小さく丁寧な循環で、あったかい地域を。服がめぐり、人がつながる「Community Loops」

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Sponsored by Community Loops

街を歩いていると、アパレル店や大型商業施設などで衣類の回収ボックスを見かけることが増えてきた。日本だけでも、衣類の廃棄量は年間約50万トン──その廃棄の多さが課題視され、衣類を循環させようという機運が社会で高まっていることの表れだろう。

身近な場所にそうした回収拠点があると、便利なことには違いない。しかし同時に、こんな疑問を持ったことはないだろうか。そこに入れた服は、結局どこへ行くのだろう?

回収ボックスに入れられた服は、そのまま誰かの元に渡ったりリサイクルされたりと、何らかの形で再利用される“らしい”。しかし、ボックスに手放した瞬間、自分と服との関係性はそこで途切れてしまう。多くの場合、その服がその後どうなったのか、誰に使われることになったのかを持ち主が知るすべはないのだ。

こうした私たちの「モノとの関わり方」を、根本から変えていけないか──そんな想いから生まれたのが、合同会社CYKLUSとIDEAS FOR GOODを運営するハーチ株式会社が共同で実施する「Community Loops(コミュニティループス)」だ。

大阪でのイベントの様子

環境省のモデル実証事業に採択され、2025年9月から12月にかけて横浜や東京、大阪などで実施された本事業。持ち主のストーリーが見える衣類回収システムの実証実験をはじめ、地域拠点での洋服交換会やリペアカフェ、アップサイクルワークショップなどを実施し、地域で人と人とのつながりを作り、モノを長く大切にする文化を育むことを試みた。

一連の取り組みを通して、見えたものは何だったのか。本記事では、事業の一部を体験しながら、CYKLUS代表の平田健夫さんに、実証事業の背景にあった想いや実証事業の様子、実現したい世界観について聞いた。

話者プロフィール:平田建夫(ひらた・たけお)

平田建夫さん大学卒業後、アパレルおよびアウトドア企業4社にて、営業、製品企画、マーケティング、循環型ビジネスの構築に従事。2024年に合同会社サイクラスを設立し、アパレル企業へのサーキュラービジネス支援や地域循環型コミュニティの構築に携わり、リペアカルチャーの普及や循環型社会の実現に向けた活動を展開している。自然の中で過ごす時間を大切にし、鎌倉の畑で野菜を育てている。

循環の「量」に感じる違和感。求めたのは、小さく丁寧な手触り

使用済み衣類の回収──そう聞いて多くの人がイメージするのは、街角やアパレル店に置かれた物理的な回収ボックスかもしれない。一方でCommunity Loopsは、人と人とが出会い、対話し、実際に自分の手で服を直したり選んだりと、リアルな関わりと手触り感に溢れた事業だ。

そんな事業構想の根底にあったのは、現在の循環のあり方に対する平田さんの違和感だったという。

「最近、本当に様々な場所で衣類の回収ボックスが設置されるようになってきました。それ自体は、とても良いことだと思っています。一方でモヤモヤしていたのが、多くの場合、そこで回収されたものがその後どうなっているのかを知ることができないという点です。

確かに、回収ボックスに入れられた衣類は何らかの形で資源として循環していきますし、捨てることに比べると罪悪感はいくらか軽減されるかもしれません。

しかし、着なくなった服をパッと手放し、後のことはわからない──これでは、結局のところ行為として服を捨てているのとあまり変わりませんし、私たちの“モノとの関わり方”も、リニア経済のそれと同じなのではないかと思っているのです」

平田健夫さん

平田健夫さん

本当に大事なのは、資源を量としてどれだけ循環させられるかではなく、循環の手前にある「私たちのモノとの関わり方」をもっと人間的で豊かなものにしていくことではないか。そんな想いが、事業の構想につながっていった。

