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【2019年最新版】介護分野に取り組む国・企業・事例まとめ

介護問題
日本の人口に占める65歳以上の高齢者の割合は約27%、75歳以上は約14%以上となっている。国内では現在488万人が介護サービスを利用しており、その市場規模は11兆円に達している。今後も高齢者の人口は増加が進み、2025年には75歳以上が人口の4分の1を占めると予測されているなど、介護分野が社会で果たす役割は大きくなる見込みだ。

市場の拡大と期待される役割の増加に伴って、介護の課題を解決したり、より質の高い介護を提供する新しい取り組みが世界中で見られている。本記事では、そのような最先端の取り組みを、「社会的孤立の予防」「テクノロジー活用」「モビリティ(移動)の確保」の3つの視点から紹介する。

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世界の介護サービス事例

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社会的孤立の予防

01. フランスにある認知症患者のための「村」

認知症患者のための「村」フランスで誕生


人口の高齢化に伴い、認知症患者の増加は大きな課題になっており、入居施設の需要も高まっている。施設に入居すると、敷地外に出られないなど移動や生活面で様々な制約が設けられるが、デンマークの建築グループが設計したこの「村」では、商店や図書館などが設置された村の中を自由に移動できる。

介護職員や研究者も今後村内に移住する予定のため、安全性もさらに向上する見込みだ。同様の取り組みは欧米諸国で広まりつつあり、スムーズに施設の生活に移行できたり、生活の質が向上するといったメリットがあるという。

  • 国名:フランス
  • 団体(企業)名:Alzheimer’s Village
02. 男性認知症患者のためのスポーツ追憶セラピー

クリエイティブな社会参加で認知症患者の生活の質を上げる「スポーツ追憶セラピー」


認知症患者のケアでは、治療の提供だけでなく生活の質を向上させることが重要視されている。その中でも社会的交流に重点が置かれており、従来は音楽、演劇、ダンスなどアートを通した交流プログラムが提供されてきた。

近年の男性認知症患者の増加に伴い、本サービスでは男性が参加しやすいスポーツを通じた交流プログラムが提供されている。自分の好きなスポーツのファン同士が交流する機会を提供する「スポーツ追憶セラピー」を通して、男性患者の社会的活動を促す効果があるようだ。

  • 国名:スコットランド
  • 団体(企業)名:Football Memories
03. 大学生と高齢者の交流を促すアプリ

大学生をシニア家庭に派遣する。アメリカで急成長する異世代交流アプリ「Papa」

英国では、月に1度も友人や家族と会話をしない65歳以上の高齢者が20万人以上存在するなど、孤立が大きな社会問題になりつつある。孤立によって心疾患や生活習慣病のリスク上昇も見られており、今後先進諸国で大きな課題になることが想定される。

米国では、大学生と高齢者をマッチングするアプリが開発されており、すでに300人以上の大学生が登録している。高齢者は買い物や家事などを手伝ってもらえて、派遣された大学生は報酬を得られる仕組みだ。フロリダ州の9都市で展開されていたサービスは、今後米国の8州に拡大を予定している。世代を超えた交流を促進しうるサービスとして、注目されている。

  • 国名:アメリカ合衆国
  • 団体(企業)名:Papa

テクノロジーの活用

04. ひとり暮らしをサポートする介護ロボット

シニア世代の一人暮らしを支える介護ロボット、米大学がテスト実施中

米国では85歳以上の高齢者の50%が、食事や服薬などの日常生活でサポートを必要としているという。訪問のヘルパーや施設への入所に代わる生活のサポートとして近年開発されているのが、介護ロボットだ。

ロボットは現在テスト版が開発されており、利用者の場所や行動をセンサーで感知して移動し、家の中のものを取ったり、家の中を移動する際の手伝いができる。自宅にいながら、生活上の様々なタスクを常にサポートしてもらえる仕組みとして期待が集まっている。

  • 国名:アメリカ合衆国
  • 団体(企業)名:ワシントン州立大学
05. 服薬を楽にする薬の宅配サービス

複数の服薬を宅配し、介護の負担を軽減する薬局Pill Pack

2018年6月にアマゾン社に買収されたこのサービスは、日常の服薬のタスクを効率化する。患者が処方された薬が1日分ずつに包装され、毎日届けられる仕組みだ。

患者への宅配だけでなく、薬局での薬の補充や患者向けの24時間チャットサポート、自動で保険の申請ができるシステムなど、服薬に必要なタスクをまとめてシステム化している。毎日5種類以上の薬を服用する4,000万人以上のアメリカ人の生活の質を大きく変える可能性があるサービスだ。

  • 国名:アメリカ合衆国
  • 団体(企業)名:PillPack
06. 服薬状況をリアルタイムで把握できる薬

薬が医者に情報を送る。服薬状況が分かるデジタル医薬品「Abilify MyCite」

介護分野の中でも特に認知症患者のケアにおいて、服薬管理は大きな課題だ。

2017年に認可されたこの抗精神病薬には極小センサーが入っており、専用のパッチを体に貼った患者が服薬すると、服薬情報がパッチからスマホアプリに送信される。服薬管理をデジタル化することで大幅な効率化を達成しつつ、服薬忘れによるデメリットの解消も期待される技術だ。

