そう遠くない未来、確実に私たちにとって身近な存在になるであろう、AI(人工知能)ロボット。その技術は日々進歩を続けており、さまざまな視点からアイデアが出され開発されている。そのシーンをまた新たに塗り替える、画期的なAIアシスタントが登場した。
2017年1月11日に英国・ロンドンとイスラエル・ラマトガンで発表された「ELLI•Q」は、イスラエル発のスタートアップ、Intuition Robotics社が開発したシニア向けの家庭用AIアシスタントだ。
これまで、GoogleやAmazonなどが開発してきた家庭用AIアシスタントのほとんどは、主に人々の日常生活をサポートし、AIによっていかに生活を快適で楽なものにするかに焦点が置かれたものだったが、ELLI•Qの思想はその逆だ。
シニアの人々の生活の質を改善するために設計されたELLI•Qは、高齢者にとって負担となりがちな日常生活の些細な動作をサポートするのではなく、むしろ彼らに積極的に行動するよう働きかける。ELLI•Qは、ユーザーの生活がより豊かになるよう活気づけ、高齢者が孤独感から脱出してより魅力的な日々を送れることを目指して開発されたAIなのだ。
高齢者はElliQを通じてインターネット上でオンラインゲームなどのエンターテインメントや、ビデオチャットやソーシャルメディアを通じた家族や友人との交流を楽しめる。また、ElliQには機械学習が搭載されており、ユーザーの嗜好・行動・性格を学習し、TEDトークや音楽、オーディオブックなどのデジタルコンテンツやさまざまなアクティビティへの参加を積極的に促してくれる。
最新のAIテクノロジーにより「長期間テレビを見た後には散歩の提案」「薬の服用や用事のお知らせ」「リンクされたチャットやフェイスブックからユーザーの家族や友人と本人を繋ぐ」など、フィジカルな世界での活動を推進してくれるのだ。
Intuition RoboticsのCEOで、インダストリアルデザイナーでもあるイヴ・ベアール氏が手がけた近未来的でエレガントなデザインのELLI•Qは、動きやスピーチ、音や光を利用したジェスチャーにより人間の特徴を表現し、ユーザーとの自然なコミュニケーションが生まれるように設計されている。
また、繊細な感情表現とフレンドリーで暖かい個性を与えるため、LED照明ディスプレイとなめらかで幅広い動きを採用している。実際にELLI•Qが動いているその様子は、表情を型作るものが全くないにも関わらず、なんとも愛らしい雰囲気を見せてくれるのだ。
イヴ・ベアール氏は、「ロボットコンパニオンを持つという考えは、年配の世代にとって非常に受け入れがたいことだ。しかし長年にわたる研究により、ELLI•Qと所有者の間にユニークで自然な関係を築くためのデザイン言語とユーザーエクスペリエンスを開発することができた。 ELLI•Qは人間との交流に置き換えることはできないが、一人暮らしの高齢者が、健康で活発な日々を維持するための重要なモチベーション要因にはなり得る。」と語る。
Intuition Roboticsは、2017年2月からベイエリアの高齢者宅でトライアルを開始する予定だ。
テクノロジーが進化するにつれ、AIが人間の仕事を奪うなどと言われ両者の関係性が問われている昨今であるが、互いが共存しあうことで人間の暮らしがより豊かになっていくのであれば、そんな未来の選択肢があるのもいいかもしれないと、このELLI•Qを見ていると想像させられる。