マッチングアプリに疲れたら。ポラロイドで偶然の出会いを提供する、NYの「愛の壁」

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ユーザーの好みや選択の傾向をもとに個々人へのおすすめを表示する機能は、今や当たり前のものとなった。本を探せば関連するテーマのものをいくつか教えてくれたり、歯みがき粉を探せば歯ブラシのストックは残っているかとリマインドしてくれたりと、便利なものだ。

しかしその分、自分の興味の範囲外、想定外のものと偶然に出会う機会は少しずつ減ってきている。

人との出会いもそうだ。近年、マッチングアプリの台頭で、気軽に色々な人と出会えるようになった。最短距離で自分好みの人と出会うには適したツールだが(だからこそ、と言うべきか)、ここにも「偶然」の要素は多くない。これまでにマッチした人の傾向からおすすめの相手が表示されるようになっていたり、外見、年齢、身長、年収など自分好みのフィルターで相手候補をソートできる仕組みになっていたりするためだ。

自分に合う相手を見定めてスワイプし続ける行為に疲れてしまった。スペックで相手を判断し、人との出会いを「効率」で捉えている自分に嫌気がさした。人との縁をよくわからないアルゴリズムに決められることに違和感を抱いた──そんな話も聞く。

2024年夏、ブルックリンのマッカレンパークでは、こうしたマッチングアプリに疲れた人々に向けて「取引的ではない」出会いを提供するオフラインイベントを開催した。それが、デートアプリを提供するPique Datingによる「Love Wall」というポップアップである。

Love Wallでは、写真家が通行人の同意を得てポラロイド写真を撮影し、その場で記入したプロフィール用紙とともに壁に掲示。壁を見て興味のある人を見つけた人が連絡先を残すとPiqueが連絡を取ってくれる。このイベントはこの夏、週末に複数回実施されたという。

いつもは写真なんて撮らないけれど、「今日は気分も良いし、まあ良いかな」と気まぐれに撮影を許可してみた。身長的に見やすい場所に貼られていた人のプロフィールをなんとなく読んでみた。目的地へ向かう途中、少し時間に余裕があったので、時間つぶしに壁を覗いてみた──ここでは、そんな「たまたま」が誰かとの縁を結ぶ。

「人と出会うなら、最短距離で」そんなプレッシャーを感じて息苦しくなっている人がいるのなら、一度スマホを下ろしたって良い。確約のない「たまたま」に身を委ねても良い。人との出会い方に最適解はないのだから。

【参照サイト】the.pique.app(Instagram)
【参照サイト】People are sick of swiping. So dating app Pique put up a ‘singles wall’ in Brooklyn
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