ガラクタの修理が、心の修繕にもつながる?米国のクリエイティブ・ジャンク・セラピーとは

Browse By

ものが少なかった時代、人々は今よりずっとものを大切にしていた。破れた服に継ぎを当て、壊れた道具は修理して使い続けた。暮らしの中には常に、「もったいない精神」が息づいていたのだろう。

ところが今、ファストファッションや使い捨て文化が加速し、大量消費と大量廃棄があふれる社会になってしまった。そんな中、限りある資源をどう使うかといった観点はもちろん、自分自身の心と向き合うことにもつながるという意味で、「再利用」や「手作り」の価値が改めて見直され始めている。

そうした時代の潮流に寄り添うようにアメリカ・フロリダ州ブランドンで誕生したのが、廃材や不要品に新たな命を吹き込み、心の回復を支援するCreative Junk Therapy(クリエイティブ・ジャンク・セラピー)という団体だ。

この団体の使命は、再利用を通じて創造性と環境意識、そして地域コミュニティのつながりを育むこと。ある人にとってのごみは別の人にとっての宝物になる、という考え方を体現しようと活動を行っており、モットーは「Imperfection is our Specialty!(不完全さこそ、私たちの得意分野!)」だ。

団体の施設内には、リサイクル素材を使って創作ができる「メイクン・テイク・ルーム(作って持ち帰れる部屋)」がある。そこには、ボタン、リボン、木片、ガラスのかけら、古布など、本来なら捨てられていたであろう素材が所狭しと並ぶ。どれも、地元の企業や住民から回収した素材だ。

アーティストや学生、ものづくりを楽しみたい人々がこれらの素材を自由に使い、アクセサリー、小物、インテリア、立体作品など、思い思いの創作を楽しんでいるという。

こうした創作のプロセスや手を動かすことは、心の整理やメンタルケアにつながる。無価値だったものに自分の手で新しい命を吹き込むことで、自分自身の存在価値にも気づくことができるのだという。

Creative Junk Therapyの活動は、個人の癒やしにとどまらず、世代を超えた交流の場としても広がっている。今後は、アップサイクル素材を使ったパブリック・アートの展示や、リユースをテーマにしたイベントの開催も予定しているという。

こうした動きは国内にも見られる。東京・新御徒町の「Rinnebar」は、寄付された廃材や不用品を使って、誰もが気軽に創作活動を行える場所だ。この場所が掲げる、簡単なアップサイクルを通じて「創造性への自信(クリエイティブ・コンフィデンス)」を育むというビジョンは、Creative Junk Therapyがもたらすセラピー効果とも通ずるところがある。

どんな人の身の回りにも、もういらないと思っていたものはあるだろう。それを誰かと共有し、新たな価値を見いだすことで癒される──そんな体験が暮らしの中に増えていけば、心も社会も少しずつ変わっていくのかもしれない。

※ Rinnebarは2025年7月末日をもって新御徒町店の営業を終了予定。今後の展開については公式ウェブサイトをご確認ください。

【参照サイト】Creative Junk Therapy
【参照サイト】Creative Junk Therapy turns trash into treasure for creatives and makers
【関連記事】【2023年グッドアイデア】ごみを宝物に変える、アップサイクル事例7選
【関連記事】クリエイティビティを取り戻す。廃材のアップサイクルDIYバー「Rinnebar」の哲学

Edited by Motomi Souma

Featured image created with Midjourney (AI)

ドキュメンタリー映画『リペアカフェ』上映プログラム実施中!

IDEAS FOR GOODでは、モノを大切に使い続ける「修理」という行為に焦点を当てたドキュメンタリー映画『リペアカフェ』の上映プログラムを提供しています。使い捨て文化が広がる現代において、「直して使う」という選択肢を見つめ直すことは、私たちの価値観や行動を変える第一歩になるかもしれません。本作品は、壊れたモノを修理しながら、人と人がつながり、持続可能な社会を実現するためのヒントを探る内容となっています。

本ドキュメンタリーは、社内のサステナビリティ意識を高めたい企業や、コミュニケーション活性化を図りたい組織、地域住民の学びの場を提供したい自治体など、さまざまな場面で上映いただけます。修理を通じて人と社会と地球をつなぎ、新たな気づきを得るきっかけづくりにぜひご活用ください。上映に関する詳細やお問い合わせは、こちらの特設ページから!

FacebookX