの視点からお届け。現地で話題になっているトピックや、住んでいるからこそわかる現地のリアルを発信していく。

前回は、「クリスマス」をテーマに、年末のお祝いシーズンに実践されるヨーロッパ各国でのアイデアを紹介した。今回のテーマは「最新のサステナブルスポット」。新型コロナの渡航規制も徐々に緩和されてきたいま、ヨーロッパ旅行や出張を検討されている方もいるのではないだろうか。そんな方々に向けてヨーロッパ4カ国から現地の最新情報をお届けする。

【ドイツ・ベルリン】旧ビール醸造所に、芸術・文化・持続可能性に取り組むスタートアップが集結

Photo by Nils Krueger

ベルリンにある「Malzfabrik(マルツファブリク)」は、100年以上前につくられた醸造所を改修した施設だ。現在、芸術・文化・持続可能性に取り組むスタートアップなど80以上の組織が入居し、歴史と未来を融合させた緑あふれる5万平方メートル(東京ドームとほぼ同じ)の敷地で事業を展開している。

敷地内には文化財として登録されているレンガ造りの建物を改修したオフィス複合施設のほか、遊水可能な池や砂浜、公園や都市農場がある。屋根の4つの窯蓋は同施設のシンボルであるとともに、醸造所として使用されていた建物の歴史を連想させるものだという。

そこで働く人だけでなく訪問者と近隣住民にとっても、同施設は芸術・文化・仕事・レジャー・リラクゼーションの融合の場となっている「マルツファブリク」。定期的にイベントを開催するとともに、ガイドツアーも月に2回開催している。

【オランダ・アムステルダム】美しさと機能性を兼ね備えたサーキュラー施設「DB55」

Photo by Niels Vlug

サステナビリティ×デザインを「生きた事例」として実践している、いまアムステルダムで最もホットなスポットの一つ「DB55」は、異なる機能を一つに融合させる空間「ブレンド会場(Blended Venue)」だ。朝はオフィススペース、夜はイベントスペースと、遊び心たっぷりに変化する。

建築・デザインスタジオのD/DOCKと、円形空間デザイン会社のFurnify(ファーニファイ)が手掛けたこの施設。内部にはバーも併設されており、廃棄されたパンから作られたアップサイクルビールを味わうことができる。DB55で使用されている建材や家具は主にセカンドライフのもので、それぞれにストーリーがあり、ファーニファイの循環型ビジョンを体感することができる。

【フランス・パリ】ローカルの生態系を活かす都市・農業モデルを進める出会いの場所「La Ferme du Rail(ラ・フェルム・デュ・レイル)」

Photo by Erika Tomiyama

パリの19区にあるフランスの地元の生態系を活かす都市・農業モデルを提示するための、地域の出会いの場所である「La Ferme du Rail(ラ・フェルム・デュ・レイル)」。入り口は少しわかりにくいが、狭いトンネルを通ると誰しもに開かれたアグリアーバンスペースが広がる。パリの廃線を利用し、貧困者には宿泊施設、失業者には農業トレーニングを提供している。

地中パーマカルチャー菜園や屋上菜園、ろ過池、天然池、堆肥化プラットフォームなど、生物多様性をテーマに学ぶこともできる。また、ここで栽培されたすべての農作物は、隣にある農場レストラン「Le passage à niveau(踏切の意味)」で使われる。レストランは火曜日から日曜日までのランチとディナーで営業しており、連日地元の人々でにぎわっている。

【イギリス・ロンドン】ソーシャルな展示も必見。「スーパー・ネイチャー」の開発が進む商業施設

Photo by Megumi

かつてロンドンの鉄道を⽀えていた⽯炭集積所をリノベーションした商業施設「Coal Drops Yard(コール・ドロップス・ヤード)」。施設では再生可能エネルギーが使われ、近くを流れる運河をはじめとする近隣環境の⽣物多様性を損ねない設計がされている。

また、施設の中には英国初のLGBTQに関する美術館「Queer Britain(クィア・ブリテン)」も⼊居しており、広場にはサステナビリティ、生物多様性、サーキュラー建築、ジェンダーなど環境から社会まで多岐に渡るテーマの展示が季節によって展開されている。

多様な人間と生きものたちが快適に暮らせるようにするには、どのような空間づくりをすれば良いのか?模索が続くロンドンの一角をぜひ訪れてみてほしい。

編集後記

いかがだっただろうか。他の地域に比べて「サステナビリティ」や「サーキュラーエコノミー」などのテーマ自体ははやく提唱されるようになったヨーロッパだが、それらをシステムやデザイン実装していくことについては、まだまだ模索が続いている。それぞれの地域の人々が集う場所に実際身をおいてみると、日本やその他の地域で展開するためのヒントが得られるかもしれない。ヨーロッパに渡航される際は、ぜひこれらのスポットを訪問してみてほしい。

【参照サイト】Malzfabrik
【参照サイト】DB55
【参照サイト】Furnify
【参照サイト】La Ferme du Rail
【参照サイト】SUPER NATURE – ENABLING CIRCULAR DESIGN

Written by Ryoko Kruger, Ryuichiro Nishizaki, Erika Tomiyama, Megumi
Presented by ハーチ欧州

ハーチ欧州とは?

ハーチ欧州は、2021年に設立された欧州在住メンバーによる事業組織。イギリス・ロンドン、フランス・パリ、オランダ・アムステルダム、ドイツ・ハイデルベルク、オーストリア・ウィーンを主な拠点としています。

ハーチ欧州では、欧州の最先端の情報を居住者の視点から発信し、これからのサステナビリティの可能性について模索することを目的としています。また同時に日本の知見を欧州へ発信し、サステナビリティの文脈で、欧州と日本をつなぐ役割を果たしていきます。

事業内容・詳細はこちら:https://harch.jp/company/harch-europe
お問い合わせはこちら:https://harch.jp/contact

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