薬が医者に情報を送る。服薬状況が分かるデジタル医薬品「Abilify MyCite」

2018.01.09

介護の現場に居合わせた経験がある方なら分かると思うが、病気によっては薬の服用し忘れが深刻な影響を及ぼす。認知症を患っている人の場合、薬を飲んでいないのに飲んだと言うこともあり、介護をする側は慎重に薬の管理を行う必要がある。重度の精神疾患の場合も、処方された通り定期的に薬を服用することが大切だ。

2017年11月、米食品医薬品局(FDA)が、服薬状況を体内のセンサー経由で把握できる抗精神病薬、Abilify MyCiteの製造販売を承認した。大塚製薬とアメリカのProteus Digital Health Inc.が共同開発したこの薬にはマグネシウム、シリコン、銅でできた極小センサーが入っており、体内に入ったあと患者の身体に貼り付けたパッチに情報を送る。そのパッチから医者及びスマートフォンアプリに情報を送り、服薬の確認をとれる。

体の中を撮影するカプセルなど、医療機器を体内に入れる方法は今までにも存在した。しかし、こういったモニタリング機能が付いた薬はAbilify MyCiteが初めてだ。

薬の飲み忘れを防止できれば、その効果は大きい。The New York Timesの記事によると、処方された通りに薬を服用しなければ、より病状が悪化して治療や入院が必要になり、年間100億ドルもの費用がかかると推定されている。Abilify MyCiteは精神疾患用の薬だが、その他の病気でもこういう薬があれば、病状の悪化を未然に防ぐのに一役買うだろう。

一方、このデジタル医薬品に対する懸念点もある。それは患者のプライバシーや生命倫理の問題だ。この薬を服用すれば体内のプライバシーをある程度は犠牲にすることになり、常に第三者から観察されていると不快に感じる人もいるだろう。だがこれもポジティブに捉えるなら、より密に医者と連絡が取れている状態とも言える。必要な情報が医者の元に送られれば、訪問看護師の負担が軽減するのではないかとの見方もある。

今まで人の手で管理していた事柄を、テクノロジーが代わりにやってくれるようになる。情報がデータ化されれば、そのデータをいかに安全に管理するかという課題も出てくるが、人が人の面倒を全面的に見るのは無理があるので、この流れは今後も推進されるべきだと思う。

【参照サイト】世界初のデジタルメディスン「エビリファイ マイサイト(Abilify MyCite®)」 米国承認
【参照サイト】FDA approves pill with sensor that digitally tracks if patients have ingested their medication
【参照サイト】Pros and cons of the new digital pills that connect to your smartphone

この記事を書いたライター

木村 つぐみ(きむら つぐみ)。大学卒業後しばらく経ってから日英の翻訳を始める。そして翻訳にとどまらず自分で文章を作り上げてみたいと思いライターも始める。学生時代に海外生活の経験あり。好きな文筆家はよしもとばなな、ナンシー関など。好きな言葉は「花鳥風月」。