「モノに人間味を感じられれば、もっと愛着を持って扱えるのではないかと思っていて。全体としての量は少なくても、小さくて丁寧な循環を地域で作ること。そこから、人々の意識は少しずつ変わっていくと思うのです」

タグをかざせば思い出が蘇る。服の「物語」までめぐらす回収ボックス

念願の旅先で手に入れた。近しい人から譲り受けて大切に着ていた。大事な人と会うときに何度も着た──服には本来、そうした思い出やストーリーが乗っているはずだ。そんな「愛着」や「情緒」も、服と一緒に循環させてみたらどうだろうか。そうすればきっと、服の循環を通して人がつながり、本当の意味でモノを大切にする心を育むことができるのではないか。

そう考えて作ったひとつの仕掛けが、“服の物語を紡ぐ”衣類回収ボックスだ。

衣類回収ボックス

この回収ボックスに入れられた服には、NFC(近距離無線通信技術)チップの入ったタグがついている。これは、回収ボックスに服を入れる際に持ち主がつけたものだ。受け取った人がそのタグをスマートフォンで読み込むと、投函された場所や日時に加え、服との思い出など、持ち主が入力したその服の「ストーリー」を見ることができるのだ。

こうした仕掛けがあることで、回収ボックスから出てきた服が人間的な思い出を持つ存在として語り出し、次の持ち主へと服の物語がつながる。さらに、データとして保管されることで、回収後の透明性も確保できる。

実証事業中には、この回収ボックスを大学や地域のコミュニティスペースに設置し、各都市で衣類の回収を行った。

洋服のタグとスマートフォン

回収ボックスに入れられた服を選別するのは、就労継続支援B型事業所エールヨコハマで働く、障害のある人たちや一般就労が困難な人たちだ。「そのままリユースできる衣類」「リペアをすれば着られる衣類」「素材として活用できる衣服」など、状態に応じて選別している。

福祉との連携には、障害のある息子さんを持つ平田さん自身の強い想いがある。

「以前から、障害のある人や生きることに難しさを感じている人たちにこそ、社会にとって意味のあることに関わって、活躍して欲しいと思っていて。福祉事業所が『循環のハブ』みたいになっていくと良いなと考えているんです。選別をお願いしている事業所の皆さんは、すごくイキイキとお仕事に取り組んでくれていますよ。そうした様子を見ることができて、すごく嬉しく思っています」

これまでの社会で光が当たりにくかった人たちを、循環に巻き込むことで輝かせる。今後は連携する福祉事業所を増やし、それぞれの地域での循環を実現していきたいという。

衣類につけるタグ

タグは不要になった布やカーテンを使い、就労継続支援B型事業所でひとつひとつ手作りしている。

壊れ方は一つじゃない。クリエイティブに直すリペアカフェ

これまでの社会で、十分に光が当たって来なかった──それは、リペアラー(修理をする人)も同じだ。

Community Loopsでは、地域の拠点や大学にプロのリペアラーが出向き、参加者が持ち寄った服を実際にリペアしたり、リペアの方法を教えたりといった「リペアカフェ」も開催。参加者は目の前で美しく蘇る服を見て感動したり、新たな修理方法を教わってリペアに興味を持ったり。修理のプロが目の前にいるからこその体験を得ることができた。

「リペアラーって本当にすごいんですよ。そもそもリペアが必要なものは、ひとつとして同じ壊れ方をしていません。それらをいかに魅力的に蘇らせるかを考え、ひとつひとつ形にしていけるか。そこがリペアラーの腕の見せ所です。すごくクリエイティブな作業ですし、職人技とも言えます」

平田さんは、「そんなリペアラーの存在を、事業を通してもっと社会に伝えていきたい」と話す。「直す人」と、「直してもらう人」のつながりを作ることで、『作る人』と同じくらい、『直す人』にも光が当たる。それが、Community Loopsの目指す社会だ。