  • 国名:日本・アメリカ合衆国
  • 団体(企業)名:Abilify MyCite
07. 高齢者向けAIアシスタント

高齢者のライフクオリティを高めてくれるAIアシスタント

近年新しいサービスが次々と生まれるAIアシスタント分野で、高齢者の生活の質を改善するためのサービスが開発された。同サービスは、知り合いとの交流や趣味への時間を促進することに特化している。

アシスタントからビデオチャットやSNSを立ち上げられるのはもちろん、ユーザーの趣向に合わせて動画やオーディオなどのコンテンツをおすすめする。また、外出の提案や服薬スケジュールの管理、知り合いへの連絡など、オフラインの活動も提案し、健康で活発な生活をサポートしている。

  • 国名:イスラエル
  • 団体(企業)名:Intuition Robotics

モビリティの確保

08. 車いすに改造できるショッピングカート

ショッピングカートが車椅子に変身。タイの貧困層に届いたDIYアイデア

私たちの生活では車いすは身近になりつつあり、バリアフリーを意識した建築やインフラも整備が始まっている。しかし、経済格差が激しいタイでは、経済状況が理由で車いすを購入できない国民が8万人以上いるとされている。

タイの大手スーパーチェーンは、自社のショッピングカートを改造して安価に車いすを作る方法を開発し、公開した。改造された車いすを貧困世帯に提供しつつ、改造方法をネットで公開することで、安価な車いすの普及につなげるアイデアだ。

  • 国名:タイ
  • 団体(企業)名:Tesco Lotus
09. 移動を通して生活を改善する財団をトヨタが設立

歩行困難な人の生活を快適にする選考会。トヨタ・モビリティ基金がファイナリストを発表

トヨタ・モビリティ基金は対麻痺で歩行が困難な人の移動を豊かにするアイデアコンテストを開催した。コンテストを通してイノベーションを促進し、今後の技術・サービス開発につなげる狙いだ。

コンテストでは、足の筋肉を刺激して歩行を補助するデバイスや利便性を追求した車いすなど5つのアイデアが選出され、更なる開発が進められる。2020年に東京で最も優秀なアイデアが選出される予定だ。高齢化が進む国では移動を可能にする技術やサービスへのニーズは今後さらに高まると推測され、今後必要な技術の開発を促進するコンテストと言える。

  • 国名:日本
  • 団体(企業)名:トヨタ・モビリティ基金
10.フィンランドが推進するMaaSの整備

【SB2019Tokyoレポ#6】フィンランドに学ぶスマートモビリティ活用。社会課題解決策となりえるMaaSとは?

フィンランドでは、事故や環境問題の一因となる交通問題に対して、MaaSの考え方による解決を図ろうとしている。MaaSとは、ICTを活用することによってバス・電車・タクシーなど自家用車以外の移動を1つのプラットフォームに統一し、情報検索・予約・決済などを一括で行えるようにする構想だ。

交通を交通手段によって分類するのではなく、「移動サービス」として定義づける考え方だといえる。フィンランドがMaaSの実現を進める上で、高齢者にとっての移動サービスの改善も重要視されている。通院や買い物が容易になる、家族や友人との交流が促進されるなど、高齢者へのメリットも期待できる構想が実現しつつあり、今後他国にも広がる余地がありそうだ。

  • 国名:フィンランド

日本の介護のこれから

日本における介護を取り巻く課題として、「他人に助けを求めることの抵抗感」「金銭的負担が大きい」「1人をしっかり見られる介護士の不足」といった項目が挙げられる。これにより、65歳以上の人を介護をする人が65歳以上である「老老介護」、さらに老々介護が進行すると、75歳以上の人を75歳以上の人が介護する「超老老介護」、認知症の人を介護をする人自体が認知症になってしまうという「認認介護」により、事故が起きやすい状況になってしまう。

介護士の不足に至っては、3K(きつい、きたない、きけん)のイメージが大きく、さらに業界平均の給与が20万円以下と、他業種に比べて労働環境がよくないことで、介護対象者の数に対して十分な介護士人材の獲得が難しい状況だ。

このような課題に対して、介護業務を効率化するITサービスや介護ロボットの開発や、介護の質を担保するためのARを活用した研修やAIを用いたケアプラン作成など、最先端のソリューション開発が日本でも進みつつある。

介護分野は、デジタルな取り組みだけでは解決できない課題が多く存在する分野だ。生活の質の向上は普遍的に存在するニーズであり、高齢化に伴って介護分野への需要はさらに拡大するだろう。

【参照サイト】内閣府・高齢化の状況
【参照サイト】公的介護保険制度の現状と今後の役割
【参照サイト】Jo Cox’s campaign to tackle loneliness lives on with help of friends