残りものには福がある!フードロス解決に地域ぐるみで取り組む「福ごはんプロジェクト」

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「もったいない」。世界的になったこの日本語には、本来生かされるはずだった何かに対する「敬意」が内包されている。

この「もったいない」概念は、食材を無駄にしない取り組みの根底を支え、昨今のフードロス(食品廃棄物)へのムーブメントを後押しすることになっている。その一例が、東京の中心地・日本橋浜町エリアで始動した「福ごはんプロジェクト」だ。

中央区の浜町では年4回、オフィスビルのエントランスを会場にした「浜町マルシェ」が行われている。日本各地から約30前後の出店者が集まるマルシェでは、「買う・食べる・遊ぶ・集う」の体験が可能。季節の野菜や果物が販売されるほか、屋台ブースが設置され、子どもたちの遊べるプレイエリアも用意される。マルシェはこれまでに18回開催されており、地域ではすっかりお馴染みとなったイベントだ。

浜町マルシェ

2019年7月に開催された浜町マルシェの様子。毎回全国から約30店舗が勢揃いしている。

大盛況を収める浜町マルシェだが、イベントを運営する側には、あるジレンマがあるのだという。

「出店者に食材をたくさん持ってきてくださいね、とお願いしておきながら、売れ残ったものに対して何もできないことがずっと気がかりだった」

そう話すのは、各地の生産者と消費者をつなぐ場づくりをしてきた水代 優さん(東京のグッドマナーを広める一般社団法人 Tokyo Good Manners Project理事)。「立ち寄ってくれる人のために品揃えを豊富にしたい」という思いがある一方、多くの出店者が売れ残りを経験している事実に心を痛めていたのだそうだ。

「出店者自身が寂しげに持ち帰っていた売れ残りをなんとかしたい」という思いから生まれたのが、今回の「福ごはんプロジェクト」だ。「残りものには福がある」という日本の言い回しのように、浜町マルシェで売れ残った食材を出店者から買い取り、福として活かそうというアイデアがプロジェクト名の由来である。

福ごはんプロジェクト

浜町マルシェの売れ残りや、外皮のシミなどによって販売できなかった規格外の野菜や果実。

福ごはんプロジェクト

プロジェクトローンチイベントにて振る舞われたスイーツ。(左)ぷるぷるのブランマンジェに使用されているのは、なんとゴボウ。|熊本県菊池市の生産農家・渡辺義文さん「生産者と消費者の距離感は、食材への関心に関わること。野菜や作り手のことを何も知らないまま食べている人も多いので、もっと野菜のことをお伝えしたいです」

どんな野菜や果物がどれほど売れ残るかは予想できないものの、地域の企業や飲食店の多くが開催趣旨に賛同してくれたという。彼らの協力のもと、「福ごはんプロジェクト」では主に3つの取り組みを行う。1つ目が、「浜町マルシェ」で売れ残った食材を、浜町周辺企業のオフィス内で再販売する「福ごはん販売」。2つ目が浜町マルシェの翌日、周辺飲食店で売れ残り品を活かした特別メニューを考案・提供してもらう「福ごはん料理」の提供。そしてなかでもユニークなのが、老舗の銭湯「世界湯」とのコラボレーションで、売れ残りのフルーツを浮かべた果実風呂を提供する「福ごはんの湯」だ。

福ごはんの湯

売れ残った果実が湯船に浮かぶ「福ごはんの湯」。会場となるのは比較的熱めの温度設定が人気の「世界湯」。店主の丁寧な管理が行き届き、隅々まで清潔感が感じられる。開店と同時にお客さんがやってくる地域の人気湯だ。

風呂に浮かべられるのは、マルシェで売れ残った果実のほか、規格外のため販売に至らなかった甘夏、レモン、ジューシーオレンジなど。約40個の果実が浮いたお湯からは爽やかなシトラスの香りが漂い、見た目の愛らしさも相まって人々を一層リラックスさせる。また、無農薬で育てられた果実の皮からはビタミンCやクエン酸といった成分が溶け出し、肌に良い効果もあるそうだ。規格外としてはじかれた果実は、風呂に浮かべられるほかにも、フレッシュジュースへ加工し「湯上りドリンク」として提供される。

福ごはんの湯

フードロスは飲食店に限ったことだと思われがちだが、そうではない。消費者一人ひとりの問題でもあるのだ。

果実の表面に残る、黒っぽいシミや小さな傷が見えるだろうか。これらは果実の食味にはまったく影響がない。しかし「見た目が良くない」というだけの理由で、販売されなかったり捨てられてしまったりすることがあるのだ。生産者の気持ちを想像すると胸が苦しくなる。そもそも、果皮にシミができるのは無農薬や有機栽培であるからこそ。わたしたちは消費者としてこうした自然の摂理を知り、そのうえで何を選ぶのかをしっかりと考えなければならない。消費者が「均一で美しい見た目のモノ」ばかり求めれば、販売元は見栄えのしないモノを捨てざるを得なくなってしまう。わたしたち一人ひとりが意識を変え、「見た目は問題ではない」と態度で示すことで、販売の仕組みも変わっていくだろう。

「フードロス」と一言で言っても実は様々なファクターが関連している。そのため問題解決にも何か大きな一つの正解が存在するわけではない。生産者、企業、団体、それぞれができることを行うこと、そして消費者一人ひとりが自らの考えを持つことが重要だと言える。

今回の「福ごはんプロジェクト」を参考に、すぐにでも自分ができることを考えてみてはどうだろう。生活の中に小さくも確実な革命を起こし続けることで、問題を解決に導くことができるはずだ。

福ごはんの湯

しぼりたてのおいしいフレッシュジュースと特製タオルは7月6日(土)7日(日)に配布される。熱いお湯に体を沈めながら、食について思いをめぐらせてみよう。

「福ごはんの湯」概要
・日時:2019年 7月 6日(土)、7日(日) 午後 3時 00分 ~ 午後11時 30分
・場所:世界湯(東京都中央区日本橋人形町2-17-2)
・内容:福ごはんの湯(浜町マルシェで売れ残った果実および規格外のため売れなかった果実を活用した果実風呂)、湯あがりのドリンク1杯、オリジナルタオル(※共に数量限定)

【参照サイト】浜町マルシェ
【参照サイト】Tokyo Good Manners Project
【関連ページ】食品廃棄

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