グリーンライフポイントとは?仕組みや対象となる行動を紹介
2022年4月から導入される、「食とくらしの『グリーンライフポイント』(以下、グリーンライフポイント)」。これは、買い物や移動など、私たちの日常生活の中で行われる環境に良い行動に対してポイントが付与され、それによって消費者の行動変容を促そうという環境省による事業だ。
マイボトルを使う、エアコンの温度を上げすぎない、水を大切に使う……など、すでに環境を意識したライフスタイルを送っている読者も多いかもしれない。しかし、今後はこの制度によって、そういったライフスタイルが経済的にもプラスになるかもしれない。
今回は、そんなグリーンライフポイントの仕組みやその対象となる行動ついて、解説していきたい。
グリーンライフポイント制度の背景と仕組み
2020年10月に菅前首相が行った「2050 カーボンニュートラル宣言」。これを達成するためには、国や企業の取り組みに加え、日本の温室効果ガス排出量の約6割を占める衣食住を中心とした消費者の行動変容が不可欠だ。
環境省はこの事業に対し、2021年の補正予算案で101億円の予算を計上。これにより、消費者の環境配慮行動に対して新たにポイントを発行しようとする企業や地域などの企画、開発、調整等の費用を補助し、環境配慮ポイント発行の取組を一気に拡大する狙いだ。またそれにより、コロナ禍からのグリーンリカバリー、そして地方の活性化にもつなげようとしている。
グリーンライフポイントは、通販サイトやスーパー、家電量販店などが発行する既存のポイントに上乗せする形で付与される。事業者は原則として支援後も3年間の環境配慮ポイントの発行継続を求められるが、新たな仕組みやツールを導入することなく活用できる点がこの事業の良い点だ。ポイント発行の効果については、デジタル技術を活用し、見える化・定量化を行い、その効果を検証するとしている。
グリーンライフポイントの対象となる5つの分野
環境省によると、グリーンライフポイントの実施対象となるのは、2021年6月に公表された「地域脱炭素ロードマップ」に掲載されている「ゼロカーボンアクション30」に加え、食の地産地消やサーキュラーエコノミー(循環経済)を促進する行動などである。
具体的には、特に以下の5つの分野が対象となっている。それぞれ詳しく見ていこう。
食
食分野は、さまざまな課題を抱えている。中でも最も大きなものとして挙げられるのが、食品ロスだ。日本では、毎年570万トンもの食品ロスが出ており、これらが燃やされることにより、大量の温室効果ガスも排出されている。
そこで、賞味期限・消費期限が迫っている食品を購入することや、食べ残した料理を持ち帰るといった食品ロスを減らす行動に対して、グリーンライフポイントが付与される。
また、食品の輸送の際に排出されるCO2も問題となっている。そのため、なるべく生産地に近い食材を消費する「地産地消」につながる行動にも、グリーンライフポイントが付与される。
さらに、私たちが日々食べている食肉、特に牛肉の生産過程では大量の水や穀物が消費されるため、牛が反芻するときに排出されるメタンと合わせて地球温暖化の大きな要因となっている。そこで、食肉や乳製品といった動物性食品ではなく、植物性の食品を選ぶことも、グリーンライフポイント付与の対象となる。
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衣類
アパレル業界は、全ての業界の中で環境に与える影響が2番目に大きいと言われる業界だ。その理由は、衣服の製作過程で大量に水が消費されることや、染色過程での水の汚染、そしてアパレル業界特有の商習慣が生み出した、製品の大量生産・大量廃棄といったものだ。日本においても、毎年廃棄される衣服は100万トン以上に上るため、この問題に目を向けることが必要だ。
そこで、再生素材やオーガニック素材を使用したファッションアイテムを購入したり、衣服のリユースやリサイクル、レンタルサービスを活用したりといった行動に対して、グリーンライフポイントが付与される。
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循環
現在の経済・社会は、「作って」「使って」「捨てる」というリニア(直線)型のシステムで成り立っている。このシステムが生み出してきたのは、地球の限りある資源の搾取、そして近年話題となっている海洋プラスチックのような、廃棄物問題だ。
これに対し、なるべく製品を長く使用し、使い終わったものにも資源としての新たな役割を与えて循環させるのが、循環経済(サーキュラーエコノミー)だ。脱炭素化においては、再生可能エネルギーへの移行などに加え、この循環経済の実現が欠かせないとされている。
そこで、買い物をする際に、廃棄物の削減につながる行動をすると、グリーンライフポイント付与の対象となる。例えば、コンビニや飲食店のテイクアウトでプラスチック製のカトラリーを断ったり、簡易包装やばら売りの商品を買ったりといったことだ。また、リユース品の購入、リペア(修理)サービスの利用なども、ポイント付与の対象となる。
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住居
住宅から排出されるCO2は普段意識することが少ないかもしれないが、家庭及び業務その他部門で排出されるCO2は、日本のエネルギー起源CO2排出量の約3分の1を占める。これに対し、2021年7月に公表された「地球温暖化対策計画」の原案では、政府は温室効果ガスの排出量を家庭部門で66%削減する検討を行うなど、野心的な姿勢を見せている。
そこで、自宅の電力を再生可能エネルギーに切り替えたり、省エネ効果の高い機器への入れ換えを実施したり、節電を積極的に行ったりすることで、グリーンライフポイントが付与される。また、太陽光パネルの設置や省エネリフォーム、建て替え時はネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)にするといったことも評価の対象となる可能性がある。
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移動
2019年度における日本の運輸部門の二酸化炭素排出量のうち、旅客自動車は49.3%を占めている。これを減らすため、政府はガソリン車からCO2を排出しないEV(電気自動車)への移行を促しており、経済産業省はEVの購入に対し最大85万円の補助金を出している。
グリーンライフポイント付与の対象となるのは、現時点ではカーシェアリングやシェアサイクルの活用とされている。また、スマートムーブ(徒歩、自転車・公共交通機関での移動)、エコドライブ(発進/急停車をしない等)の実施も評価される可能性がある。
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まとめ
いかがだっただろうか。すでに上記のような行動を日々心がけている人もいれば、この制度導入をきっかけに始めてみようと思った人もいるだろう。もちろん、今回あげた行動だけが全てではないため、引き続きそれぞれが環境のためにできることを探していって欲しい。
以下のサイトでは、サステナブルな暮らしのヒントになる情報を集めているので、これを機に環境に配慮した暮らしに興味を持った人はぜひ読んでみて欲しい。
▷サステナブルな暮らしの応援メディア「Life Hugger」
いずれにせよ大事なのは、環境に良い行動が私たちの生活に浸透し、ライフスタイルとして当たり前となる日が来ることだ。その意味では、今回の新しい制度には大いに期待したい。
【参照サイト】食とくらしの「グリーンライフポイント」推進事業
【参照サイト】地域脱炭素ロードマップ
【参照サイト】脱炭素に向けたライフスタイルに関する基礎資料