性の多様性
性の多様性とは?(What is Gender /Sexual diversity)
性の多様性とは、従来の男性か女性かの二者択一で性別を規定したり、異性愛のみが正しいかのような見方をするのではなく「多様なセクシャリティのあり方を考えていこう」という概念のことです。
ここでは、多様な性の呼び方やその違い、定義、性的マイノリティの人々が直面する課題などを解説していきます。
LGBTQ+とは?
セクシャルマイノリティ(性的少数者)といったとき、多くの人が思い浮かべるのは「LGBT」という単語ではないでしょうか。
- L:Lesbian(レズビアン)。女性の同性愛者
- G:Gay(ゲイ)。男性の同性愛者
- B:Bisexual(バイセクシャル)。男性、女性どちらも恋愛対象となる人
- T:Transgender(トランスジェンダー)。出生時に割り当てられた性と、自身が認識する性が一致しない・違和感を持ち続ける人
これら4つのセクシャリティの頭文字をとったものです。
LGBTにQを足した「LGBTQ」や、「LGBTQ+」という言い方も存在します。
- Questioning(クエスチョニング):自分の性を定義しない、模索中の人
- Queer(クィア):既存の性別の枠組みにあてはまらない自己認識を持つ人
さまざまな多様性が認められる社会になっていくためには、LGBTという言葉の認知度が高まるのは好ましいことだと言えるでしょう。しかし、「LGBT」だけにスポットが当たり、そこに当てはまらないセクシャルマイノリティの存在が無視されてしまうという危険性もあります。
近年知られる、多様なセクシャリティ
例えば、多様なセクシャリティを表す以下のような言葉も存在します。
- Agender(アジェンダー):「ジェンダーがない」自己認識を持つ人
- Asexual(アセクシャル):性的欲求を持たない、無性愛者
- Bigender(バイジェンダー):男性と女性、両性の性自認を持つ人
- Two-spirit(トゥースピリット):複数の性役割を生きる人
これらは無数に存在するセクシャリティのうち、ほんの一例でしかありません。「男性の体と男性の心を持ち、男性を愛する」という人もいれば「女性の体で男性の心を持ち、男性を愛する」人もいます。あるいは「性自認ははっきりしていないが、なんとなく自分は女性でないと感じている」「性別を決めたくない」という人もいます。いち個人のセクシャリティが時間とともに変化するケースも少なくありません。過去のLGBTQIAの人が自ら定義した、ジェンダー用語集「Gender Nation Glossary」という記事でもご紹介したように、自身のセクシャリティをどう認識しているかについては、個々人によって大きな差異があり一様に定義することはできないのです。
「この人はレズビアン、この人はトランスジェンダー」というふうに何かのカテゴリに当てはめて判断するのではなく、それぞれの多様な性自認・性的指向を認める必要性が叫ばれています。
SOGI(ソジ)とは?
そんな中、新たに注目を集めるのが「SOGI(Sexual Orientation, Gender Identity)」という概念です。
- 性自認(ジェンダー・アイデンティティ)=自分の性をどのように認識しているか
- 性的指向(セクシャル・オリエンテーション)=どの性を好きになるか
の2つを総称したもので、「すべての人がもつ属性」のことを表します。(※「しこう」という言葉の響きから趣味嗜好の「嗜好」と勘違いされることがあるが、正しくは「指向」)
このように「SOGI」は、マイノリティ・マジョリティ関係なく「誰もがもつ属性」としてセクシャリティを捉えようとする概念です。LGBTなどのセクシャルマイノリティを指す単語が認知度を挙げれば、多様な性を認める動きが広がる可能性は大いにあります。
しかし、あえて特定のセクシャリティばかりを名指しすることで無意識のうちに、性を「特定の少数派の人が向き合うべきもの」に還元してしまっている可能性もあるのです。SOGIという言葉には、「皆がもつ属性」としてセクシャリティを捉えることで「性の概念はひとりひとりが持つべきだ」という意識に変えていこうという想いが反映されているのです。
性の多様性に関する問題点とは? 数字と事実、原因、解決策などの情報をまとめました。
性の多様性に関する事実(Facts & Figures)
性の多様性に関する日本と世界の事実をまとめています。
- 日本で8.9%の人がLGBT層に該当する(電通ダイバーシティ・ラボ)
- LGBT当事者は家族や職場の人々にカミングアウトすることに抵抗がある(電通ダイバーシティ・ラボ)