リペアラーと交流する参加者

参加者とリペアラーが交流する様子。どのように修理したら良いのか、丁寧に教えてくれる。

一部のリペアイベントでは、オランダで広がるリペア文化を題材にしたドキュメンタリー映画『リペアカフェ』の上映会も行った。映画を通して現地のリペアカフェの雰囲気を感じ取った後に、実際のリペアカフェを体験してみる。その流れがあったからこそ、モノを直すだけではないリペアの情緒的な価値を伝えることができたという。

映画『リペアカフェ』上映会の様子

アンチテーゼも歓迎。学生と大人が本音で描く“生きた”循環教育

平田さんが福祉と並んでCommunity Loopsで大事にしているのが、教育機関を巻き込み、次世代がモノとの関わり方を問い直すきっかけを与えることだという。

特に「大学」という場所は、ひとつの大きなコミュニティを持つ地域の拠点でもある。そこでCommunity Loopsでは、関東・関西の複数の大学と連携し、校内での衣類回収やアップサイクルワークショップなどを複数開催。大学コミュニティ内循環の構築とリペアカルチャーの醸成を目指した。

例えば、関西学院大学では、自分で修理したい服を持ち込むセルフリペアワークショップや、デニムの端切れや古着を再利用したアップサイクルワークショップ、地域の藍染職人によるシミなどで汚れた衣類を染め直した藍染の衣類の展示などを開催。洋服の延命手法としてのリペアにも様々な視点や手法があることを多面的に学べる機会を提供した。また、国際基督教大学ではSDGs推進室と連携し、衣類の回収やリペアカフェなどを行った。

大学でのイベントの様子

国際基督教大学でのイベントの様子。

リペアをする学生

藍染製品を見る男性たち

関西学院大学でのイベントの様子。

また、横浜の神奈川大学みなとみらいキャンパスでは、衣類の回収と合わせ、経営学部の一部の学生を対象に連続ワークショップを開催。Community Loopsの事業を起点に、若い世代をより衣類の循環に巻き込む方法を学生自身が考案した。

同大学の学生たちは、必ずしもCommunity Loopsの事業のあり方全てに共感を覚えたわけではなかったようだ。

「知らない人のストーリーよりも、その衣類のもっと詳しい情報が知りたい」「回収ボックスに入れられた服が時代に合わないデザインであれば、再利用しても結局着られることはないのでは?」

こうした疑問を起点に、服そのものの情報をDNAのようにウェブ上に記録していくことをコンセプトとしたブランドや、Community Loopsで回収したリユース服をトレンドに合わせたデザインにリメイクして販売するブランドなど、若い視点を盛り込んだ新たなアイデアがいくつも生まれていた。

「若い世代の捉え方や感じ方は、自分が予想していたものとは全く異なる場合もあり、それがとても良い発見となりました。大学によって事業の受け取られ方が全く異なっていた点も面白く、どの大学との協働も有意義な取り組みになったと思います」

提示されたアイデアに乗って、一緒に走ってみる。提示されたアイデアに納得できないのであれば、何が問題なのかを考え、「じゃあどうすればいい?」をクリエイティブに考えてみる。Community Loopsが示したのは、そんな“生きた”循環教育のあり方ではないだろうか。

神奈川大学での中間発表の様子

神奈川大学での中間発表の様子

自らリメイクした服をサンプルとして見せながら、プレゼンテーションをする学生チーム。

自らリメイクした服をサンプルとして見せながら、プレゼンテーションをする学生チーム。

服から始まる、やさしい対話。地域を温める「洋服交換会」の風景

想いを紡ぐ回収ボックスでの衣類回収、それらを用いたアップサイクルやリペアカフェ──形は多様だが、一連の取り組みに一貫しているのは、服と情緒的に関わるきっかけを作り、その過程で人と人とも繋げていくこと。そして、それらをゆっくりと丁寧に行っていくからこその、あたたかさや手触り感だ。

