なぜメディアとして「問い」にこだわる?誰もが乗れる“船”としてのジャーナリズムの輪郭

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本コラムは、2025年12月11日にIDEAS FOR GOODのニュースレター(毎週月曜・木曜配信)で配信されました。ニュースレター(無料)にご登録いただくと、最新のコラムや特集記事をいち早くご覧いただけます。

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2025年の秋、IDEAS FOR GOODは、メディアの新たな形を模索するためにクラウドファンディングを実施した。その中で掲げた方向性のひとつが、「解決策」から「問い」のジャーナリズムへの変化だ。

社会が混沌とするなか、シンプルな解決策を見つけることがますます難しくなる今。だからこそ、解決策の手前にある「問いを立てる」という作業をもっと丁寧に、そして読者と共に行っていきたいという意図が、そこにはあった。

ただし、具体的にどう進めていくのか?実のところ、編集部の中でもそれはまだ模索中。しかし、プロジェクト終了後にリターンとして開催してきたイベントを通して、まさに読者と共に、少しずつその輪郭が描けてきている。

その試みの一つが、1月に開催した「問いのワークショップ」だ。今日は様子を紹介しながら、見え始めた「問いのジャーナリズム」の可能性について綴ってみたいと。

ワークショップでは、参加者それぞれが日常で抱く問いや、はっきりとした言葉になりきらないモヤモヤを出し合い、その中からグループの関心が集まった一つの問いを深掘りしていった。

まずは、それぞれが黙々と日常の風景を振り返り、問いやモヤモヤを付箋に書き出していく。

なぜ、週5日・8時間勤務が当然とされているのか?
なぜ、街にはこれほどまでに広告が溢れているのか?
なぜ、忙しくなるほどごみが増えてしまうのか?

並べられた問いは、どれも個人の生活実感を伴った、手触りのあるものばかり。まずはそれらを一人ひとりグループで共有。その後は、グループごとに一つの問いを選んだ。

筆者がファシリテーションを務めたグループでピックアップされたのは、ある参加者の日常のひとコマでふと感じたこんな疑問だった。

なぜ、マンションでドアの外をのぞいて、人がいないかを確認してからエレベーターに向かってしまうのか?

この疑問を、あらかじめ用意したガイドに沿って深掘りしていく。それはどんな時に感じるのか。どのような仕組みがそうさせているのか。その構造を作っている、私たちの内なる当たり前は何なのか……。

上記のマンションをめぐる疑問に対しては、こんな議論が行われた。

都市では住居が隣と隔絶されていて、近所の人とつながるきっかけがないよね
きっかけを作ろうにも、自分から話しかけて不審だと思われたり、拒絶されたりするのが怖いのかもしれない
つまり、『話しかけたら受け入れてもらえる』という安心感が先に提示されていないと、私たちは動けないということか
でも、そもそも日常のコミュニケーションに『成功』や『失敗』なんてあるんだろうか?

最後は、グループで時間内で最終的に行き着いたひとつの問いを全体に共有し、ワークを終了した。

ワークショップの様子

問いのワークショップの様子

このワークを終えて再認識したのは、他者の視点を交えて問いを変容させていく「プロセス」そのものに、大きな価値があるということだった。

問いを深めていく作業は、玉ねぎの皮を一枚ずつ剥いていくようでもあり、粘土をこねたり伸ばしたりして、カタチを変容させていくようでもあった。

そうした作業を経て最終的に行き着いた問いは、もちろんどれもユニークなものだった。しかしむしろ、その問いに行き着くまでの議論の経緯を眺めることこそが、物事の因果や関係性を新たな視点で捉えるヒントになっていた。

そして、こうしたプロセスが実現できるのは、問いがアイデアや答えと異なり、まだ柔軟で不安定な性質を持っているものだからこそ。それは、多様な視点に立つ人たちが共に乗り込むことができる“船”のようでもある。

問いという名の船に乗って、編集部だけでは到達できない場所へ、読者と共に辿り着く。見え始めたばかりのそんな「問いのジャーナリズム」の輪郭を、これからもゆっくりと、育てていきたい。

※ ※ この問いのワークショップで出た問いの一部は、ポッドキャストでも議論のネタとして取り上げています。答えを出さずに問いを深掘りするトークをぜひお聞きください。


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