- ジェンダーの多様性に関して企業のサポートがあると感じている当事者は約15%(電通ダイバーシティ・ラボ)
- G7(先進7ヶ国)のうち、同性婚が認められていない国は日本のみ
- 2020年よりお茶の水女子大学でトランスジェンダーの受験者を受け入れ(お茶の水女子大学)
- 2015年、東京都渋谷区と世田谷区が同性パートナーを認める制度を開始(渋谷区,世田谷区)
- 2012年よりLGBTの祭典「東京レインボープライド」が東京・代々木公園で毎年開催される(東京レインボープライド)
- アメリカでは人口(18歳以上)の4.5%がLGBT層に該当する(GALLUP)
- 2015年、アイルランドで国民投票ではじめて同性婚合法化(Gardian)
- イラン、サウジアラビア、スーダンなど一部の中東地域では同性愛者を死刑に科す国もある
日本国内のLGBT層の割合(8.9%)は、左利き・AB型の割合とほぼ同じであり、LGBT層の人々は身近な存在であることがわかります。しかし、セクシャルマイノリティに対してのサポートは十分に行き届いていない状態です。
性の多様性が台頭した理由(Causes)
LGBTの祭典「東京レインボープライド」を筆頭に、日本国内でも関連するイベントが注目されるなど、認知が広がりつつあります。このようなムーブメントが後押しとなり、当事者も少しずつカミングアウトしやすい状況へと変化しています。
近年では、人と違うのは「特殊なこと」ではなく「ごく普通のこと」であるというメッセージを訴えるようなセクシャルマイノリティを題材にしたTVドラマや映画が公開されることも増えてきました。
一方で、女性用の服を着ている男性芸能人やゲイを公言するタレントを「オネエ」「オカマ」などの分かりやすい言葉でひとくくりにし、もてはやすような風潮も未だに存在します。「話題性があるから」と、セクシャルマイノリティを安易にテーマに取り上げたり言及したりすることで、誰かを傷つけているかもしれないという視点も忘れてはいけません。
性の多様性に関する諸問題(Impacts)
セクシャルマイノリティーの当事者が直面する問題として、下記が挙げられます。
- カミングアウトによる偏見、差別
- 就職活動における不利益
- 男女で区分された施設を利用する際の心理的負担
- 異性婚と同等の権利が得られない
とりわけ学校や職場において、当事者が「『見た目の性別』にそぐわない」ような言動をとったり、自身のセクシャリティについてカミングアウトしたりすることで、周りから偏見や差別を受けるケースがあります。それらを見越し、自身の性について家族や友人にも話せずにいるという当事者も多く存在します。
世界的にセクシャルマイノリティについての認知は向上しているものの、トイレや学生寮、高齢者施設など公共施設の利用は男女で区分されることが大半のため、それらの施設を使用する際に当事者が心理的負担を抱えてしまう場合があります。
就職活動においても、男女分かりやすいようなスーツの着用義務やセクシャルマイノリティでないことが前提であるような面接時の質問などから、自分らしく働くことが難しいのではないかと感じてしまうケースもあります。
また、同性カップルは、制度の面でも以下のような不利益を被ることがあります。
- 多くの自治体で、同性カップルは公営住宅への入居が認められない(同居親族の存在を入居要件としているため)
- 同性パートナーの相続人になれない
- 同性パートナーが医療現場に運び込まれた場合、病状説明や面会が認められない
渋谷区や世田谷区がパートナーシップ制度を導入するなど、自治体レベルでは少しずつ同性カップルの権利を認める動きが見られ始めましたが、全国的に改善されるには至っていません。日本では、異性同士が結婚した場合、所得が少ない配偶者に所得控除を行う配偶者控除が受けられる法制度があったり、結婚しているというだけで周囲からの社会的な評価が高まったりすることがあります。現状、同性同士の結婚が認められていない同性カップルは、制度の面でも不利におかれることになっているのです。
異性愛・同性愛に限らず、愛には様々な形があります。そもそも「恋愛感情を抱かない」という人や「恋愛感情はあっても、性行為は必要ない」と思う人もいますし、異性同士でも「籍を入れたくない」というカップルもいます。そろそろ、「婚姻しなければ与えられない権利」が本当に必要なのかについても、議論しなおすべきなのかもしれません。
性の多様性に関する国際団体(Organization)
性の多様性に関する国際的な団体としては下記が挙げられます。
性の多様性を解決するアイデアたち(Ideas for Good)
IDEAS FOR GOODでは、最先端のテクノロジーやユニークなデザインで性の多様性に関する問題解決に取り組むプロジェクトを紹介しています。