筆者がそれを最も肌で感じることができたのが、実証期間中の最後のイベントとして開催された、12月3日の洋服交換会だった。

会場となったのは、横浜・関内の地域拠点である「benten103」。普段から市民活動に使えるコミュニティスペースとして地域に開かれており、Community Loopsでも、キックオフイベントの開催に始まり、衣類回収やリペアカフェの開催など、ひとつの大事な拠点としてきた。

横浜・関内(benten103)でのキックオフイベントの様子。

横浜・関内(benten103)でのキックオフイベントの様子。『地域をまるごとクローゼットにする』をコンセプトに、不要になった服を持ち寄る洋服交換会が行われた。

Community Loopsの洋服交換会では、自分が持ち寄った服の数だけチケットをもらい、それを使って他の人が持ってきた服を自由にもらうことができる。その日は10名程が交換会に集い、それぞれに自分や家族の服や小物を持ち寄った。綺麗にたたんで机やラックに綺麗に広げてみると、ちょっとしたアパレル店の一角のようだ。

並べられた洋服

お店と異なるのは、それぞれの服に持ち主の手書きメッセージカードが添えられていること。「ダンスをやっていた時に、衣装としてよく着ていました」「誰か、このかわい子ちゃんをヨロシクです!!」──そんな個性とあたたかみの溢れるメッセージからは、服のストーリーや持ち主の想いが見え、服を手に取る動作も自然と丁寧になる。

メッセージカードが付けられた洋服
洋服を持つ女性
「これ、かわいいよね」「こっちなんかもどう?」「(合わせてみたら)いいじゃん!似合う似合う」一緒に服を見ていると、横にいる人と自然と会話が生まれ、場が和んでいく。

多くの場合、初めて出会った人と話すときはまず自己紹介をするものだろう。どこの誰で、今日はどうしてここにいて……。そんな自己紹介や”お決まり”の手順を経なくても、目の前に思い出の乗った服があるだけで、人と人とはゆるやかに繋がることができるのだ。

洋服を囲む参加者

洋服を選ぶ女性

全員がお気に入りの服を手にしたところで、最後は受け取った服の紹介と交換会の感想が共有された。

「これはアメリカ旅行で買ったもので、ずっと着られていなかったのになんだか手放せなかったもので。だから、今日のようなあたたかい場に持ってきて手放すことができて良かった」

「母が亡くなったので遺品を整理していたら、編み物がいっぱい出てきたんです。売られていたものではないから、リユース品として販売することはできないけれど、どうしても手放せなくって。だから、今日誰かにもらってもらえて、すごくうれしかったです」

洋服を手に持つ女性

人生のいっときを共にした服には、その人の人生の物語が乗っている。それを交換するということは、その人と自分の人生を共有することでもある。そうして手にした服は、自然と大事にしたくなるものだ。

そして、昔の出来事を久しぶりに話したり、今は亡き人を懐かしんだりと、大事な服をきっかけに引き出された言葉や想いは、心の深い部分で人と人とを繋げていく。そんな繋がりに溢れた地域は、きっと誰にとっても暮らしやすく、安心できる場所であるはずだ。

その日の洋服交換会に現れていたのは、まさにCommunity Loopsが作ろうとしている豊かな地域や社会の片鱗だった。回収ボックスを衣類をただ手放す場ではなく、地域の関係を育てる入口にする。関わる人たちの心をじんわりと温めながら、地域で小さく丁寧な循環を確実に積み重ね、資源も人も活かしていく。

その先には、数値としての「循環の量」では測りきれない、本当の意味でモノを大切にできる、生きていて心地よい社会が、きっと待っている。そんな希望を見せてくれたこの事業のこれからが、心から楽しみだ。

【参照サイト】Community Loops
【参照サイト】服がめぐり、人がつながる、まちのループ。環境省採択事業「Community Loops」始動 〜横浜・東京・大阪などで衣類回収と“修理する文化”を推進し、地域内資源循環モデルを構築〜
【参照サイト】CYKLUS
【参照サイト】環境省採択プロジェクト「Community Loops」に本学が協力します

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